私がSundar Pichai氏に初めて会ったのは3年前。Googleの最高経営責任者(CEO)に就任したばかりの同氏が、年次開発者会議で新リーダーとしてデビューする準備をしていた時だ。
インタビュー開始を待つ間、同氏のオフィスの外に置かれた椅子の背に掛けられたピンクのTシャツに目をとめた。Pichai氏のオフィスは、シリコンバレーにあるGoogleの広大な本社キャンパスの一角にある。そのTシャツには、熱心に遠くを見つめるPichai氏が描かれていた。その絵の下には、太い大文字で「WWSD?」と書かれている。「What Would Sundar Do?(Sundarは何をなすのだろうか?)」の略だ。
今や、この質問はより具体的な意味を持つようになった。Googleの共同創業者、Larry Page氏とSergey Brin氏が先週、爆弾発表を行ったからだ。Googleを象徴するこの2人が、創業から20年以上を経て、Googleの親会社であるAlphabetの経営から退き、Pichai氏を後任に指名したのだ。Pichai氏は既にGoogleのCEOを務めており、同社は巨大コングロマリットであるAlphabet傘下で検索エンジン、マップ、YouTubeなどを運営している。同氏は今やGoogleに加えて、自動運転車、人間の寿命を延ばす取り組み、その他のAlphabetの広大な宇宙全体の責任者になった。
FacebookのMark Zuckerberg氏やAmazonのJeff Bezos氏は著名人だが、Pichai氏はIT業界以外では比較的知られていない。そのような知名度の低さにもかかわらず、同氏はひっそりと地球上で最も力のある人物の1人になった。Googleのプロジェクトでは、Pichai氏はデジタル情報の最前線、世界最大のオンライン動画サービス、AIの未来を統括している。
複数の大手IT企業が、時には残念な形で、世界経済と政治の舞台で主役を張るようになった状況下で、Pichai氏は指名された。世界中の政治家や規制当局が、IT業界の強大な力に照準を合わせ、ITプラットフォーム大手がフェイクニュースやトライバリズム、過激主義の拡散を助長したとして非難している。
Pichai氏はCEO就任の発表後、次のようにツイートした。「私は、テクノロジーを通じて重大な諸問題に取り組むというAlphabetの長期的な目標に興奮している。LarryとSergeyのお陰で、われわれには時代を超える使命、永続的な価値、協力と探検を重んじる企業文化がある。これらは今後もわれわれの強固な基盤となる」
Pichai氏は数年かけてじっくりとGoogleでの地位を上げていった。2004年の入社後、「Chrome」ブラウザー開発を統括し、Androidの責任者になり、4年前にGoogleのCEOに就任した。そして今、この物静かだが精力的な人物は、Alphabet全体を統括することになった。
スタンフォード大学の学友同士としてガレージでGoogleを立ち上げたPage氏とBrin氏は、Pichai氏のCEO就任を告げる書簡で「Sundarは、ユーザー、パートナー、従業員に対して毎日、謙虚さとテクノロジーへの深い情熱を示している。Alphabetを立ち上げて以来、われわれは彼を最も頼りにしており、GoogleとAlphabetを将来に向けて導く人物として彼以上の人はいない」と述べた。
Pichai氏のトップ昇進は当然と受け取られている。Page氏とBrin氏は同社の現場からはほとんど姿を消していたし、一方Pichai氏は同社の代表者と見なされていた。Googleが米政権と平和を保つ必要があった際、Donald Trump大統領に会いに行ったのはPichai氏だった。Googleに対する複数の独禁法調査で矢面に立つのも同氏だ。Pichai氏は長年、Page氏の確実な後継者だったのだ。
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