平山笑美オリジナルソロアルバムCD制作プロジェクトは、声優として活動している平山笑美さんによる完全オリジナルCDの制作を目的としたもの。目標金額250万円で4曲制作のクラウドファンディングを5月16日に開始したが、目標金額は開始数時間で達成したうえ、そのあとに追加した700万円で10曲を制作する最終ストレッチゴールを1時間程度で到達。記事の掲載時点では3000人以上が支援し、金額は2300万円を超えている(プロジェクトは6月23日23時59分まで)。
平山さんはゲーム「拡張少女系トライナリー」の卯月神楽役や「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(ミリシタ)の北上麗花役などを務める声優で、現在はフリーで活動。参加作品におけるライブイベントでキャラクターソングを披露する機会があり、その歌声が話題になっていたという。
オリジナルCDは、音楽プロデューサーにSampling masters MEGA名義での楽曲提供や、ナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメント)時代に「ドラゴンスピリット」「リッジレーサーシリーズ」などのゲーム楽曲を手掛けたことでも知られる、スーパースィープ代表取締役の細江慎治氏を起用。ミリシタの天空橋朋花役などで活躍する声優で、作詞作曲も手掛ける小岩井ことりさんや、テレビアニメの主題歌を数多く歌う歌手のいとうかなこさんといったアーティストが作詞で関わるほか、アニメやゲーム関連の音楽シーンで活躍しているクリエイターが参加している。
プロジェクトの経緯として、平山さんがフリーとして活動しているなかで「ライブがやりたい」という意向があり、それに賛同した有志によってプロジェクトが立ち上がったと説明する。一方、カバー曲よりもオリジナル曲でのライブのほうが、より平山さんの魅力を引き出せるという話になり、オリジナルCDを制作しその曲によるライブを開催しようという考えに至ったと振り返る。
音楽プロデューサーに細江氏が担当することになったのは、運営スタッフと旧知の仲であることや、プロジェクトとしてCD制作ならびにライブ開催となると、音楽レーベルとしての知識が必要となるなか、「SweepRecord」というレーベルを持って展開。さらに打診した段階で、制作していたアルバム(「ナムコサウンドミュージアム ~メルヘンメイズ&ブラストオフ&ファイナルブラスター~」)における「メルヘンメイズ」のアレンジ楽曲で平山さんをボーカルで起用していたこともあり、細江氏が快諾したという。
当初からクラウドファンディングの活用を想定していたなかでFanbeatsの存在を知り、スーパースィープが運用する形でプロジェクトを開設。最終的にFanbeatsを使うことの決め手となったのは、今回のプロジェクトがオリジナルCD制作だけでは終わらないものであり、継続的なマーケティングができることだと語る。
実際、1円でも多く集めるという観点で見るならば、他のクラウドファンディングサービスでも魅力的なところはあったとしたが、再度プロジェクトを立ち上げる時に大きな熱量とコストがかかることを考えると、コミュニティの維持ができ、連続したプロジェクトが展開されることをあらかじめ考えられているFanbeatsが、相対的にメリットが大きいとして選択したという。
「そもそもお金よりも、平山さんの歌声を多くの方に届けるのが目的。そしてオリジナルCD制作は通過点であり、あくまでライブの開催がプロジェクトとしてのゴール。そして、CDを購入するファンは、確実にライブに行きたい意向を持っている。従来のクラウドファンディングサイトでは、一度立ち上げても、そこで終わってしまい、2度目にまた集客をしなければいけない。そこでもう一度組み立てるとなると、『知らなかった』『連絡に気づかなかった』と、拾いこぼしてしまう危険性もある。このことをふまえると、Fanbeatsが最適だと判断した」(運営スタッフ)
Fanbeatsではクリエイター登録者向けの重厚なマニュアルが存在しており、そこには、単に機能説明だけではなく、コミュニティ形成などの運用ノウハウなども記載。アドバイスのなかでは「早めにアカウントを作って、Fanbeatsのアカウントにフォロワーを集めてください」というのがあったという。裏を返すと、手間をかけて会員登録をしてフォローするぐらいのファンは、支援するという意向が強いコアファンであるのは間違いないところ。
平山さん自身が事前に徳島マチアソビ(イベント)で、プロジェクトの告知や収録予定曲を披露するなど周知を試み、後日Fanbeatsでの開設時にSNSなどで呼びかけると、初日に2000人以上からフォローされた。結果として、フォローしたファンのほとんどが実際に支援をしたと話す。
「使ってみて、手順みたいなものが一通り用意されており、それらを順番に埋めていくことで、まずコミュニティを作ることに先に意識がいくようになった。クラウドファンディングありきとは違った意識が生まれたことが大きく、結果的にクラウドファンディングの成功率は高まったと思う。また、初期に登録したファンはプロジェクトを成功させたい気持ちが強く、登録の案内を自発的に呼びかけるなど、広めることもしてくれた。活動報告ブログやメッセージも的確に届けることができ、それらをさらにTwitterに流すことができるUIとなっているため、ファンが自発的に話題にしてくれる。結果的にマーケティング行為に繋がるものとなった」(運営スタッフ)
運営スタッフはそれぞれが別に本業を持っているとし、特にFanbeatsまわりも1人だけという状態ではあるが、それでも無理なく運用することができているという。平山さんも運営スタッフもクラウドファンディングの取り組みは初めてだったところ、クラウドファンディング公開までのプロセスについても、マニュアルやアドバイスのほか、すでに行われていたプロジェクト、特につぐもものOVA制作応援プロジェクトについては運営スタッフ自ら支援も行い、参考にできたところも大きかったとして、よくわからないまま詰まって進まなくなるようなことは起きなかったとしている。
唯一トラブルがあったこととしては、クラウドファンディングの公開直後にアクセスが集中し、約30分間ほどサイトが極端に重い状態になってしまったこと。福田氏によれば、フォロー数からある程度のアクセス集中が予想され、準備はしていたものの想定を上回るアクセスがあったという。その際、グリーのインフラチームとすぐに対策を話し合い、後日行われる追加の特典募集に向けて対策を強化。その追加募集では通常通りのサイト表示ができ、改善ができたと説明する。
「Fanbeatsとして、つぐももや平山さんのプロジェクトで得られた知見として大きかったのは、この部分。ご迷惑をおかけしてしまったことは大変申し訳なかったが、今後同種のプロジェクト施策がある場合の準備や対応など、サービス改善やインフラ運用のうえでも学びはあった」(福田氏)
運営スタッフ側では、極端に高額なリターン(特典)は設けず、最終的にフルアルバムの制作ができる700万円まで到達できればと考えていたようで、ここまで多くの支援が集まったことは、予想を大幅に超えたものとしている。その期待の大きさに応えるべく、さらに新曲2曲を制作し全12曲としたほか、ハイレゾ音源の頒布などのグレードアップを実施することができたという。
またFanbeatsについては、基盤がSNSであり、特にアニメやゲームなどエンタメに対するロイヤリティの高い人たちが集まる場であることが想定されるため、横展開のシナジーなど将来的な可能性も期待するとともに、まだ他のプロジェクトが多く立ち上がってないところで、さらなる活性化を求めていた。
「平山さんに対して、高い熱量を持つファンがたくさんいることは、私も知人として見ていて感じてはいたが、ツールやサービスの有用性による後押しを受けて、このように可視化された。今は、その熱量を下げないようにリターンの制作に取り組み、目的であるライブにも繋げていきたい」(運営スタッフ)
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