パナソニックが、京都府京都市に開設した「Panasonic Design Kyoto」は、パナソニックのデザイン拠点だ。今まで、大阪と滋賀に分散していた家電のデザイン部門を京都に集結。4月から運用を開始した。
パナソニック専務執行役員アプライアンス社社長の本間哲朗氏は「パナソニックはどちらかというと事業部制がDNAとしてあり、事業部ごとにデザインのテイストが異なっていた。これを克服できなかったが、拠点を集約し、チーム編成をし直すことで、筋の通ったデザインにしていく新しい挑戦」とPanasonic Design Kyotoの役割を話す。
Panasonic Design Kyotoは、9階建ての4~9階をパナソニックが使用。約150人の社内デザイナーが働いている。ビル内には、コミュニティスペースの「HUB」や、セミナースペースとしても利用できる「GARDEN」、京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」とPanasonic Designとのコラボレーションによる、未来の家電が見られる「Kyoto KADEN Lab.」などを設ける。
6~7階が執務スペースになっており、フリーアドレス制を採用。外国人デザイナーも勤務しており、グローバル展開を見据える。その背景には「家電事業をやってい行く上で、デザイン力の強化は欠かせない。海外の家電メーカーなど、コンペチターのデザイン力は脅威に感じる。欧米の家電大手は非常に洗練されたデザインで、各地域の好みに会ったデザインをする能力に長ける」と本間氏は現状を分析する。
そうした市場を背景に生み出したのが、GO ONとのコラボレーションだ。日本の伝統工芸が持つ美意識やモノづくりの原点を探り、素材や技巧をテクノロジと融合することで生み出したプロダクトは10組におよぶ。「1年間、七転八倒の苦しみの中、いくつかの素晴らしいアイデアがでてきた」と本間氏はこの1年間を振り返る。
この中から登場した京都の手作り茶筒の老舗「開化堂」とのコラボレーションによる「響筒」は2019年春をメドに商品化を決定。デザイン部門の主導により、体験できるプロトタイプを広く世の中に公開し、その体験から得られたデザインの価値、魅力がお客様に響いたことで、商品化に結び付いたという。
「響筒を京都市長の門川大作氏に報告したところ、『家電にとってのデザインは付加価値ではなく、価値』といってくれた。これはまさしく我が意を得たり」と本間氏は話す。
Kyoto KADEN Lab.では、第2弾として、「Electronics Meets Crafts: Engraving Phenomena」をコンセプトにした5つのプロタイプを公開している。ただし本間氏は「海外で家電製品を販売する時に日本の美意識を押し付けるのは間違い。何らかの日本的な美意識をベースにしながらも、その国の人に好かれるようなデザインがメーカーとしてあるべき姿だと思っている。日本的な何かを掴むためにも、伝統工芸の集積地でもある京都でコラボレーションし、何かを掴み取って欲しい」とコメントした。
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