朝日インタラクティブは8月28日に「CNET Japan Conference 不動産テックカンファレンス2019 不動産業界の未来を輝かせる『テクノロジー・ビジネス・人材』の活かし方」を開催した。
本稿では、トリビュートによる「AI-OCRを活用した不動産営業マンの支援ツール TRG(トラジ)」の講演の様子を紹介する。不動産売買の実業のなかから生まれた不動産テックの取り組み、アナログな働き方をデジタルに移行させる営業支援ツールのトラジについて、トリビュート 東京本社 営業部 部長代理の田辺 慶二郎氏と、東京本社 営業部 課長代理の二上慎介氏が語った。
田辺氏によれば、一般的な不動産売買業務の現状は次のような形になる。日常の業務についてまず資料のやり取りは、「FAXやPCメールもしくは直接会って行う。外出すると事務所に戻るまで確認できない」という形だ。活動内容は、「飛び込み営業、電話営業、業務終わりに交流会の参加など、他業界と比べてもアナログな営業スタイルであり、事務作業は事務所のPC、アポ取りは電話、情報を取得するためにまずは名刺交換から。これらが不動産業界では一般的な常識となっている」とのこと。
これに対し、ビジネスの世界ではスマートフォンをはじめとするモバイル環境が普及し、今後もITやAIを活用する流れが加速して5年後、10年後に働き方は大きく変わっていくことが予想される。するとアナログ度合の高い不動産売買の実務において、「リテラシーの高い人たちは便利なものをどんどん吸収するが、そうでない人はますます取り残されていく」(田辺氏)という状況に陥る。
同社が同業者に実施した調査によると、新しいツールに対する関心度は、6割が「現状に満足」していて関心がないと回答し、3割は「よくわからないけど関心がある」、1割が「関心がある」。この1割のところは、年齢層でいうと40代未満であるとのこと。
「現状に満足している人たちが6割いる状況を考えると、この時点ですべての活動をITやAIに置き換え、いきなりすべてを変化させることは難しい。現状に満足している方たちが変化していくためには、心理的な部分も含めて段階別にサービスの利便性を上げる必要があり、少しずつ不動産業界で働く人々のリテラシーを上げていく必要がある」(田辺氏)
TRGは、これらの問題を解消すべく開発された不動産業界向け営業支援ツール(スマホアプリ)だ。領域としては賃貸でなく売買に特化し、事務作業から営業の実務までをサポートする。コンセプトは、「IT、AI分野のサービスを取り入れ、全国の不動産の情報格差を作らないこと。働く人たちに時間や場所に縛られず、効率よく仕事ができる環境を提供すること」というもの。また、単なる不動産情報のマッチングサービスにとどまらず、不動産業界の働いている人たちに視点を置いた人物主義のサービスとしている。
TRGには、最終的に次の6つの機能が実装される計画となっている。
まず、不動産の営業マンの検索とマッチング機能について。不動産売買ビジネスでは、買いたいニーズと売りたいニーズのマッチングで成約が生まれるが、その前段階には必ず営業担当者同士のマッチングがある。TRGでは、「購入ニーズと売却ニーズのマッチング」「新規開拓がしたい、人脈を広げたい営業マン同士のマッチング」「水面下で購入・売却をしたい営業マン同士のマッチング」を実現する。流れとしては、最初に不動産営業マンを検索し、プロフィールを閲覧、仕事になりそうな相手に対してチャット申請し、相手に承認されるとマッチングが成立して情報のやり取りが行えるようになる。
その際に、得意案件や実績などプロフィールの内容を充実させることで相手の興味を引くことができ、マッチング率が高くなっていく。申請がもらえれば、全く稼働をかけずにネットワークが広がり、申請する側も事前に担当者の情報があれば親和性の高い相手を特定でき、効率よく人脈を広げられる。
従来の営業活動とTRGを比較するとどうなるか。飛び込み営業は20件飛び込んで1件程度で営業担当者とのマッチング率は5%ほど、電話営業になるとさらにハードルが高く1%程度であるのに対し、TRGでは「80%を超える」という。また費用対効果を比較すると、交流会に参加する場合、100人くらいと名刺交換を行えるが、親和性の高い営業担当者と会える確率は低い。参加費5000円で月に2回参加すると1人あたり1万円で、コストがかさむ。TRGを使った場合、月額コストは個人8800円、法人10IDまで5万円。さらにユーザー数1万人突破までは、無料で使えるという。
チャット機能は、従来の電話、PCメール、FAXでのコミュニケーションや資料のやり取りをスマホ上のチャットで効率よく行えるようにするもの。グループチャットが可能で、複数の担当者がリアルタイムに商談を進めることができる。扱い方はLINEと一緒だが、TRGは不動産の実務に合わせており、物件ごとにチャットを立ち上げることができ、案件ごとの進捗確認や後々の進捗管理がしやすい。
購入ニーズを登録すると、他のユーザーが登録した物件とリアルタイムでマッチングできる。登録画面で自社購入あるいは依頼を受けている不動産条件を入力すると、他のユーザーの登録物件との自動マッチングが行われる。他のユーザーが登録したタイミングでマッチングの通知が届き、物件の閲覧や問い合わせを行うか選択が可能になる。
登録した後は、物件概要だけでなく紹介者の情報も確認できる。不動産物件は複数の担当者が同じ物件を扱っていることが多いため、担当者プロフィールを見ることでどの担当者と話を進めていった方がいいのか、アプローチ先を選定できる。
「今までのやり方に全く意味がないわけではないが、我々の時間は限られている。なるべくなら効率よく新規開拓やアポ取得ができ、隙間時間を有効活用できる方が良いことは明らか」(田辺氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス