NTTドコモは10月29日、2020年3月期の第2四半期決算会見にて、SNSなどで多くの報告が挙がっている、iPhone 11シリーズでデータ通信ができなくなってしまう問題について言及した。この点について記者から質問を受けた同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は、顧客からの申告はそれほどないとするものの、少数でも申告があったことを受け事実関係を調べている最中であり、その結果を踏まえ今後の対応を検討すると述べた。
決算については、営業収益は前年同期比2.5%減の2兆3300億円、営業利益は前年同期比11.5%減の5403億円と、前四半期に引き続いて減収減益となった。この要因について吉澤氏は、前四半期同様新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の提供による顧客基盤強化の影響が大きいと説明している。実際、通信事業の営業収益は前年同期比で897億円減の1兆9608億円、営業利益は前年同期比788億円減の4457億円を記録。ARPUも新料金プランの影響を受け、前年同期比で80円減の4740円となっている。
その新料金プランの申込件数は、当初こそ伸びが鈍かったものの、その後順調に伸びており、10月21日には800万を突破したとのこと。2019年度末の1700万契約という目標に向けて計画通りに進んでいると吉澤氏は説明している。
足元の携帯電話契約数は、前年同期比3%増の7920万契約と微増。MVNOを除く解約率は0.57%と、前年同期比で0.3%増加しているものの、ハンドセット解約率は新料金プランの提供などによって、前年と同じ水準となる0.46%を維持しているとのことだ。
吉澤氏によると、2019年10月に電気通信事業法の改正が実施され、端末価格が高騰することを見越して他社が端末価格の引き下げによる駆け込み需要の獲得に出たことから、6月から9月にかけては番号ポータビリティで不利な状況が続いたとのこと。だが法改正後の10月からは市場環境が落ち着き、回復基調にあるという。
一方のスマートライフ領域は、NTTぷららを子会社化した影響もあり、営業収益は前年同期比325億円増の4733億円、営業利益は前年同期比85億円増の945億円の増収増益となっている。dポイントクラブの会員数は前年同期比7%増の7234万に拡大し、dポイントの利用が伸びているのに加え、金融・決済サービスの取り扱い高も前年同期比31%増の2兆3900億円に達するなど、好調に推移している。
なお、吉澤氏は今回、業績予想の見直しを実施。純増数が計画より好調に推移していることから営業収益予想を4兆6400億円と、当初予想より600億円増加するとのこと。ただし新料金プランの影響に加え、4Gへの移行促進やスマートライフ領域の強化などもあることから、営業利益は予想を据え置くとしている。
NTTドコモは9月20日より5Gのプレサービスを開始しており、2020年春の商用サービス開始に向けて準備を進めているが、一方で吉澤氏は今回の決算に合わせて、3Gによる通信サービス「FOMA」と、FOMA端末向けに提供されているインターネット接続サービス「iモード」を、2025年末に終了することを明らかにした。iモードはすでに新規受付を終了しているが、FOMAも2019年度末に新規受付を終了するとのことだ。
FOMAの終了に伴い、NTTドコモでは今後FOMAの利用者を、4Gにマイグレーションする取り組みを進めていくとのこと。具体的には、低価格で購入できるスマートフォンのスタンダードモデルのラインアップを拡充するほか、11月1日からは4G端末への機種変更で端末代金を最大2万円割り引く「はじめてスマホ購入サポート」、そして60歳以上のユーザーが新料金プランに乗り換えることで、最大12か月間、音声通話オプションを月額700円割り引く「おしゃべり割60」を提供するという。
さらに吉澤氏は、店舗やウェブでの顧客接点も強化していくと説明。特にドコモショップに関しては、来店予約の受付を2020年3月末までに1500店舗に導入するほか、本体の初期設定やデータ移行のサポートを全店舗、かつ基本料無料で実施するなど、顧客サポートを強化。スマートフォンの使い方を教える「スマホ教室」も拡充し、2020年2月からは、有料による子供向けのプログラミング教室も展開していくという。
なお、今四半期には台風15号・19号による大規模な災害が相次いだことから、それらに関する対応についても説明。同社ではこれら災害の発生に伴い、最大で1日当たり2000人体制でネットワークの復旧支援活動を実施したほか、被災地のドコモショップでの無料充電やWi-Fiサービス提供や、訪日外国人へのSMSによる災害情報発信などを実施したとのことだ。
広域で被害をもたらした台風19号の被災地に関しては、災害救助法が適用された地域の在住者に対し、被害発生日以前の料金で通信速度なくデータ通信を利用できる「災害時データ無制限モード」の適用期間を、11月30日まで延長することも明らかにしている。
今回の災害を受けた今後の対策について、吉澤氏は役場などをカバーする主要基地局や、中ゾーン基地局の無停電化、バッテリーによる24時間稼働を進めているとのこと。既に中ゾーン基地局の約半数は、さらに強化がなされ72時間稼働になっており、残り半数の基地局についても72時間化を検討していくとしている。ただし全ての基地局を24時間化することについては、バッテリーの設置スペース確保の問題などもあり「かなり難しい。経済合理性を比較しながら判断していく」と吉澤氏は話している。
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