アマゾンジャパンのジェフ・ハヤシダ社長は、CNET Japanのインタビューに応じ、自社物流サービスである「Amazon Flex(アマゾンフレックス)」について、自身の考えを語った(前編)。
後編では、配送網の拡大から組織のマネジメントにいたるまで、ハヤシダ氏の考えるアマゾンジャパンという企業についてフォーカスする。同氏の発言からは、多くの人がイメージする“外資企業のお堅いアマゾン”とは、少し異なる印象を受けるかもしれない。
——日本でも2019年から、ガスメーターボックスや自転車のカゴなど、指定された場所に配達する「置き配」を開始しました。3年以内に全国展開を目指すそうですが、日本でもこのスタイルは受け入れられると思いますか。
僕はね、タイミングがいいんだと思うんですよ。日本のお客様も、負担だとか無駄っていうことを意識し始めている。単純に平均して言うと、(日本の宅配業界全体で配送される荷物の)2割以上が再配送なんですよね。ということは、もし1台の車が毎日100km走っていたとしたら、20kmが再配送なんですよ。
——それは無駄が多すぎますね。
これを何万台のレベルでやった時の、CO2のことを考えただけでも、尋常じゃないわけです。将来ね、タクシーも呼ばれるまで流さないで止まってるとか、そういう話にどんどんなっていくと思うんですよ。そうすると、テクノロジーの話になっていく。
自分たちのテクノロジーを使って、置き配を組み立てて、究極は煩わしさを減らすことです。お客様の煩わしさを減らすこと。あと、ドライバーさんの煩わしさも減らしたい。煩わしさをどんどん減らしていくっていうのが、企業努力というか、モットーです。
ただ、置き配ありきで再配送を減らすのではだめ。置き配を1つのスタンダードとして進めていくためにも、“受け取る選択権”が常にお客様になければいけない。物によってはちゃんと、Face to Faceで渡してもらいたいものもあるし、それはお客様が煩わしいと思っていないわけだから、ちゃんと選択できるようにしたいと思います。
——テクノロジーの話も出ましたが、配送全体を含めた2020年の展望を教えてください。
来年のことを聞かれて一番困るのは……分からないですよね。たとえば、オリンピックでどういう影響が出てくるのかとか。
配送網を増やしていきたい、Flexを拡大していきたい、置き配を拡大していきたい、ロッカーをもっと展開していきたい。全てにおいてもちろんです。
置き配の全国展開はいつまでにやりたいですか?と聞かれたら、答えは「明日」。47都道府県にロッカーを置くことが目的だったら、(それぞれに)1個置けば目標を達成してしまうけれど、稼働率、人口、人口密度、アクセス率など、どうやってデータを見るのかが、我々の中でまだ整理しきれていない。
外からアマゾンを見ていると、メディアの人たちも、僕がお付き合いしている諸々の企業の経営者さんも、「すごい計画が緻密に練られていて、優秀な人たちがいっぱいいて」というイメージみたいだけど......そんなことあるわけないじゃない。だって、僕が社長なんだよ(笑)。
——(笑)。
確かに、アマゾンはすごくテクノロジーが発展している。売れているもの、売れていないもの、数、配送完了か未完了か、1時間単位で全部見えてるわけです。でも、仮にあなたが1時間単位で読まれている記事のデータをもらって、それでどうします?
もちろん、我々も数字の動向を見て、事業企画や予算を組むけれど、「とりあえずの戦略で目標に向かって動くけど、必ずしも自分たちが立てた目標が正しいという執着は持たない」。ここはアメリカの会社だなと思いますね。
ただ、トレンドの変動っていうのが、自分たちの計画が達成できていないからなのか、それともそれとは関係のないお客様の動向なのか、というところに対してのアナリシスは、真剣に一生懸命、多角的にやりますけどね。
——一度立てた目標の必達に執着するのではなく、分析した結果としてトレンドを受け入れるということですね。そうすると、投資計画はどうやって立てているのでしょう。
投資額を決めるのは、うちの社内の組織の能力です。どれだけのプロジェクトを消化できて、ちゃんと達成できるのかを考えて、計算していった時に「来年はいくら」という話になる。
僕は毎年、怒られてますよ。「この数年間、投資申請した金額を全部使った試しがない」って。うちの場合は、使い切ったからといって来年増やしてくれるとかはないから。「消化できるんだったら申請すれば?説明してね」というくらいで。
——“外資企業のお堅いアマゾン”というイメージからはかけ離れていますね。
外資だとかいって、祭り上げられているけどね、違います。アマゾンっていうカタカナの名前かもしれない、外資かもしれないけれど、我々は日本で商売をしている、日本の会社です。社員の大半は日本人です。
ただ、(日本企業の)悪い習慣は受け入れないですよ。サービス残業だったり、変なプレッシャーで休出したりとか。年功序列もないし、失敗したことでいちいち叱られたりもしない。そういうところはアメリカ的にやるけれども。
——日本的でありながら、米国のカルチャーも取り入れているのがアマゾンジャパンだと。
日本でも朝に会社に来て、誰もいない時がありますよ。僕の秘書も「今日はボス来てる?」って聞かれるみたいだけど、「まだですけど、来るんですかね?今日」って(笑)。
でも、会議がなければ、家で良くないですか?どこにいても、みんな繋がっているんですよ。僕には24時間メールが来ますからね。そのうちの何時間は必ず会社にいなきゃいけないなんて、大きなお世話ですよね。大人なんだから。
そういうことを理解できない経営者って、多いんです。日本では、仕事の効率と、出来高と、会社にいなきゃならない拘束とかが、ごちゃごちゃですよね。
これはどうしても言いたいんですけど、子どもが生まれたある男性社員がいて、「男性も育児休暇を取れるルールを作ってくれ」っていう相談が(社内で)きたことがありました。でも確認したら、うちの従業員規定に「男性の育児休暇取得」ってちゃんと入っているんです。
要は、「取りやすいルールにしてください」っていう話だった。やっぱりね、「日本の会社でずっと働いていたから、申請して受け入れてもらえるかどうか、すごく不安だ」って言うわけです。僕はアメリカ人なので悩んじゃうんですが、「そういう意識をみんなに話していくことは、重要なんだ」って、その時は反省しましたね。
【編集部注:2019年12月11日21時】本インタビュー記事は、ハヤシダ氏本人の発言をもとに執筆しましたが、アマゾンジャパンからの依頼により、タイトルおよび本文の一部を修正しました。
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