タブレット型AI教材「atama+」を提供するatama plusは5月13日、ジャフコとDCMベンチャーズがそれぞれ運用するファンドから約15億円の資金を調達したと発表した。今回の資金調達により、これまでの累計調達額は約20億円となる。
今回の増資により、サービスの開発スピードをさらに加速させ、生徒一人ひとりの満足度を最大化できるプロダクトの強化や、学習塾各社へのサポート体制を強化するとしている。
atama+は、生徒一人ひとりの学習状況をAIによって分析し、個々の専用レッスンを提供するサービス。同社が用意したタブレット教材を解く生徒の理解度やミスの傾向、学習履歴、集中度などをリアルタイムで診断し、最適なルートのカリキュラムを自動で作成する。また、つまずいた原因をAIが特定して、必要な箇所を必要な量だけ学習させることも特徴だ。
atama plus代表取締役の稲田大輔氏によれば、センター試験の数学I Aの試験で、atama+を使って2週間勉強した生徒の得点伸び率の平均が約1.5倍になるといった成果が出ているという。また、通常の学習方法に比べると、学習成果は2倍以上になるそうだ。
現在は主に塾をターゲットにしており、塾の生徒向けに提供しているタブレット型AI教材は、学習塾大手の栄光、学研塾ホールディングス、ティエラコムなど500以上の教室が導入。それらの教室で集めたデータをもとに、アルゴリズムやコンテンツを日々最適化していると説明する。「トップ100の塾のうちすでに約2割に導入されている」(稲田氏)。
また、一部の大手塾では、atama+に特化した「AI学習コース」を2019年から新たに開設するなど、自社の基盤となるコースへの本格導入を始めているという。それも、稲田氏が創業時に描いていた「テクノロジーやAIを活用して基礎学力の習得にかかる時間を半分以下にして、余った時間を社会で生きる力の習得に充てる」という教育の形を体現するものになっているという。
たとえば、Z会グループのディアロは、全教室でatama+を基盤にした「映像xAIトレーニングコース」を開始した。AIを活用して基礎学力習得にかかる時間を短縮し、創出された時間で生徒が先生にプレゼンし、思考力や実践力を伸ばす「映像x1:1対話式トレーニングコース」などを展開している。
また、駿台高校部は、atama+による「集団授業」と、プロ講師とコミュニケーションを取る「少人数授業」を両立させたメインコースを全教室で展開している。城南予備校DUOも同様に、atama+による「AI授業」とプロ講師の「DUO授業」を全教室で開始した。いずれも大手塾であるにも関わらず、2017年の創業からわずか2年のスタートアップが開発したAI教材を学習コースの基盤として採用している。それほど、プロも認めた効果があるということだろう。
今回調達した15億円は、プロダクトの強化や、新機能開発などに充てるとしており、そのためにエンジニア、デザイナー、コンテンツ制作者、塾と新規事業を作るカスタマーサクセスなどの採用を強化するという。現在の社員数は約45名だが、2021年3月末時点で150人規模を目指すとしている。
機能面では過去に、生徒が“合格しそう”なタイミングを予測する先生向けの機能などを提供してきたが、現在開発中なのは、生徒があと何時間勉強すればその科目をマスターできるかをAIが予測して提示する機能だという。「何時間でマスターできるかは人によって違う。1人ずつの傾向を分析してそれぞれに最適な学習時間を提示したい」(稲田氏)。
新たな教科も開発している。現在は、高校生向けの数学、英文法、物理、化学と、中学生向けの数学を提供しているが、今後は中学生向けの英文法や理科、高校生向けの英語読解・英単語などを追加することで、主要科目を揃える予定。
その先では、“社会で生きる力の習得”に役立つサービスや機能も、自社で提供したいと稲田氏は語る。具体的には、生徒が社会で活躍するさまざまな大人との接点を持つことで、「社会人は楽しい」と思える機会を提供するものになるという。
「社会で生きる力には、ディスカッションやコミュニケーションなど色々なものがあるが、全ての土台になるのは、大人になることが楽しいとワクワクすること。子どもたちは、日々の生活だけでは生き生きとした大人と触れ合う機会が少なく、社会人になることが楽しいと思っていない子も多い。社会で活躍している人たちに触れる機会を設けることで、大人になるのは楽しいことだと伝えたい」(稲田氏)。
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