(編集部注:本記事は、7月18日掲載の「E・マスク氏のNeuralink、脳とコンピュータをつなぐ技術の臨床試験を2020年に開始へ」に未翻訳部分を追加し、改めて掲載したものです)
人間の脳とコンピュータの直接接続を目指す、Elon Musk氏の新興企業Neuralinkは、数千個の電気プローブを脳につなげるシステムを開発し、2020年にこの技術の臨床試験を開始したいと考えている。最高経営責任者(CEO)のMusk氏が米国時間7月16日に明らかにした。動物実験では既に有効性を確認しているという。「サルは自分の脳でコンピュータを制御することができた」と、Musk氏は16日、サンフランシスコからYouTubeでライブ配信されたプレゼンテーションで述べ、同社の科学者が期待していた以上の研究成果を発表した。
Neuralinkの最初の目標は、脳や脊髄の損傷または先天性障害を持つ人々を支援することだとMusk氏は述べた。この技術は、脊髄損傷が原因で運動機能や感覚機能を失った対まひ患者を支援できる可能性がある。この治療法は、「コンセンシュアル(共感性)テレパシー」のようなSFめいた極端な発想と比べれば、衝撃度はかなり低い。
しかし長期的な目標は、人間と人工知能(AI)をつなぐ「デジタルスーパーインテリジェンス層」を構築することにある。同氏はAIを、人類に対する実存的脅威とみなしている。
「最終的には、AIとの共生のような状態を達成できる、脳とマシンをつなぐ完全なインターフェースを構築できる」とMusk氏は述べた。そこに至るまでの1つの目標は、思い浮かべるだけで1分あたり40語を入力できるようにすることだ。
Neuralinkは、コンピューティングと人類の両方を劇的に作り変える可能性を秘めている。ただし、同社や同じ志を持つ研究者らが、人間を直接マシンと接続するべきだと、規制当局と一般社会を納得させることができればの話だ。技術を開発し、実用化と低価格化を進めて、安全で望ましいものであることを人々に納得させるまでには、莫大な課題を乗り越えなければならない。
同社は2019年に入り、ミシンのような技術を開発した。この技術で脳に小さな穴を開け、「スレッド」と呼ぶ極細の導線を血管を回避しつつ挿入する。
Musk氏は「来年末までには人間の患者にこのシステムを提供したいと熱望している」と語った。だが、同氏は米食品医薬品局(FDA)の認可を取得するのは「極めて難しい」と認めた。
脳とマシンをつなぐブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術の研究には、同社と競合する他社や研究所も活発に取り組んでいる。だが、Neuralinkの侵襲的な方法は危険だとみる向きもある。
現在、脳の活動をモニタリングするために脳に数十本のワイヤーを挿入されたてんかん患者がいると、カーネギーメロン大学の医用生体工学の責任者で非侵襲的方法を支持するBin He氏は語る。「健常者の場合、人間の脳に何本までワイヤーを挿入しても危険がないのか、あるいは脳の働きを阻害しないのかは分からない」と同氏。
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