まずは、脳の働きを知るところから始める。プロジェクトをうまく進めることができなかったり、人と衝突したり、物事がうまくいかないことは誰にでもある。なぜ怒ってしまったのか、なぜ冷静になれなかったのか、振り返ってみてもよくわからなかったりする。しかし、脳の働きを知り、対処法を学ぶことで、それまでの困難が嘘のようにスムーズにいく可能性がある。
本書では、脳内を「舞台」に見立てて、その時何が脳内で起こっているのか、どのように「演出」すればうまくいくのかを、分かりやすい事例と共に解説している。集中している時、注意力散漫な時、自分より立場が上の人と話している時、プレッシャーのある時、あらゆる「思い当たる場面」が用意されているので、自分の事だと思って読める。
次に「がんばる」とはどういうことなのかを考える。「がんばります」と言った後に何をどうがんばるのか、どういう結果を出すのかが重要であって、無駄なことをただがむしゃらにやっていて、無駄な残業までしているような状態では、「がんばった」とは言えないのが社会人だ。そもそも「がんばらなくてもいい」ようにするために「やり方を考える」のが先決だ。
本書では、ムダな努力をしないで済むようにするには、どうすれば良いかということについて、実践的なアドバイスを学べる。上司から仕事を頼まれる立場でも、部下に仕事を頼む立場でも通用する考え方が主で、両方の視点で見られるのがポイントだ。会社全体で風通しが良く、仕事を回していきやすい雰囲気を作ることの大切さを知る。
ムダな仕事、ムダな残業をしてしまう原因の一つは、「ひどいマニュアル」にあるかもしれない。筆者は、マニュアル制作に20年携わっているが、マニュアルがいかに軽視されがちかを実感している。正確に言えば、「マニュアルを作ること」が軽視されがちなのだ。事故や間違いのないように、誰が読んでも、必ず同じ操作ができるように、きちんとしたマニュアルを作るにはかなりの技術と労力が必要だ。情報を整理して、確実な手順を確立し、誤読されない表現方法で、読みやすく参照しやすいデザインで作らなければいけないからだ。
本書では、第2部の「正しい作業手順の作り方」で、マニュアルの根本的な部分をじっくり説明しているので、ここをじっくり学ぶだけでも、既存のマニュアルの問題点が浮き彫りになるはずだ。それを元にマニュアルを改善できれば、ムダやミスが大幅に減るだろう。
生産性を上げれば、時間は作れるのかと言えば、そういうわけでもない。ほかにやるべきことがあるのに、メールの通知に気を取られて、元々やっていたことがなんだったのかを忘れたり、資料にする本を探していたのに、いつの間にか別の本を読んでいたり。周りには気の散るものが多すぎる。
本書のやり方では、その日1日の時間の使い方を、「自らが、主体的にデザインするのだ」ということを強く意識していく。スマートフォンやパソコンで、気の散る通知を切るなどの小技もあるが、もっと大きな枠組みで、時間の使い方を組み立てていくのだ。巻末には「時間オタクのための参考図書」として、面白い図書の一覧があるので、こちらと合わせて読むと、より理解が深まる。
「時間術大全」の方は、システマティックに時間の使い方を見直していくプランを提示しているが、こちらの「習慣化大全」は、「ビュッフェのような感覚で自分に合うものだけを選んで実践してみてください」と冒頭にあるように、どこから読んでも良いような作りになっている。つい後回しにしてしまう癖を直したいなら、「先延ばし・続かないを乗り越える」行動習慣を身につける方法から、自分に合いそうなものを目次で選んで読めば良いし、全部知ってから選びたいなら、最初から通して読んでも良い。
最初から自身の大変革を狙っても失敗に終わる可能性が高いので(長年染み付いた自身の悪い習慣は、そう簡単には手放せない)、「ほんの少し変える」ことをずっと続け、結果的に「理想の人生」になればいい。
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