アパレルの製造販売事業を手がける三陽商会は10月29日、スペイン発のサステナブルファッションブランドを展開するEcoalfと、合弁会社エコアルフ・ジャパンを設立すると発表した。Ecoalfが展開するブランド「ECOALF」は、廃棄物などすべてサステナブル素材を使用したブランドで、三陽商会が掲げる重点戦略の中の「サステナビリティを意識した経営」の中核となるとなる取り組みだ。
Ecoalfは廃棄ゴミから作る素材の研究開発から商品生産までを手がけるほか、NPO法人「Ecoalf Foundation(エコアルフ財団)」を創設し、「UPCYCLING THE OCEANS」という活動を行っている。これは、世界中の漁師たちと提携し海底ゴミを回収、分別、再生し製品として新たに活躍の場を与えるプロジェクト。スペインでは3000人以上の漁師と提携しており、タイではその活動が政府にも認められ官公庁とともに推進している。
Ecoalfの創設者であるハビエル・ゴジェネーチェ氏は、世界的に問題になっている海底ゴミの現状について語る。海底には65万トンもの漁網が放置されており、廃棄物の75%は目に見えない海の底に沈んでいるという。ペットボトルが海の中で自然に分解されるには400年もの時間が必要なため、海中のゴミは急速に増え2050年には海の中の魚よりもプラスチックゴミの方が多くなってしまう。さらに小さなプラスチックゴミが増えたことにより、海にいる魚の3分の1が、体内にプラスチックを抱えてしまっているのが現状だ。
ECOALFはこうした問題を解決するために、海底ゴミを使った再生資源だけで商品を作るファッショブランドだ。廃棄されたペットボトルや漁網、タイヤなどを原料にしたリサイクル素材を開発し、スタイリッシュで機能的なコレクションを作り続けている。商品開発の工程においても従来の服を作る工程に比べて約半分のコストとリソースで開発することが可能だ。素材によっては大量に水を消費するような服もあるが、リサイクル素材を使えば大切な資源である水も節約できるため、二重の意味で環境に優しい取り組みだと言える。
エコアルフ・ジャパンの代表取締役に就任した慎正宗氏は、これからの日本での取り組みについても紹介した。同社が目指すものとして、商品としての魅力を伝えるだけでなく、その背景にあるストーリーを伝えることで、海底ゴミの現状や環境問題について知ってもらうことだと語る。また、ファッションに限定したサステナブルだけでなく、消費行動そのものに影響を与えるサステナブルというテーマを牽引する存在になると語った。
日本でも「UPCYCLING THE OCEANS」の活動をスタート。千葉の天羽漁港との提携を進めている。活動には廃棄物の回収を行う漁師や、ゴミを移送する運送会社、ファブリック素材を作る紡績メーカーなど様々なパートナーが必要だ。現在、ウェブサイトにてパートナーの募集を呼びかけており、今後は全国に活動の輪を広げる予定だ。Ecoalfの「現地のゴミで作った服を現地で売る」という思想に則り、2021年には日本で回収したゴミによる商品化を目標としている。
また、2020年には東京にフラッグシップショップの1号店を出店し、メンズやウィメンズ、シューズやバッグといったラインナップを揃える予定だ。直営店の他にも百貨店やECなどの販売チャネルを活用し、2025年までに売上60億を目標に掲げている。2020年以降にはエコアルフの思想に共感する取引先と連携して事業を拡大していく方針だ。
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