ダウンタウン・ロサンゼルスにあるThe Container Yardは、落書きや壁画が描かれた赤レンガの壁で知られた倉庫風の施設だ。米国時間11月13日、ロサンゼルスでもすっかり忘れ去られていたこの一角に、大勢の報道陣、インフルエンサー、さらにはDJのDiploまでが集まってきた。最新のガジェット、Motorola初の折りたたみ式スマートフォン「Razr」の発表を見るためだ。
ダウンタウン・ロサンゼルスがしばらく忘れられていたように、Motorolaの携帯端末も多くの人に敬遠されていた。同社は携帯電話の生みの親だったが、Appleの「iPhone」やサムスンの「Galaxy」端末に軽々と先を越され、今では全世界のスマートフォン販売台数の3%を占めるにすぎない。
だが、そんなダウンタウン・ロサンゼルスが、まだ一部に雑然とした地区を残しつつも、復活しつつある。同じように、Motorolaも、同社の象徴的なRazrブランドによって巻き返しを期している。
「これはRazrブランドの再スタートだ。決定打になるとは思わないが、新しい門出だと考えている」。Motorola MobilityプレジデントのSergio Buniac氏は、米CNETのインタビューにこう答えている。
Razrは、折りたたみ式スマートフォンをめぐる予想外の1年を締めくくるにふさわしい。良い意味で予想外だったというわけではないのだが。2月に、折りたたみ式スマートフォンは全世界の注目を集めた。今までにないデバイスで、画面が広く、文字どおり半分に折りたたんでコンパクトになる。サムスン、華為技術(ファーウェイ)、小米科技(シャオミ)が相次いでデザインを発表し、事実上はどの端末メーカー大手も折りたたみ式を開発中だとうわさされた。筆者の両親はアイオワ州に住んでいて、最新技術に疎いが、その両親でさえこの話題は知っていたくらいだ。
だが、そこで問題が発生する。画面の不具合などでスケジュールが大幅に遅れたのだ。
サムスンは、レビュー用の端末で画面の不具合が何件か報告されたことを受けて、1980ドル(約21万円)の「Galaxy Fold」の発売を5カ月遅らせた。ファーウェイは「Mate X」の発売を数カ月延期して11月15日とし、Mate Xで利用される予定の5Gネットワークの展開が中国国内で遅れていることを理由にあげていた。シャオミも、2019年のはじめに折りたたみ式の話題をちらつかせながら、実際にはまだ発売に至っていない。Microsoftは、折りたためるディスプレイを使うかわりにヒンジで2つの画面をつなげる方式の採用を決めている。
同様にMotorolaも、当初は夏としていたRazrの発売を遅らせていた。だが、いよいよその作品を世に送り出せるようになった。
13日に発表された新しいRazrは、同社が2000年代はじめに人気を集めていたクラムシェル型の再現といったところだ。米国で利用できるキャリアは、Verizonのみとなる。折りたたみ式の価格としては今のところ最安値の1500ドル(約16万円)となる同端末は、先行販売が12月26日に始まり、米国での一般発売は1月に予定されている。その他の市場での販売開始は、2020年になる。
Motorolaが見込んでいるのは、懐かしさに訴えて購買層の支持を集めることだが、当てにしている特徴はほかにもある。ポータビリティだ。Razrは、タブレットとのハイブリッド型を目指さずに、広げたときでもコンパクトな携帯サイズに収まる初の折りたたみ式スマートフォンなのだ。折りたたんだ状態では、本体サイズが72mm×94mmで、2.7インチの「Quick View」ディスプレイを採用している。広げると、内側の画面は6.2インチあり、これは2018年に出たサムスンの「Galaxy S9+」と同サイズだ。
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