オンライン診療アプリ「CLINICS」などを手がけるメドレーは11月8日、医療ヘルスケア分野における技術のオープン化および情報活用を推進するプロジェクト「MEDLEY DRIVE」を開始したと発表した。
医療ヘルスケア分野で事業展開をしてきた企業や次世代標準になりうる医療情報システム技術の開発を行う企業を対象として出資し、プロダクト開発・マーケティング・コンプライアンス体制構築など幅広い支援を予定している。専用サイトにて、支援を希望する企業を募集中だ。
MEDLEY DRIVEプロジェクトにより、個々の企業に対する技術面や資金面などの支援を通じて、医療情報システムの世界をオープンにし、ITを活用しやすくする土壌づくりを目指す。
本プロジェクトの投資総額は30億円を枠としてスタートするが、案件によっては枠にとらわれず検討するという。同社が展開する医療介護福祉の人材採用サービスが好調だったことから、新たな投資に踏み切ることにした。
出資の対象となるのは、(1)医療ヘルスケア分野において長く事業を展開しており、今後ITを活用したさらなる課題解決を模索している企業、(2)医療ヘルスケア分野において、将来デファクトスタンダードとなりうるインターネットプロダクトの開発をおこなう企業、(3)医療ヘルスケア分野において、次世代標準になりうる要素技術の開発をおこなう企業。
企業が出資を受けるメリットは、出資による資金面に加え、メドレーに在籍するさまざまな領域のプロフェッショナルたちによるサポート体制だ。プロダクト開発支援、同社の顧客基盤を用いたマーケティング支援、ガバナンス体制の支援に強みを持つ。
メドレーは、オンライン診療アプリ「CLINICS(クリニクス)」やクラウド型電子カルテ「CLINICS カルテ」なども手がける。
CLINICSは現在1000の医療機関で使われているという。順調に伸ばしている一方で、まだ電子カルテに踏み切れない、あるいはクラウドの利用をセキュリティなどさまざまな理由で電子化に躊躇する医療機関が多い実情も見ている。また、すでにITを導入していても、閉じたシステムによりクラウドに移行できないケースもあるという。
医療分野におけるインターネットの活用は、2010年2月の厚生労働省の通達をもとに診療録等の保管場所がクラウド上に広がったことからスタートしているという。
しかしながら、電子カルテの導入も3割程度にとどまり、ITを導入している医療機関は全体から見るとまだ少ないのが現状だ。また、ITを導入していてもローカルネットワークを活用した院内システムが主流で、医療情報システムの技術の規格もさまざま。医療業界全体がテクノロジの進化の恩恵を受けづらくなっているなどの問題点があるという。
メドレー 取締役 CTOの平山宗介氏は、クラウド化が進まないことについて「まずは、ガイドラインの改定が遅かったことが背景としてある。次に現場の意識が変わると思うが、今はまだガイドラインが変わったという状況」と説明する。「医療のITは歴史的背景があるが、一部のシステムで閉じられている。そこを打破するために、技術をオープンにする、あるいはオープンソースにすることで、ベンダーに依存しない、医療システムの標準化を実現したい」と意気込む。
同社では、ORCA APIのオープンソース公開や、ブロックチェーンを活用した電子処方せん管理方式の技術公開といった活動にも取り組んできた。
平山氏は、特にこれまで医療分野で長きにわたり事業を展開してきた企業に対して積極的に支援していきたいと話す。そうした企業に、メドレー側から声をかけることも検討しているという。インターネットを活用したオープンな技術の普及活動に積極的に取り組むことで、医療機関と患者の双方にとってより良い医療の実現を目指すとしている。
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