Echo Showは「Alexa Captioning」にも対応し、ユーザーがAlexaの応答を字幕で読み取ることができる。
「アクセス手段は多いほどいい。障害を持つ人々の暮らしをもっと便利にできるメインストリーム技術はたくさんある。だから、私にとってはクールなだけの技術が、毎日一緒に働いている人にとっては、人生を変え、自立に役立つものになるかもしれない」。マサチューセッツ州在住の支援技術コンサルタント、Jennifer Edge-Savage氏はこのように述べている。
Lorenzo氏にとって、GoogleアシスタントをGiovanniさんに使えるようにするのは、個人的なことだった。Giovanniさんは6人きょうだいの末っ子で、「家族にとってかけがえのない」存在だ。
「いつも家族にたくさんのものを与えてくれる弟に、何かお返しがしたかった。私は技術が得意だから、そこで何かしてやれると思った」(Lorenzo氏)
着想のきっかけになったのは、母親の、Giovanniさんの育て方だったという。
「母はいつも、弟がほかの家族や友人みんなと同じガジェットやテクノロジーを使って音楽を聞き、漫画を楽しめるよう考えていた」、とLorenzo氏は話す。
Giovanniさんが使えるツールを設計するうえで、検討しなければならない課題はいくつもあった。Giovanniさんは、コミュニケーションに大きい制約があるからだ。口がきけないだけでなく、知っている手話も基本的な身ぶりに限られる。
細かな運動の技能が限られているため、スマートフォンやタブレットを操作することもできない。さらに、認識障害があるため、複数のステップやプロンプトがあるような複雑なユーザーインターフェースを操作するのも難しい、とLorenzo氏は話す。
Giovanniさんは最近、セラピストの指導を受けてコミュニケーションデバイスの使い方を学んでいる。別のデバイスにつながっている大きいボタン群を押して、録音してある音声応答を再生できるしくみだ。これらのボタン群は、標準的な拡大・代替コミュニケーション(AAC:発話や書かれた文章に代わるコミュニケーション手段)の枠組みを利用しており、別のデバイスと接続して二択のスイッチとして機能させたり、ボタン同士をつなぎ合わせて、より複雑な要求を処理したりすることもできる。
Lorenzo氏は、Giovanniさんが既に慣れているこのボタン群を使ってGoogle Homeにアクセスできる、ゲートウェイデバイスを作ることにした。チームが作ったのは、スマートフォンやノートPC、タブレットで使われているのと同じヘッドホンジャックを使って、有線で小さい箱にボタンをつなげた装置だ。そこからBluetooth経由でGoogle Homeデバイスにアクセスする。これで、Giovanniさんはこのボタンを押すだけで、音楽を聞いたり映画を見たりできるようになった。
Edge-Savage氏によると、発話障害を持つ多くの人々は既に、タブレットや特殊設計のデバイスのボタンやアイコンを押すことで、あらかじめプログラムされた音声コマンドを再生させ、デジタルアシスタントを利用するという形のAACデバイスを使用しているという。だが、Lorenzo氏のソリューションなら、音声コマンドを生成する別のデバイスが不要になる。Giovanniさんのように、AACデバイスの使い方を覚え始めたばかりの人には、有効なツールになりそうだ。
「私には、魔法のように思える。『あなたが好きなことをできるように、何か作るよ』と言ってくれる兄がいるなんて。コミュニケーションのしかたを覚えようとしているクライアントに接するとき、私はたいてい『好きなことをできるようにする』ということを出発点にしている。すごく意欲を高めてくれる」(Edge-Savage氏)
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