テレビ世界シェア第2位のTCLが日本市場に本格参入する。8月29日、TCL独自の量子ドットLED「QLED」技術を採用したフラッグシップ「X10」シリーズをはじめ、サウンドバーに対応した「C8」、エントリークラスの4Kテレビ「P8」の3シリーズ7モデルを日本で発表した。発売は9月20日より順次。
TCLは1981年に中国で設立。テレビを中心に、白物家電やスマートフォン、スピーカー、ヘッドホンなども手掛ける総合家電メーカーだ。すでに北米、欧州などグローバル展開を果たしており、2018年にはテレビ出荷数が2861万台に達し、市場シェアは10.9%。これはサムスンの16.3%に続く世界2位の記録だ。
日本においては、2015年にTCLジャパンエレクトロニクスを設立。2017年には日本でのテレビ販売を開始した。TCLジャパンエレクトロニクス 代表取締役の李炬(り・きょ)氏は「日本市場への参入は世界の頂点にのぼりつめるために避けて通れないい道」と位置づける。
発売する新モデルはいずれも4Kテレビ。Android OSを搭載するほか、Google Assistantに対応し、音声コントロール機能を備える。HDRに対応する広色域を実現し、奥行き感や質感をリアルに再現できる高画質を実現する。
特徴的なのは、フラッグシップX10シリーズに採用されている量子ドット(QLED)技術だ。量子ドットは、直径2~10ナノメートルサイズの半導体微粒子を使用して光の波長を変換制御する技術。これを、テレビのバックライトとディスプレイの間にフィルムとして差し込むことで、表示できる色数が増え、色域が広がるという。
TCLでは、以前からQLED技術を採用したテレビを発売しており、最新モデルでは現行モデルに比べ、色域を約115%まで拡大することに成功している。なお、最新のQLED技術を搭載したテレビの発売は、世界に先駆け日本で開始するとのこと。X10シリーズは65V型の「65X10」(想定税別価格:20万円前後)のみのラインアップとなる。
C8シリーズは65、55V型の「65C8」(同:12万円前後)、「55C8」(同:9万円前後)の2モデルを用意。画面を1296分割し、明暗を表現するマイクロディミング機能を備えたほか、HDRに対応する広色域「Wide Color Gamut(WGC)」に対応。モニタ下部にはサウンドバーを搭載する。
P8シリーズは4K対応スマートテレビのスタンダードモデル。65、55、50、43V型の「65P8S」(同:10万円前後)、「55P8S」(同:7万円前後)、「50P8S」(同:6万円前後)、「43P8B」(同:5万円前後)の4モデルをそろえる。43V型は4K解像度、Android OS搭載機ながら、想定税別価格が5万円となる。
いずれも、モダンかつシンプルなデザインを採用しており、テーマは「わびさび」。TCL 工業デザインセンターイノベーションラボ責任者のTiagoAbreu(ティアゴ・アブレイユ)氏は「デザインコンセプトを調査するうちに行き当たったのが、日本古来の伝統的な美の概念であるわびさび。アーティストでもあり建築家でもあるレナード・コーレン氏は『わびさびの真髄は、不要なものを排除することで残ったものが際立つ』といっており、この美学の理論を取り入れることで、空間を感じられるようにしたいと考えた。目指したのは、シンプルで本物。直感的で直線的な形状を採用したシンプルな形によって、製品の長寿命化が図れると考えている」とデザインコンセプトを話した。
X10シリーズではウルトラスリムベゼルと呼ばれる幅2ミリの超薄型デザインを採用。アルミフレームを全体に使用することで、パネルを支える強度が保てるほか、視覚的にもライトに仕上げられたとしている。
日本のテレビ市場は、根強い人気を誇る国内ブランドが多く存在するほか、韓国や中国の海外勢も進出しており、競合は多い。TCL 海外事業部 最高マーケティング責任者 EileenSun(アイリーン・ソン)氏は「テレビブランドとしてパネル、モジュール、テレビ本体まで自社で生産できる体制を持っていることがTCLの強み。パネル製造会社CSOTを持ち、パネルを自社内で垂直統合できる」と話した。
新製品では4Kチューナーは非内蔵となっているが、4Kチューナー内蔵モデルは現在開発中。8Kテレビについても2020年に発売予定としている。
代表取締役の李氏は「商品力、ブランド力ともに、国内メーカーのモデルとはかなりの差があると認識している。まず一歩一歩着実に買い求めやすいモデルを展開し、徐々にブランドを浸透させていきたい」とし、2020年までに2%、2021年には3%の市場シェアを目指す。最高マーケティング責任者のソン氏は「若い層をターゲットにしていきたい」とターゲットについて話した。
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