アットホームが「いま解決すべき問題」として取り組む不動産業務のスマート化

 アットホームが不動産業務のスマート化に乗り出している。自動応答で物件確認ができる「スマート物確」から入居申し込みと受付がウェブ上でできる「スマート申込」、契約書を電子化する「スマート契約」まで、物件公開から入居後までIT化を推し進める。目指すのは、不動産業界における人手不足、働き方改革という社会課題の解決だ。

 図面情報「ファクトシート」を生み出し、不動産情報流通プラットフォーム「ATBB(不動産業務総合支援サイト)」を全国約5万店舗に提供する不動産情報サービスのアットホームが、なぜスマート化を開始したのか。そして紙、ファクス、電話とアナログのツールが一般的な不動産業界にITツールを導入するためにどんなやり方を選んだのかを、アットホーム 基幹サービス開発部部長の原雅史氏に聞いた。

アットホーム 基幹サービス開発部部長の原雅史氏
アットホーム 基幹サービス開発部部長の原雅史氏

管理、仲介会社にヒアリングして見えた本当の課題

 当初の目的は、業務効率化より物件情報の拡散による弊害への懸念だったという。「不動産会社の店頭はもちろん、各社のポータルサイトなど、物件情報は多くの媒体に掲載されている。拡散力が高いと成約にも結びつきやすいが、情報の更新頻度にバラつきがあるのではないか、どのサイトの情報が最新の情報なのかがわかりにくいのではないかという懸念事項があった。では、もっと情報をうまく、早く伝える仕組みができないかと考えた」ときっかけを話す。

 実際、不動産の管理会社、仲介会社にヒアリングをしてみると、現状の課題はそこではなくて、情報掲載以降の部分だと意見が相次いだという。「例えば大手管理会社では、1日に対応する物件確認の電話の数が1500本を超えており、とにかく大変だと。さらに内見の調整や入居の申込業務に追われている。中でも時間を割いているのが、ファクスで来た書類の内容確認。記載項目に漏れがあったり、字がつぶれて読めなかったりとそのすべてを電話で確認する必要がある」と実状は過酷だ。

 そうした問題は、入居者確認のみならず、保証人、物件オーナーにも同様に起こる。「物件情報を行き渡らせる以上に必要なのは、物件情報公開後の業務改善。人手と手間がかかり、時間も必要、そして複雑。私たちが考えていたのと、実務を担う管理会社と視点が違うことに気がついた。情報公開後の段階こそ、いま解決すべき問題と感じた」と原氏は当時を振り返る。

 そこで、問題解決の方向を業務改善に変更。2015年からスマート化に取り組んできた。現在アットホームでは、スマート物確、スマート申込に加え、オンラインを利用した重要事項説明ができる「スマート重説」、賃貸物件の初期費用、家賃がクレジットカードで支払える「クレジットカード決済サービス」、集客、契約から更新、退去までの賃貸管理業務をサポートする「賃貸管理システム」などを提供。すべてを網羅すれば、入居者募集から、内見、申込、契約、入居、契約更新、解約までの一連の流れをカバーする。

 「スマート化するにしてもいろいろな角度がある。どこが肝なのかと考えた時に、申込だろうと。申込は記入漏れや誤字脱字など、もっとも負担が大きいところ。紙、ファクスの比率が高く、やりとりも煩雑。この部分を解決すれば、作業負担が軽減し、効率化につながる」と原氏は説明する。

 アットホームでは、スマート化するITツールを複数採用しているが、スマート申込は自社サービスとして開発。「個人情報を扱う部分なので、セキュリティコントロールなども含めて自社で作るのが一番良いだろうと。機能改善なども多い部分なので、スピード感をもって対応するためにも、社内に開発チームを置いた」。

 一方、スマート物確は、スマートロック「NinjaLock」を手掛ける不動産テックスタートアップのライナフのシステムを採用。ATBBとデータ連携することで、アットホーム加盟店は、再度情報を入力する手間なくスマート物確を利用できる。AIによる音声認識を採用しているため、専用の電話番号にかけると自動アナウンスが流れ、声に出した物件名をAIが音声認識で特定し、物件情報を自動応答する仕組み。「音声入力の精度を上げるため、何度も物件名を入力するなどして認識率をアップしていった」と協力して現場で使えるシステムを築いていったという。

「スマート物確」
「スマート物確」

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