――海外の反応はどうだったのでしょうか。
Twitterアカウントを運用していると、海外からもコメントがものすごく来ます。2018年12月13日の「天気の子」の製作発表会見のときは、発表したばかりの「天気の子」という新しいワードが日本だけでなく世界でもTwitterのトレンドに入りました。今まで見たことのない熱量でしたね。それがあったからこそ、これだけ公開を待ちわびてくれている人たちの熱量をどこで、うまく拾い上げるタイミングを作るか。その気持ちが6月30日に行き着いたわけです。
すでに「天気の子」は140の国・地域に配給され始めています。これは公開前から決まっていたことで、そういう各国からのオファーも「君の名は。」のヒットがあったからこそだと思います。日本でのキャンペーンは8月までで一段落して、現在は海外でのキャンペーンを軸に展開しているところです。「天気の子」はアカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表候補にも選ばれているので、1月13日に正式なノミネートに選ばれて、2月9日の授賞式で……となれば一番うれしいですね。(取材は2019年後半に実施)
――映画公開後のプロモーション施策は何かされているのでしょうか。
映画の宣伝の立場からすると、映画の公開日までにどうするのかが本当に一番大事なことなんです。公開後もずっと映画館にチラシを置いてほしいとか、ポスターを掲出してほしいとかいうのは、望めないというか、望み過ぎなことだと思うんですね。
――「次に譲る」ような意味合いですかね。
そうです。弊社の宣伝部として関わる作品も年に30本くらい抱えていて、「天気の子」だけではなく、自分の公開が控えている他の担当作品も宣伝してほしいという気持ちもありますし。けれども、「天気の子」は公開後にも「予報(予告映像)」ならぬ「後報」という言い方で、新しい映像を準備していました。
ありがたいことに、ほとんどの映画館で上映中の期間なのに新しいバージョンのCM映像を流してくれたと聞いています。9月27日からは4DXバージョンの上映も始まり、第3弾となるポスターもこのタイミングで新たに作りました。
――公開後はオンライン上での大きなプロモーション施策は特にされていないわけですね。
主導的には今はやってない状態ですね。公開前は、たとえばTwitterでこちらからお題を投げかけるといいのかなと考えていたりしたんですけど、いざふたを開けてみると、やり過ぎない方がいいのかな、という気持ちが僕の中に生まれてきました。なので、「賛否両論を劇場で確かめよう!」みたいなことは控えていますね。
――そもそも新海監督の作品は、なぜここまで多くの人の心をつかんだと思いますか。
当社には社員やマスコミの方が映画を見て取材をしてもらうのに使う試写室があるんですけども、「君の名は。」の宣伝プロモーション中に、新海監督の作品を初めて見た社員の人が、「アニメってこういう風になったんだ」みたいな話をしていたんです。新海監督の絵って現実のような緻密な描写があるわけですけど、アニメなのか実写なのか、なんなんだろうという、そういった感じ方がたくさんの人にあったんだと思います。その驚きが国民的アニメにつながったんじゃないかなと。
――新海監督の作品がこれほどまでに浸透し、爆発的な興収を上げることができたのは、さまざまなプロモーション施策がうまくはまった効果もあるのでは。
ここまでの爆発的なヒットになってしまうと、正直よくわからなくなってくるんですよね(笑)。数十億円なら比較対象もあるので、そこに行き着くまでに「オレが頑張った」とか「あれだけ宣伝したんだから」とか思うんですけど、それ以上にヒットしてしまうと「どこまでいくの……」というような、他人事みたいな感覚も生まれてきまして。100億円とか250億円とかになると本当にわかりません。天井を突き抜けたところまでいくと、どういう力が働いてそうなったのかは人によって捉え方が違うでしょうし、「これが本当の有効打だったな」というのは言いづらくなってきますね。
――これは仮定の話ですが、もし新海監督の次回作が出るとするならば……
それは出るでしょうね(笑)。
――プロモーション施策としては、どんなことをやっていきたいと考えていますか。
うーん、どんなテーマの作品になるのかが大事かもしれないですよね。今回は「天気」っていう誰にとっても身近な事柄でした。どれだけヒット作を生んでも「新海誠」の名前を知らない人もいるでしょうから、「天気」という身近なところから興味を持ってもらおう、といったところを中心にしたプロモーションの考え方もありました。
ちなみに邦画で興収100億円を超えたのは「君の名は。」以来だそうで、超メガヒットした2作品の次回作、期待はさらに大きいでしょう。「天気の子」では僕がSNS周りを担当したわけですが、2018年12月の製作発表会見のときのTwitterでの盛り上がりを見たとき、新海監督や新海監督の作品はこんなにすごいんだ、ということを改めて強く感じたんです。
次回作を発表する際にも、同じように、もしくはそれ以上の空気感や期待が生まれていると思います。それらのお客様の気持ちを大事にして、今回でいう6月30日の盛り上がりポイントのようなタイミングをいつにするのか、そこを考えるのがいいのかもしれません。次回もたぶんギリギリまで悩んでいるでしょうけど(笑)。
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