単に高いスペックを揃えるだけならば、それほど難しいことではない。CPUはインテル、CPUはAMDから調達し、メモリやディスプレイなどのコンポーネントもアップルが作っているわけではない。今さらの話だが、PCの開発は水平分業が進んでいるため、macOSを除くなら(つまりWindows搭載ならば)同様の性能を持つPCを作ることは難しくない。
難しいのは、高性能になるほど消費電力が増える(=発熱が大きくなる)電子部品を、本体にどのように収めていくかという部分にほかならない。16インチモデルになって、大きく、厚く、重くなったとはいえ、元の15インチモデル時代から、MacBook ProはWindows搭載の高性能ノートPCと比べても、”Hプロセッサ”と呼ばれるインテルの高性能モバイル向けプロセッサのシリーズを搭載するPCの中で薄く、軽量な製品だった。
前世代で冷却性能を大きく向上させたことが背景にあったが、16インチモデルではさらに12ワット分の余力を得ているという。この追加された12ワット分の余力を、性能や追加オプション、高性能GPUの搭載といった熱源の追加、熱量の増加に割り振ることで、高性能化と幅広い追加オプションの選択肢といった、商品構成要素の多様化へとつながっている。
アップルは15インチモデルを見直す中で、クリエイターの要望を満たすために製品バランスを取り直したのだと話した。
MacBook Pro 担当プロダクトマネージャー、シュルティ・ハルデア氏は「MacBook Proを選んでくれるプロのクリエーターに、なぜ15インチMacBook Proを選んでいるのか、今後、どのような製品を望んでいるのかリサーチした」と話した。
アップルがリサーチしたのは、ハリウッドで映画やテレビ・ドラマを制作したり、コンピュータによる音楽制作を行ったり、写真を仕事にしている一線で活躍するクリエーターたちだ。
答えはシンプルで「もっともパワフルに使えるから」。そして今後の要望に関しても、もっともパワフルであり続けることだったという。
そうした要望を満たすため「容れ物」であるシャシーと冷却システムをみなおしたことが、結果的にディスプレイの大型化やオプションの多様化、新しいキーボードの採用、より大容量のバッテリ搭載などの特徴へとつながっている。
アップルは御存知の通り、一度基本設計を決めると構造を変えることはめったにない。つまり、今回の16インチモデルでのシャシー設計のへ変更は、今後、3~5年のMacBook Proのトレンドを示唆しているとも言えるだろう。
アップルの意図は明快だが、今回の刷新内容を俯瞰すると、PCを選ぶ上で熱設計が再びもっとも重要なテーマとして浮かび上がってきそうだ。
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