これまでに紹介したさまざまなスマート技術の普及を推進するため、農林水産省は2019年6月に「農業新技術の現場実装推進プログラム」を策定した。「先端技術を導入したときに農業経営がどう変わるのか、将来像を描いている。その中で活用される技術の現状や課題を整理し、その上で政策として何が必要かをまとめている。農業者にはいつどのような技術に取り組むべきかを戦略的に進めてほしい」(石田氏)。
最後に石田氏は、農業データ連携基盤「WAGRI(ワグリ)」を紹介した。「メーカーなどがそれぞれシステムを作る傾向があるが、メーカーの壁を越えてデータ連携することで、収穫や水管理のデータなどがすべて統合され、効率的な作業や1年を振り返ってよりよい生産改善のためのデータにできる。そのために取り組んでいるのがWAGRIだ」(石田氏)。
例えば、農業は1年1作が基本なため、米農家を20年続けても20回ほどのデータしか得られないが、1万人が集まれば20万のデータが集まる。「データを共有することによって見えるものがある。4月から農研機構を主体に運営を開始した。B(WAGRI)2B(メーカー等)2C(農業者)という流れでサービスを提供すると想定している」(石田氏)。
また、WAGRIの運用は将来的には生産現場にとどまらないと石田氏は話す。出荷需要予測、あるいは需要に応じた生産計画を立てていくときの支援、物流までデータを活用する世界を築くことで、「農業者の取り組みと消費者が繋がり、新たな価値を提供できるだろうと思う。そのため、さまざまな食産業の方々と連携していきたい」(石田氏)と思いを語った。
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