あくまでマーケティングの課題解決、そしてマーケティング活動を持続可能とするツールであるという観点から立ち上げられたものであり、従来のクラウドファンディングサイトや、サブスクリプション特化のクリエイター支援サイトと比べて、成り立ちの背景は全く違うと説明する。と同時に、クリエイター登録を企業や団体に限っているのも、特にエンタメコンテンツを扱う企業や団体であれば、同じような課題にぶつかることが想定され、同じ立場としての手厚いサポートが可能だからとしている。
「率直にいえば、会員登録やフォローなどの数を集めることを目的としていない。単にボリュームを求めるなら他のSNSやプラットフォームで拡散性を高めればいいし、併用するのがいいと思う。よりコアなファンを確実に、そして継続的につながれる場所がFanbeats」(福田氏)
また、完全にクローズドにしてないのもポイントだという。クローズドにしてしまうとその中で起きていることが外から見えず、“バズ”も起きないため認知が拡大しにくい。特にサブスプリクション方式に特化するとその傾向が強くある。その一方で、Fanbeatsは、そもそもSNSが基盤となっているので、ファンの熱量や行動がわかりやすく可視化され拡散されるメリットがあり、話題にもしやすい。ファンの熱量を蓄積させつつ、良質なファンの声を適度に拡散させて認知の拡大にも効果もあがるプラットフォームにしているという。
Fanbeatsについては、クリエイターによるプロジェクトなどをネット上で誰でも見られるようにしつつ、そのプロジェクトに対するリアクション(「いいね」やコメント書き込み)は、購買活動をしたファンのみにする制限することで、コアファンの反応を的確に知ることができるとしている。
グリーはもともとSNSの会社として創業していることもあり、技術基盤やインフラ、プラットフォームの運営ノウハウも社内に蓄積されていたことから、この規模のサービスとしては、起案からサービス開始まで短期間で進められたと振り返る。クリエイター登録における初期費用や月々の固定費を0円に設定しているのは、基本思想がSNSであることと活用の敷居を下げるため。マネタイズについては基本的に収納代行手数料としているなか、福田氏はグリーがゲームはもとよりVTuberなどライブエンターテインメント事業も注力しており、グループとしての事業シナジーが大きくトータルでメリットを出していくとした。
「2015年ぐらいであれば、きっと使われていない。市場の成熟とともに顧客獲得単価が上がってきて、継続的にお金を払ってくれる顧客も減ってきている現状だからこそ、国内ではこういったツールを使って創作活動を持続的なものにしたい。私が感じた、マーケティングにおける『これがほしい』という機能は入れており、多数のクリエイター企業にもヒアリングして反映している。自社他社問わず活用していただき、国内エンタメ業界の活性化につながれば」(福田氏)
市原氏もゲームのマーケティング経験者でありFanbetsでは品質管理の責任者も兼任している。プロジェクトではそのときの経験に基づくアドバイスなどを行っている。市原氏が企業や団体と接するなかでよく聞かれた言葉として、こうしたファンコミュニティの重要性は理解しているものの、そこにかかるリソースをどうするかという懸念を挙げた。それゆえに、福田氏が指摘するマーケティング課題はどこでも抱えているものと語る。
Fanbeatsはその課題解決に有用なツールとしながらも、集客においては、初期段階での一定の労力はかかるものという。そのうえで、継続的な運用によって効率があがっていくものと説明した。
「クリエイターが何を届けたいか、コンテンツや作品をどう大きくしていきたいかという思いがハッキリしていることが大事。立ち上げ段階での労力はかかるが、そのあとは本来であれば落ちていくマーケティング効率が、コアファンが積み上がっていくなかで、劇的に改善していく」(市原氏)
社外では最初のプロジェクトとなった、東映ビデオによるテレビアニメ「つぐもも」のOVA制作応援プロジェクトについて、目標金額300万円をプロジェクト公開初日に達成し、最終的には798万9500円集まった。市原氏はこの案件を通じたフィードバックで「使いやすさ」と「次の展開」の部分で好感触を得たという。
「Fanbeatsはクラウドファンディングのプロジェクトをやって終わりではなく、そのあとをSNSやニュースレター機能でサポートされるのが大きい。すでにつぐもものファンがフォロワーとしている状態なので、継続的にFanbeatsを使う理由になるという意見をいただいている」(市原氏)
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