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エアモビリティ社会のルールは"レース"が作る--ホバーバイク「Speeder」開発者に聞く - (page 2)

西中悠基 (編集部)2019年05月13日 12時10分
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技術革新と繋がるレース

--レースとなると興業化の動きがあると思います。儲けるのではなく、ルール策定のためのレースということでしょうか。

 レースを社会に浸透させるには、興業化しなければ意味がありません。そのため、競技を担当する組織と、エンターテイメントを担当する組織が作られます。日本において競技の役割を担うのは、おそらくFAI傘下のJAA(日本航空協会)かJMA(日本航空模型連盟)でしょう。それとは別に、エンターテイメント部分を委託する運営委員会が設立されます。


 JAAまたはJMAは、競技としてどれだけいいレースができるのかを追求し、レギュレーションを策定します。

 自動車レースの話をすると、F1では、予選の順位に従って、決勝戦のスタート位置が決められます。その場で車体を組み立てて、そこからスタートします。競技前にまず一周するのですが、その間に車両の動作をマーシャルがチェックします。隊列を組んで一周して、そこからスタートという流れです。

 ドローンレースでも同様に、たとえば最初のスタートポジションに来るまでは自動操縦、というルールの策定が考えられます。隊列を組んでサーキットを一周する、となると、自動飛行の経路設計や通信といった、自律制御に必要な技術が、テクニカルレギュレーションとして自然に課されてきます。そうすると、レースに参加するには、その技術レベルを達成しなければなりません。そこで発達した技術は、ドローンやエアモビリティに生かすことができます。このようなルールを策定するのが、JAAやJMAのような非営利団体です。彼らなくして本当のドローンレースやエアーモビリティ社会の実現はありえません。

 おそらく、第1回目はルールがほとんど無い状態でしょう。しかし第2回目以降は、次々とレギュレーションが整備されると思います。このルールによって求められ、開発された技術は、エアモビリティにも生きてきます。たとえば自動車レースでも、耐久レースに勝つためにハイブリッドシステムを導入しました。レースは技術革新と繋がっているんです。

 エアモビリティでは、仮想道路や自動運転などの技術が求められます。シェアライド型のモビリティを想定すると、利用時の課金に用いられる、認証の技術も必要です。それを実現するためには、レースで仮想道路や自動運転といったものを試験する必要があります。

 今回のレースは、正式には決定していないのですが、私は5Gの試験を目指しています。5Gを使った通信、仮想道路の試験をやりたいと考えています。

 そして、エンターテイメント側は、レースをより魅せるための工夫に取り組みます。ARと合体して画面に出したり、音楽を入れたり。体験型イベントを開催するといったことも考えられます。ARと合体させるにも、AIが処理できる機体デザインや、あるいはAI自体の開発といった技術の投入が求められます。ここでもレースは技術革新と繋がっています。

--ドローンレースの開催時期はいつ頃なのでしょうか。

 秋頃と考えています。とても大規模なものになる予定です。海外からも多くの参加者が来ると思います。非常にレベルの高いレースになるので見応えはあるかと思いますが、一方で日本人レーサーにとっては厳しい戦いになるかもしれません。

--技術レベルの差でしょうか。

 いえ、日本はFAIが管轄する正式なレースの経験がほとんど無いためです。これまでもドローンのレース自体はありましたが、確固たるルールのないホビーの延長という位置づけでした。今回のレースは、操縦士の腕だけで勝とうとするのは難しいかもしれないですね。

今のエアモビリティは180年前の自動車の段階

--小松さんが目指すエアモビリティ社会に対して、今は何%の段階でしょうか

 20%ほどだと思います。ようやく少し浮いたり、自動制御やレースがスタートしたという段階です。

 まだまだ馬車が主流だった1840年代を描いた映画では、馬車や人が大勢いる道路を自動車が通り抜けるシーンがよく見られます。エアーモビリティでは、われわれがホバーバイクを納車する2020年が、その状態になると思います。実は1840年代には、すでに自動車レースが開催されていました。それを踏まえると、ホバーバイクの納車前年にレースを開催するわれわれの状況は、まさにその1840年代と同じです。

 その映画の時代からおよそ180年、自動車はかなり進化したように見えますよね。ただ、今の自動車の基本形ができたのは昭和の時代。そこから基本的な形は変わっていません。

--ETCの導入やハイブリッドシステムの搭載はありますが、動力部や車体という、自動車を構成する基礎的な部分の変革はありません。

 その程度で大きくは変わっていないですよね。100年掛からずに自動車は完成したんです。もちろん、今のモビリティ社会の段階に至るには、政府や企業の多大な努力がありました。私たちが目指すエアーモビリティについても、常にさまざまな企業や政府との連携を図ることで、丁寧に進めて行くことが大前提です。ただし、自動車の前例や、そこで培われたノウハウという、先人達が歩んだ歴史から学ぶことで、エアーモビリティはもっと速く完成形に至ると思います。

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