ジョニー・アイブ氏の新会社LoveFromの顧客第1号は、Appleになる。Appleはウェブサイトを通じて、LoveFromに仕事を発注することを伝えており、アイブ氏退社のニュースのショックを幾分と弱めるよう努めている。このニュースが出た際、Apple株は1%程度の変動に止まっており、投資家は楽観視しているようにみえる。
アイブ氏は今後もAppleに関わるというが、今回のシリーズで触れてきたとおり、iPhone、iPad、Macなどの主要製品におけるデザイン余地が少なくなってきている中で、アイブ氏が製品に深く関わるとすれば、ウェアラブル分野だろう、と考えられる。
アイブ氏がAppleのウェアラブルデバイスに関わるメリットもある。言い方を変えれば、Apple以外でアイブ氏が思い描く形でデバイスを実装でき、人々のニーズに応える台数を製造できるメーカーが、存在しているだろうか、ということだ。
ウェアラブルデバイスという括りで言えば、現在は前述のApple WatchとAirPodsがあるが、これらの製品が最終的な姿かと言われると、他の製品に比べて成熟度が満たないように感じられる。繰り返しになるが、2〜4年の歴史しかない製品で、AirPodsは1世代、Apple Watchでも2世代しかデザインを経験していないからだ。
さらに言えば、ウェアラブルデバイスはまだ増えるはずだ。すでに時計とイヤホンが投入されているが、メガネやキーチェーンなど、まだ身に付けるものでスマート化していないものはたくさんある。特にメガネはARに力を入れるAppleとしては、ぜひ取り組みたいデバイスになるはずだ。
一方、Appleは今後どうデザインと向き合っていくことになるだろうか。すでに完成の域に達しているデバイスのデザインを崩さないように維持すればそれで良いのか、と言われれば、そうではないだろう。
今後も、特にディスプレイ周りでは新しい技術の登場が期待されるだろうし、バッテリーやこれを消費するプロセッサの性能向上なども続くことになる。そして、あらゆるデバイスで、熱処理が難しい問題としてより注目されるようになるだろう。つまり、現在のデザインのままでは実装できなくなるポイントが訪れるはずで、個人的にはそうした技術の変化・進化に期待している。
そうなった時、アイブ氏が社内にいない体制で、デザインに関する意思決定をしていかなければならないわけで、できるだけ早く、何らかの製品で新しいワークフローを試してみるべきだと思う。そのための新製品が何か必要になるのではないか、と思うわけだ。
その一方で、デバイスの形状が極限までシンプルなレベルへと収れんしたとすると、そのデバイスの形を前提としたサービスやAR・VRのヒューマンインターフェイスデザインへの取り組みがやりやすくなるのも事実だ。その点では、iPhoneもiPadも、はやく「これ以上形が変わらない段階」に到達した方が、サービスや新しいインターフェースを固める上で有利になる。デザイン余地がなくなることは、悪い面ばかりではないはずだ。
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