総務省が打ち出した「違約金1000円」案に潜む矛盾と問題点 - (page 2)

あまりに乏しい「1000円」の根拠

 制度案の中でも多くの疑問が投げかけられているのが、提示された金額の根拠があまりにも乏しいことだ。例えば違約金上限が1000円とされた理由について、制度案では6000人に実施したアンケートを、その根拠としている。

 このアンケートでは、他社への乗り換え意向があり、なおかつ違約金支払いの意思がある1758人のうち、8割が許容できるレベルが1000円だと答えたという。だが、アンケートは消費者の希望が少なからず含まれており、それをもって金額を決めてしまうというのは、あまりにも根拠に乏しいと言わざるを得ない。

違約金の上限を1000円とした根拠として、制度案ではアンケートの結果で回答が多かったためとしている
違約金の上限を1000円とした根拠として、制度案ではアンケートの結果で回答が多かったためとしている

 割引額上限の2万円という金額の根拠についても同様だ。制度案では利用者1人当たりの利益見込み額を上回る値引き額は行き過ぎた利益の供与になるという基準を設けており、現在の市場環境を前提に算出すると、その利益見込み額は「3万円」になるという明確な根拠を打ち出している。

 にもかかわらず、その後で将来的に分離プランの導入によって携帯電話会社の利益が減ること、そして「通信・端末の各市場の競争を促進するためには、現在の市場環境を前提とした値引きを許容するべきではなく」(制度案より)、一層の制限が必要として「3万円より1段階低い」(制度案より)額となる、2万円に設定したというのだ。そもそも“1段階”が1万円であるという根拠はどこにも説明がなされておらず、1万円引き下げた理由付けに乏しいというのが正直な所である。

 そしてもう1つ、今回の制度案では長期利用者向けの割引にも、許容される割引の範囲が1カ月分の料金までと規制がかけられることとなった。過度な割引が「契約の解除を妨げる条件に該当」(制度案より)するというのがその理由で、具体的には解約防止のため、2年縛りの違約金の代わりに、2年以上契約した人に9500円分の割引を提供することを防ぐのが狙いであるようだ。

これまで総務省が推進してきた長期契約者の優遇も、今回の制度案では「契約の解除を妨げる条件に該当」するとして、制限を設けるなど厳しい措置を打ち出している
これまで総務省が推進してきた長期契約者の優遇も、今回の制度案では「契約の解除を妨げる条件に該当」するとして、制限を設けるなど厳しい措置を打ち出している

 しかし、総務省はもともと、携帯電話会社に対して長期契約者への優遇を求めていた。実際、2016年に施行された「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」には、「ライトユーザや割引等を受けない長期利用者等の多様なニーズに対応した料金プランの導入等により、利用者の料金負担の軽減を図る」と記載されている。

 またそもそも、分離プランの義務化などによって端末の過度な値引きを防いだのは、端末を買い替えず長期間同じ携帯電話会社を利用している人の不利益を減らし、長期利用者を優遇する狙いがあったはずだ。にもかかわらず、突如長期利用者の優遇に制限をかけるという方針を打ち出したのには、矛盾を感じざるを得ない。

 そうした制度案に対する多くの疑問は、制度案が公表された6月18日に総務省が実施した有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第15回会合でも、多くの有識者から指摘されていた。しかし、行き過ぎた囲い込みを禁止するという方向性が一致しているとの理由から、今後の検証が必要としながらも明確に反対するという意見は出ず、総務省が現行の案を押し切った形となっている。

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