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ホームレスから1500人規模の社長に--スタートアップを照らすSun Asterisk小林氏 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2019年08月21日 08時00分
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「ベトナム」に魅了された理由

——ようやくIT業界につながりました。そこからベトナムにはどう関わっていったのでしょうか。

 いま一緒に仕事をしている共同創業者が経営していた、ソーシャルゲーム開発の会社に出向したことがきっかけでした。そこではエンジニアを外注していたので、ノウハウがたまっていかないし、案件のたびに毎回いちからやり直し、みたいな感じになっていました。かといって、日本国内の優秀なエンジニアは少なくて採用できない。

 サービスを自分たちでたくさん作っていくために、もっと多くのエンジニアを抱えたいと思って、アジアをいろいろと見てみました。そしたらベトナムが一番親和性があり、人口も多く、理系の教育に力を入れていることがわかりました。そこで、まずはここからチャレンジしてみるのがいいんじゃないかと思いました。

 恩義のある社長には申し訳なかったのですが、ベトナムはすごく楽しそうだし、退職して新しいチャレンジを始めることにしました。最初は自分自身でエンジニアとしてベトナムに行って、向こうのエンジニアと一緒に仕事をして、これは本当に何でもできるなと感じました。エンジニアのポテンシャルがめちゃくちゃ高いし、すごく優秀なんです。

——日本では見つからないような人材がベトナムには豊富にいたと。

 ただ、当時のベトナムのITエンジニアの仕事は、世界中から依頼がくる大手企業の基幹系のシステムの運用保守に利用されることが多かったんですね。先ほど言ったようにベトナムではITのサービスが始まったばかりで、新しいサービスを作っていく経験値は全然ない。基本的にはコスト削減の手段としてベトナムのオフショアが選ばれていたと思うんですが、こういう仕事では新しい技術は使えないし、新しい何かを生み出していくこともできません。


 そういう仕事を否定するわけではないですが、僕らとしては新しいサービスを開発するスキルを身に付けたいと思っていたので、新規事業だったり、スタートアップ企業のサービス開発みたいなものだけを受けていました。運用保守だけの案件は依頼があっても、僕らだとできないので他の会社を紹介していましたね。

短期間で複数社のIPOを支援

——サービス開発に特化するというこだわりをもって事業を進めていたんですね。

 そうやっていくうちに、スタートアップ企業のクライアントが資金調達して上場したりするようになりました。2016~2017年は4~5社のクライアントが一気にIPOしたり。創業当初からお手伝いさせていただいて、共にサクセスストーリーを歩んで、IPOして次のチャレンジに挑むところもご一緒させていただいて……という経験を何社もしているのは、実はすごい資産ではないかと思い始めました。

 なんなら自分たちで新しいことをやらなくても、新しいことをやろうと思っている人は一杯いるんだから、それをお手伝いして全部やった方がいいよね、という考え方に変わってきました。Sun Asteriskの前はフランジアという社名でしたが、これは「フロムアジア」のもじりだったんです。つまり、自分たちでアジアから世界のサービスを作っていくぞという思いが込められていました。

 でも、それは自分たちじゃなくてもいいし、アジア発じゃなくてもいい。僕がやりたいことってもっと違うことなんじゃないか、と思い直しました。新しい何かをやりたい、あるいは社会課題を解決したい、そういう人たちを包括的に支援できるチームにしていこうと。

——今や単なる開発だけでなく、事業成長を加速させるブーストも手がけられています。

 スタートアップ企業の課題解決でテクノロジーに関わるところはできるようになってきて、じゃあ次はなんだろうと。ファイナンスも必要だし、投資もできるように整えていこうと考えてブーストというモデルができました。ただ、僕らにキャッシュがリッチにあるわけではないので、現物出資に近い形のスキームでエンジニアチームを貸し出して、代わりにエクイティをもらうというモデルです。

 そうやってブーストするところから成功事例が出てくると、今度は社内でもやりたいみたいなことも出てくるし、スタートアップを支援してるという噂を聞きつけて、まだ会社はないけれどアイデアとパッションはあります、みたいな人からも声をかけられるようになりました。

 それで、ゼロからプロダクトを一緒に作ったり、我々のプロダクトアイデアを元に、そのプロダクトの業種に強い外部の経営者と一緒に形にしたりと、ゼロ・イチで作っていく動きが出てきました。流れで「この方がいいよね」というのをやり続けていたら、なんとなく事業が多様化していた、というのが実際のところですね。「Sun Asteriskは何をやっているのかわからないけど、とりあえずあいつらに相談すれば大丈夫」と思われるのが、僕らにとっては理想です。

——さまざまな形のビジネスを手がけているので一概には言えないのかもしれませんが、具体的にどのような流れでサービスやプロダクトを開発しているのでしょうか。

 スタートアップ企業で、シリーズAの数億円くらいの資金調達を終えて、これから人を集めてプロトタイプのサービスをスケールさせていくんだというタイミングでご連絡いただくことが一番多いですね。でも、ここで採用の壁にぶつかるわけです。国内だと人材不足でエンジニアを採用できないので。

 自分の指示に従って動いて、物を作ってくれるエンジニアが欲しい。日本だと採用できないけど、ベトナムにある会社がいいらしい、なかでもSun Asteriskがいいらしい、と口コミや紹介で知ったところからお問い合わせをいただきます。リファラルはすごく強いですね。既存のクライアントさんがイベントなどに登壇するときに僕らを紹介してくれたり、飲み会などでFacebookからつながったりすることが多いです。

 その後、打ち合わせをして、僕らがチームをアサインして、ブリッジSEと呼ばれる日本語を扱える現地のSEとやりとりをしながらプロジェクトを進めてく感じです。

——プロジェクトが終わったらそのチームは引き上げるんですか。

 プロジェクトが終わることがあまりないんですよね。基幹システムだと納品してしまうと開発は終わりで、あとは保守だけになるじゃないですか。ですけど、僕らがお手伝いするのはサービスなので、ずっと続く。開発と運用が一緒なんですよ。しかも、きっちりとした納期がないので、成果物定義は最初からできない。


 ある程度の見積りはしますけど、仕様もしょっちゅう変わっていきますし、契約形態はサブスクリプション型というか、毎月このチームがフルで動いていくらです、という値付け。その中でできることをやっていきます。BtoB SaaSのビジネスモデルに近いですかね。

——Sun Asteriskが他社と比べてクライアントに評価されているポイントはどこでしょう。

 多少荒い状態でゴリゴリ開発を回していくモデルなので、クオリティに多少の粗はあると思っています。ただ、クオリティに対する意識を改善しようとしているところや、対応の速さ、対応の誠実さみたいなところはすごく評価していただいてるのかなと思います。

 長くスタートアップやベンチャーの新規サービス開発を手がけてきたおかげで、成果物の納品が目的ではなく、そのサービスを成功させることが目的という意識が強くなっています。エンジニアたちはみんな各クライアントのサービスを自分たちのサービスだと思って開発してくれていますし、積極的にコミットしてくれていますね。

 エンジニアたちはチームごとにかけ声をかけて仕事を始めるのですが、あるクライアントの担当者がベトナムのオフィスを朝訪れた際に、自社のサービス名を大きな声で叫んでいるエンジニアたちの姿を見て、コミットの仕方に鳥肌が立ったみたいこともおっしゃってました。サービスに対する情熱みたいなところは非常に評価していただいていると思います。

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