ソフトバンクのグループ会社であるSB C&Sは6月5日、STEM教育事業への新規参入を発表した。幼児から小学生を対象としたSTEM教育スクール「STELABO(ステラボ)」を6月12日に開校し、フランチャイズで全国展開をめざす。第1号の直営校であるSTELABO汐留校において記者説明会を開催し、新事業について説明した。
冒頭では、SB C&S 常務執行役員 コンシューマ事業 兼 新規事業担当の瀧進太郎氏が登壇し、STEM教育事業を取り巻く現状から説明した。STEMとは「S=Science(科学)」「T=Technology(技術)」「E=Engineering(工学)」「M=Mathematics(数学)」の頭文字で、理系教育を指す。
なぜ、今、STEM教育が求められているのか。瀧氏は「AIの進化によって社会の在り方が変わり、求められる能力が異なってきたから」と話す。そうした時代を生き抜くためには、“人間ならではの感性”と“AI・ロボットを使いこなす能力”の両方が求められると考えているという。
そのため瀧氏は、「STELABOでも、プログラミングだけを教えるのではなく、“人間ならでは”の部分を伸ばす教育にも取り組んでいきたい」とビジョンを語った。具体的には、STEM教育に「Art(アート)」を加えたSTEAM教育も長期的には取り入れていきたい考えだが、まずは最初の取り組みとしてSTEM教育にフォーカスし、STELABOを展開していく方針だ。
また瀧氏は、STEM教育が求められている背景として、IT人材不足の課題にも触れた。経産省が2016年に発表したデータによると、2030年にはIT関連人材が79万人も不足すると試算されている。一方で、日本における理工系大学院の修了者数は20万人と先進国の中でも低い。日本同様にIT人材不足の課題を抱える国では、プログラミング教育を初等中等教育のカリキュラムに導入する動きもあり、同氏はSTEM教育の需要は世界的にも高まっていると説明した。
一方で日本はというと、2020年度から小学校で、2021年度からは中学校でプログラミング教育の必修化が始まる。しかし、各学校で授業時間数や学ぶ内容が異なるほか、学校のIT環境や教員の指導力不足など課題も多い。とはいえ、必修化の動きを受けて、保護者のプログラミング教育に対する関心は高まっているのも事実。瀧氏は「子どもたちの習いごととしてプログラミングは人気が高い」と述べ、STEM教育の需要の高さを示した。
瀧氏は、こうしたSTEM教育を取り巻く状況を説明した後に、「SB C&Sではプログラミング教育が知られる前から、いずれSTEM教育のような学習が必要になると考え、STEM教材の調達や流通に長年関わってきた」と語った。たとえば、今、プログラミング教材としてよく知られているロボティックボールの「Sphero」や、プログラミング可能な電子工作キット「makeblock」、教育用マイコンボード「micro:bit」なども、同社がほぼ独占的に供給しているという。
瀧氏は、ソフトバンクがSTEM教育事業を始めた背景について、(1)AIやIoTなど同社がめざす領域にマッチしていること、(2)C&Sの流通で調達した豊富なSTEM教材を生かせること、(3)プログラミング教育市場自体に可能性があること、という3つを挙げた。
またSTELABOのカリキュラムと指導のノウハウについては、STEM教育の第一人者である石原正雄氏が監修し、ヴィリングが運営するSTEM教育スクール「STEMON(ステモン)」のメソッドを採用した。同氏は「すでにSTEM教育の分野で実績のあるパートナーと提携できたことは大きい。まずは1000教室の開設をめざして、スピード感を持って広げていきたい」と展望を語った。
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