KDDIは9月2日、5Gと高精細映像、AIを組み合わせた法人向けソリューションを、2020年3月より提供することを発表した。それに先駆けて、11月より5G・IoTのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を通じたトライアル環境を提供する。
同日に開かれた記者向け説明会では、KDDIのビジネスIoT企画部長である原田圭悟氏が、サービスの提供経緯とその概要について説明。KDDIは約20年にわたってIoTのビジネスに取り組んでおり、現在は「指数関数的に大きく伸びている」(原田氏)など、法人向けのIoTビジネスは順調に拡大が続いているという。
その上で、ネットワークが5Gになることで、従来より多くのデバイスがネットワークに接続し、IoTの利用が幅広い用途に広がると原田氏は説明。従来のIoTではセンサーから送られてきたテキスト情報などが主体であったが、高速大容量通信ができる5Gではそれが映像などより大容量の情報に拡大すると考えられるため、より新しい価値を提供できるとしている。
そこで、KDDIが持つIoTビジネスで培った実績と、デバイスからネットワーク、クラウドや分析までをワンストップで提供できるソリューション、そしてKDDI DIGITAL GATEを活用したオープンイノベーションの取り組みという3つの強みを生かし、新たに法人向けの5Gソリューションとして提供を発表したのが、今回の映像と5Gを活用したソリューションになるという。
5Gの最初のソリューションとして映像に目を付けた理由として、原田氏はKDDIが半年間顧客へのヒアリングを進めた結果、「1人1人に適したマーケティングをしたい」「表現をよりリッチにしたい」「店舗には商品だけを置き、機材などはなるべく設置したくない」「トラブルの対応も全部お任せしたい」などといった意見が多く寄せられたことを挙げる。「そうした条件を満たせるのが5Gだった」ことから、映像と5Gの活用に至ったのだそうだ。
実際このソリューションでは、5Gによって高精細な映像を扱えることで映像認識の精度が大幅に高まり、人の動きを“みえる化”できること、それを基にマーケティングや業務効率化が進められること、そしてクラウドの活用によりサーバーなどの機器を店内に設置する必要がなくなり、保守・点検もKDDI側に任せられることの3点が大きな特徴として挙げられており、顧客のニーズを満たす内容となっているという。
そしてこのソリューションでは、大きく3つのサービスを提供する形になるとのこと。1つ目は、高精細カメラと5G、そしてAIを活用したクラウドの画像解析エンジンをパッケージにした「AIカメラ」。5Gとクラウドの活用によって店内にサーバーやケーブルの設置が不要になるため場所を選ばず設置でき、なおかつ低コストで映像解析を利用できるのが大きなメリットになるという。具体的な用途としては、小売や飲食店などのマーケティング分析のほか、駅のホームの転落検出、踏切の侵入検出などを想定しているとのことだ。
2つ目は、高精細のカメラを用いて来場者の属性を分析・判断し、サイネージなどに適切なコンテンツを表示する「Intelligent Display」。こちらもカメラからコンテンツマネジメントシステム(CMS)までをKDDIが一括提供する仕組みで、鉄道業界や放送業界、小売業界などからニーズが挙がっているという。
そして3つ目は、ヘッドマウントディスプレイ不要で3Dコンテンツを視聴できる「3Dホログラム」。コンテンツをローカルに持たず、5Gを用いクラウド経由で高速転送することにより、単にコンテンツを表示するだけでなく、モーションセンサーと連動しコンテンツに直接触れてリアルタイムに操作できる仕組みなどを、低コストで実現できるようにしたのだという。
原田氏によると、こうしたソリューションは通常、数百万円から数千万円はかかるというが、「スモールスタートを求める顧客には合わない」ことから、低コスト化を重視したとのこと。AIカメラを例に挙げると、カメラを5台まで接続できるサーバーとAI機能、保守対応もセットにして月額4万円から、カメラ1台当たり月額1万6000円から提供するとしている。5Gの回線費用は現在準備中とのことだが、「申込書1枚でバンドルして提供できる」と、低価格ながらも顧客に分かりやすい形で提供することを重視するとしている。
また原田氏は、今回のソリューションはあくまで第1弾であると話し、11月以降、5Gの商用サービス開始までに第2弾、第3弾のソリューションも打ち出していく考えも示した。まずはビジネス規模が大きい交通や小売、次に製造業などの大企業を対象に提供していくとのことだが、その後領域を広げ、顧客の声を聞きながら5Gの特性を生かしたサービスを提供していきたいと話した。
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