NTTドコモは5月28日、衛星測位システム「GNSS(Global Navigation Satellite System)」を活用して、誤差数センチメートルの測位を可能にする位置情報サービス「GNSS位置補正情報配信基盤」の提供を10月1日から開始すると発表した。
すでにコマツが10月から利用することが決まっているほか、農業、自動車、物流といった用途での利用も期待しているという。
GNSS位置補正情報配信基盤は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、EUのGallileo、日本の準天頂衛星システム「みちびき」など、主要国が打ち上げている位置情報衛星からの信号を利用して、精密な測位を可能にするサービス。
ただし、GNSSの信号を直接受信するだけでは大きな誤差が発生してしまう。そこで、位置を精密に測位して、地上に設置する基準点や固定局でも衛星からの信号を受信し、その信号をサーバーで処理後、補正情報をドコモの携帯電話通信網を利用して端末に送信する。端末はサーバーから、補正情報として端末が基準点や固定局からどれくらい離れているのかを示す値を受け取り、自身が衛星から直接受信した位置情報と合わせて演算し、現在位置を正確に導き出す。
この技術は、3月からコマツ、ライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティングと共同で技術検証を実施し、平面、高さともに誤差±2cm以内の精度で位置を特定することに成功しているという。GNSS関連機器が低価格化しているなどの事情から、高い精度で位置情報を提供しながら、利用価格は抑えることができるとしている。
地上の基準点には、国土地理院がすでに日本全国約1300カ所に設置している電子基準点を利用する。さらに精度を高めるために、ドコモが独自で固定局を設置していく。ドコモは独自固定局について「顧客の要望を聞いて、必要なところから設置していく。現時点では固定局設置に特別な目標はない」としている。
現在は補正情報を受け取って正確な位置を算出する処理を端末で実施しているが、ドコモは将来、この処理もクラウドや携帯電話通信網に配置したサーバーで一括処理する構想を披露した。この技術はNTT研究所が「クラウドGNSS測位」として開発しているもので、実用化時期については、「研究の進行次第」(NTTドコモの谷氏)としている。実現すれば、端末は補正済みの正確な位置情報を受信するだけで、正確な位置を把握できるようになる。
また谷氏は、将来は「用途によってそれほど高い精度を必要としないこともあるだろう、そのような場合は安価でサービスを提供する」と語り、例えば消費者が持つスマートフォンに精度が低い位置情報を低コストで提供する可能性があることを示した。
10月1日からGNSS位置補正情報配信基盤を利用することが決まっているコマツは、すでに現場で稼働している油圧ショベルに後付け可能な「スマートコンストラクション・レトロフィットキット(仮称)」を提供することを明らかにした。10月から試験導入を開始し、2020年4月に発売予定だ。このキットを利用することで、油圧ショベルが正確な現在位置を把握できるようになるほか、クラウドへの施工履歴の保存や、コマツの最新建機との協調動作が可能になる。
コマツは、以前から土木工事現場を情報通信技術で改革する「i-Construction」に積極的に取り組んでおり、無人で自動的に稼働する建機や、その建機を管理制御するサービス「KOMTRAX」などを提供している。コマツ代表取締役 兼 CEOの小川啓之氏は、「現場で稼働している建機のおよそ98%は、自動化機能を何も持っていない。そこにレトロフィットキットを提供し、最新建機の協調動作を可能にすることで、施工の自動化を進め、人口減少に伴う人手不足の解消に貢献したい」と語った。
ドコモは今後、GNSS位置補正情報配信基盤を自動運転車、宅配ドローン、災害予兆検知など、さまざまな用途に応用できる可能性があると考えており、低遅延通信を特徴とする「5G」の主要な用途の1つになる可能性もあるとアピールした。
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