logo

「IPOに踏み切るかは戦略のひとつ」--メドレー代表の豊田氏が語る上場への思い - (page 2)

日沼諭史 藤井涼 (編集部) 坂本純子 (編集部)2019年12月31日 10時00分
  • 一覧
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

医療業界の規制、慣習に関わる難しさとは

――2010年代のインターネット業界を振り返ってみると、どのように変わってきた10年間だと思いますか。

 最近上場した人たちと話したりもしているのですが、もう「○○×インターネット」「○○×テクノロジー」は使い古された表現になりましたよね。単なるインターネットサービスよりも、社会課題、既存の産業の課題を解決したいというものに対して、インターネットのテクノロジーを注入していく、あるいは特定の業界のレガシーな領域にインターネットのテクノロジーを注ぎ込む、みたいなものが多くなってきたかなと思います。

――そのなかでも「医療×テクノロジー」というのはなかなかハードな領域だと思います。豊田さんが入社した5年前と比べてその環境は変わったと思いますか。また今も残る課題とはどんなことでしょうか。

 これは創業社長の瀧口浩平が言っていたことで、私がメドレーに入社する前も直後もそうでしたが、医療・介護領域、あるいはヘルスケアという領域に、インターネットエンジニアがほとんど集まらなかったのです。今でこそ「オンライン診療」はキャッチーですが、当時インターネットのサービスやゲームが全盛期だったタイミングに『医療・介護の求人サイトを作りませんか』と言っても人が集まらない(笑)。

 ちょうど私が入社したあたりのタイミングが、「インターネット×○○」のような外部環境の変化が始まった頃だと思います。古い業界の領域とインターネットサービスの融合みたいなものがググッときたタイミングで、かつその中で医療も注目され始めたタイミングなのかなと。この5年でインターネット業界からの医療というものへの注目具合、見え方が変わってきたのではないかと強く感じていますね。

 あとは患者が自分から主体的に医療に関わる仕組みがなかった中、つなぐことを得意とするインターネットが登場したことで、医療というものを違う角度から見つめられる機会が増えたり、「患者に向いた医療」などについて改めて考え直したりしたことが、インターネットサービスを通じて可能になってきたかなとも思っています。

 そういった変化と相まって、面白い「医療×インターネット」が、昔よりは存在感を持ち始めている。ベンチャー業界や産業界においても、国の社会保障で医療のデジタル化を進めるべきだ、みたいな議論はここ2、3年で広がってきている気がしますし、いいサイクルが回り始めていると思います。

 とは言っても、やっぱり堅い業界ではあります。「ブロックチェーンを使って医療を……」みたいな最先端のインターネットテクノロジーの活用をついアピールしがちなのですが、だいたいそういうのはうまくいかない。医療業界では、最先端から1周遅れくらいの枯れた技術をきちんと使っていく、というのがあるべき姿だと考えています。

 最新のインターネットテクノロジーを医療に──といったことではなく、他の業界でもきちんと回っている技術を『医療に持ってきても大丈夫だよね』と思えるところから持ってくるのがいい。とはいえ、今はまだ遅れに遅れている状況です。最先端から2~3周遅れのような状況なのでそれが1周遅れくらいにこぎつけたいと思っています。

「医療業界では、最先端から1周遅れくらいの枯れた技術をきちんと使っていく、というのがあるべき姿」(豊田氏)
「医療業界では、最先端から1周遅れくらいの枯れた技術をきちんと使っていく、というのがあるべき姿」(豊田氏)

――既存の業界で新しいことをやろうとすると、どうしても規制緩和されないと話が進まないというところもあるのではないかと思います。そのあたりも含めた医療業界の慣習はいかがでしょうか。

 医療や介護は、規制が多い産業の1つであることは間違いないと思います。規制が強いだけでなく、一度作った規制はなかなか変えるのが難しかったりする。ただ、規制緩和は求めるべきところは求めなければいけない一方で、変に緩めると、悪用する人が出てきたり患者にとって不利益になったりもする。緩めるのは慎重にならざるを得ないんだな、というのは感じています。

 また、医療業界はステークホルダーがたくさんいます。規制絡みでは厚生労働省が管轄していて、医療費という視点では財務省が関係している。経済産業省も総務省も医療に関わっていて、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本医師会の三師会と呼ばれるものがあったり、看護師協会があったり、他にも業界団体は多い。

 各ステークホルダーが日本の医療をよくしようと思っている一方で、立場上の問題から足並みがそろわなかったりしてずれが生じ、結局全然動かない、という状況になっている。関わる大きなプレーヤーが多すぎて、皆が同じ方向に向かったり、一歩目を同じ幅にしないと進まないところ、なんとなくすり合わないのが難しいところかなと思いますね。

 オンライン診療についても、「患者のためになるのなら使うべき」というのはみんなにとって大前提の考えではあります。ですが、それによって医療費の増加や医師の負担増になるのでは、という話になったりしますし、医療の安全や質は保たれるのかなど、いろいろな人がいろいろなことを気にしてしまう。進むべきものも進まなかったり、進めるのにさまざまな調整が必要だったりして、本当にちょっとずつしか変わらないようなところはありますね。

――この5年間でそういった部分はあまり変わっていない?

 変わっていないと思います。ただ、「医療×インターネット」とかデジタルトランスフォーメーションをもっと進めなきゃダメだよね、と考える人が5年前よりは多くなっているので、全体的には追い風が吹いているとは思います。

「医療や介護は、規制が多い産業の1つであることは間違いない」(豊田氏)
「医療や介護は、規制が多い産業の1つであることは間違いない」(豊田氏)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]