「ukka」と「食べチョク」は競合?中抜きのリスクは?--“産直”への疑問に一問一答 - (page 2)

来場者がぶつける「産直」への疑問

 パネルディスカッションは、会場から質問を匿名で集められる「slido」を使い、モデレーターが選んだ質問にパネリストが答える形式で進められた。以下、その内容を紹介していく。

「slido」に寄せられた質問の一部
「slido」に寄せられた質問の一部

——送料がかかるため日常利用しづらい印象だが、利用者の購入ニーズはどこにある?

谷川氏:送料がかかっても、スーパーで売っている価格の1.2倍ぐらいになる程度。送料が大きなネックになっているとは感じていない。

秋元氏:スーパーよりはもちろん高いが、食べチョクは他社の自然派食品ECで買うよりも安いため、送料を入れたとしても高くはない。

——生産者はまとまったロットを販売しないと利益が出ない。マルシェもその点では厳しいかと思う。オンラインになったとはいえ、この点をどのようにクリアし、生産者に参画してもらっているのか。

秋元氏:生産者からは、まとまった量で出したいというニーズと、消費者から定性的にレビューがほしいというニーズがある。ロットで出す場合は飲食店に出していただき、消費者に対しては“励み”にするためにやってくださっている方もいる。ただし、食べチョクは小規模の農家が多いため、個人向けの方が利益になる方もいる。

キャプション

谷川氏:生産者の中でも、名もなき生産者もいれば、名だたる方もいる。後者はBtoBで直接販路を持っているが、それでもサービスに参加する理由はモチベーション。自分だけの満足度を上げるというより、そこの社員が感じられるということが大きい。地域の若手の生産者にも「ああいう風に売ればうまくやっていけるのでは」と地域全体にまで影響していく。ファンを持つメリットはたくさんあると感じている。

——産直サービスとスーパーは今後も共存していくと思うが、産直はマーケットとしてどれぐらいのポテンシャルを秘めていると考えているか。

谷川氏:我々は特別な日の食材を主に扱っており、対象にしているのはお取り寄せ市場。今後、自分軸でものを買っていく世界のなかで、お取り寄せ市場は激変していく。作り手に自分が直接オーダーして買っていくという消費スタイルが増えていくと思っている。従来の企業からリプレースしていけるか、新規のユーザーを獲得できるか、ひとつポイントだと思っている。マーケットとしては元々大きいと考えている。

秋元氏:日常使いでいうと、地方の農作物の直売が1兆円を超えている。生鮮ECという領域自体はまだ伸びしろが大きいと考えている。食品はEC化が遅れているので、産直ECは広まっていくと思うし、市場規模も非常に大きいと考えている。

——従来型の産直のオンラインモデルだと、同じように食材を扱うだけで将来性や発展性に欠けるのではないか。農家による加工の支援をするなど、付加価値をつける必要があるのではないか。

谷川氏:たとえば、ukkaでは桃を扱っているが、山梨はシャキッとしている桃を食べる文化がある。産地では柔らかい桃よりも、採れたてが美味しいと思っている人も多い。それを販売したところ、すごく売れている。これは届け方の工夫。あとは一生産者の食材だけでなく、色々な生産者と組み合わせるなど、地域と連携していきたい。

キャプション

——購入者が自宅に不在で、生鮮品を受け取れない場合のリスクはどのように回避していくのか。

秋元氏:食べチョクは収穫してその日に出荷するため、翌日午前着が最短になる。野菜は鮮度が大事なので、必ず受け取れる日を選んでもらうようにしている。もし傷んでいれば弊社が全額返金する。基本的にお子さんがいるご家庭がターゲットではあるが、共同購入するときに分ける人数を入れると、小分けにして分け合える仕組みも提供している。送料の負担なく、量も少なく買うことができる。

谷川氏:まだサービス化はしていないが、ひとつのアイデアとして、予約注文していたが必要なくなった場合など、「誰か買えませんか?」と受け取れる人に購入の権利を渡すことができないか考えている。

——物流業者が疲弊しているなかで、届ける人がいないという問題がある。

谷川氏:ukkaの中でも3年連続で送料が上がっている生産者がいる。物流会社とコストを抑える交渉をするのではなく、コミュニケーションで解決できる部分は多くあると考えている。たとえば共同購入。マンションマルシェ事業もそのテストを兼ねている。一緒に食材を受け取る体験はコミュニティの活性化にもつながる。

——産直への参入障壁は低いのではないか。また、消費者がプラットフォームを通さず生産者とつながってしまう、いわゆる“中抜き”のリスクをどう考えているか。

秋元氏:参入障壁が低いということはない。生産者一軒一軒に信頼される必要がある。経済メリットだけでなく、(生産者から)「この会社はどれだけ本気なのか」としっかり見られる。生産者さんが参画してくれることに関しては、非常に参入障壁が高いと考えている。

 中抜きの問題はあると思うが、それはプラットフォームの価値が高まっていない証拠。食べチョクは保証制度を提供していて、万が一商品が傷んでいたらこちらで返金を負担する。また、生産者たちに対する意見がアーカイブとしてたまっていくので、信頼度も上がっていく。

——産直に参入したことで、JA(農業協同組合)と揉めたりすることはないのか。

秋元氏:農作物に関しては、そのようなことは本当にない。直販も増えているし、JAにも農家を盛り上げるためには必要なことだと理解されている。

キャプション

——最後に、ukkaと食べチョクは競合なのか。

秋元氏:競合だと思う。日々焦りもあるし、もっと遠くに行かなければと思っている。そのためには切磋琢磨してやっていくことが必要だと考えているので、非常にポジティブな意味で競合だと考えている。

谷川氏:同感で、むしろありがたいなと思っている。競合がいることで何が足りていないのか、到達点はどこかなど俯瞰して事業を見ることができる。(秋元氏に向けて)スタートアップで一緒に頑張ろうと言っていた企業が、それぞれスケールし始めたら会わなくなったという話も聞くので、会社が成長してもたまには会いましょう(笑)。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]