ITビジネスメディア「CNET Japan」を運営する朝日インタラクティブは10月30日、フードテック(食×テクノロジー)をテーマにしたカンファレンス「CNET Japan FoodTech Festival 2019 “食”の新世界に挑戦するイノベーターたち」を開催した。
ここでは、その中から「作り手と消費者をつなぐ“産直”は食の流通を変えるのか」と題するパネルディスカッションの模様をお伝えする。パネリストは、それぞれ産直サービスを展開するukka代表取締役の谷川佳氏と、ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏。モデレーターはCNET Japan 編集長の藤井涼が務めた。
インターネットによって全国から新鮮な野菜や果物、肉が購入できるようになった今、“産地直送”サービスは大きな変革を迎えている。
ukkaの谷川氏は、一次産業のオーナー制度プラットフォーム「OWNERS(オーナーズ)」を2015年にローンチ。2019年に「ukka(ウッカ)」にサービス名称を変更した。ukkaは、生産者がこだわりを持って作った食材を直送するお取り寄せサービスだ。生産者の会員になり、収穫などの体験ができる「Farm Membership(オーナー制度)」など、消費者が食のストーリーを感じられるサービスを提供している。
谷川氏は、「今後小売店や店舗、レストランでもあらゆる場所で無人化が進んでいく。だからこそ、“人”が作っているもの、“人”を感じられるものに対してニーズが増えていく。我々は消費スタイルの変化も感じていて、バブル世代(50〜60代)が“大量生産 大量消費”だったところから、ポストバブル世代(30〜40代)からそれ以下の世代では“特定向け特定消費”になり、自分が共感したものを欲するようになっている。そんな中で、ukkaはオンライン上で、ukkaが厳選した特にこだわりを持つ生産者と消費者を直接繋げるサービスを提供している」と自社のサービスを説明した。
ukkaのユーザー属性は、男性53%、女性47%と、このカテゴリーのサービスとしては男性の比率が高い。谷川氏は「ハレの日に食べたい食材などを扱っている。美味しい理由を語れるぐらいストーリー性がある。ギフトとしても生産者のレポートを一緒に届けるなど、直接だからこそできる届け方を考えている」と強みを挙げた。
現在ukkaは、三菱地所グループや岩手県一関市、新潟県などと連携しており、マンションマルシェ事業や地方創生プロジェクトを手がけている。これらの取り組みは、親和性の高いユーザーへのアプローチ、優秀な生産者の開拓など、toCであるukka本体に直接的な効果を与えているとのことだ。
ビビッドガーデンの秋元氏は、2016年にビビッドガーデンを創業。個人向けオンラインマルシェ「食べチョク」と飲食店向け仕入れサービス「食べチョクPro」を展開している。
食べチョクは、独自の基準をクリアしたこだわり生産者のみが自分の店を出せるオンラインの直売所だ。朝採りの新鮮な野菜を直送することにこだわっている。購入パターンは、単発購入、予約購入、定期購入がある。他には複数人で買いやすいような形で食材を小分けにして配送される共同購入も用意している。
秋元氏は、「私は農家の娘として生まれ、農家は儲からないと言われて育った。だから農家が儲かる仕組みを作りたかった。食べチョクを利用すると、農家としては流通ルートを通さないため、利益が約1.8倍になる。箱詰めも農家が行うため、消費者は収穫後1日以内のこだわった野菜を入手できる」と自社サービスのメリットを説明した。この鮮度の良さが食べチョクの特徴だ。
サービス開始から2年間で生産者数は550件を越えているという。また、「食べチョクコンシェルジュ」による生産者と消費者のマッチングにより、翌月定着率90%を達成しているそうだ。直近では「肉チョク・魚チョク」「酒チョク」とサービスを拡大しており、イベント当日には「食べチョクフルーツセレクト」のサービス開始も発表した。定額/月額で旬の果物を受け取れるサブスクリプションサービスだという。
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