ソフトバンクグループは5月9日、2018年度の通期決算を発表した。売上高は前年同期比4.8%増の9兆6022億円、営業利益は前年同期比80.5%増の2兆3539億円と、増収増益の決算となった。
営業利益が大きく伸びている理由は、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先企業の評価益が拡大したことによるもの。同ファンドによる利益は前年度から9536億円増の1兆2566億円に達し、ソフトバンクやヤフー、米Sprintなど事業会社の利益を上回る規模にまで成長している。
それにともなって純利益も1兆4112億円となり、3年連続で純利益1兆円超えを達成したこととなる。同社の代表取締役会長 兼 社長である孫正義氏は「新年度もほぼ確実に1兆円を突破することがすでに見えている」と話しており、4期連続での純利益1兆円超え達成を宣言している。
しかし孫氏は、事業会社の上場によってソフトバンクグループが投資会社へと実質的な業態転換を進めたことから、現在は売上や利益よりも、同社の株主価値を重視した経営をしていると話す。そして同氏は、株主価値は企業価値から純負債を差し引いたもので、シンプルに表すことができると説明する。
ソフトバンクグループは中国のアリババやソフトバンク、Sprintなどの株を持つことから、それらを保有する株式を合計すると企業価値は27兆円となる。一方で純負債に関しては、連結で15.7兆円の負債を持つが、そのうち9兆円は子会社の負債であることから、ソフトバンクグループ自体の負債は残りの6.7兆円から現預金を引いた、4.4兆円になる。
そのため同社の株主価値は約23兆円となり、純負債を保有株式率で割ったLTV(Loan to Value)は約16%になる。孫氏によると「ボーダフォン日本法人買収時はLTVが65%、ソフトバンク上場前は35%くらいだった」とのことで、現在はLTVがこれまでの経営の中で最も低くなっているという。LTVは25%前後が健全な健全な範囲とのことで、今後もその範囲を意識した経営をしていきたいと孫氏は話す。
そして、株主価値を増やすための成長エンジンとして孫氏が位置付けるのは、やはりソフトバンク・ビジョン・ファンドであるという。同ファンドは10兆円という非常に大きな規模で、投資先企業は82社を超えているが、10億円のうち4兆円は配当が定率となる優先出資、6兆円が成果連動型の普通株となっている。
さらにそのうち、ソフトバンクグループの株主に帰属するのは普通株の48%であることから、株主の利益、つまり利回りは2年間の累計で62%に上るという。「この数字は出来過ぎだと思うが、高い収益だったことは理解して欲しい」と孫氏は話し、ファンドが大きな成果を収めていることをアピールした。
その要因として孫氏は、AIを活用した企業に特化しており、未上場のユニコーン企業に投資していることから、シナジーを創出しやすいことをあげている。加えて孫氏は「私はナンバー2は嫌い」とも話しており、投資先はあくまでその分野でナンバーワンの地位を獲得している企業にこだわる姿勢を示している。
こうしたソフトバンク・ビジョン・ファンドの成功を受け、孫氏は新たに第2号ファンドの設立準備に入ることを正式に表明した。現在の第1号ファンドと同等の規模を想定しているとのことで、「かなり早い時期に立ち上げが始まると思う」と孫氏は話す。
ただし、具体的な規模や時期などはこれから検討するとのことで、具体的な出資者に関しては「まだ時期尚早」と孫氏は回答。一部報道などで噂されたソフトバンク・ビジョン・ファンド自体の上場についても「コメントすべきではない」と答えるにとどまった。
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