柏の葉が街全体でAI、IoTなどの実証実験を受け入れ--課題解決型街づくりへ

 千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」が、街全体を活用した実証実験の場へと変わろうとしている。推進するのは、三井不動産、柏の葉アーバンデザインセンター、柏市。東京大学(東大)、千葉大学なども加わり、公民学が連携した、実証プラットフォーム「イノベーションフィールド柏の葉」として始動した。

「イノベーションフィールド柏の葉」フィールドマップ
「イノベーションフィールド柏の葉」フィールドマップ

 柏の葉スマートシティは、スマートシティ戦略の旗艦プロジェクトとして、2005年のつくばエクスプレス開業とともにスタート。半径約3km圏内に住宅、商業施設、オフィス、ホテル、病院、大学、公園などが建ち並ぶ、コンパクトな街並みが特徴だ。

 駅前には、ベンチャー企業を支援する「柏の葉オープンイノベーションラボ KOIL(コイル)」があり、街中にはIoT向けのデータ通信サービス「LoRaWAN」も整備。今までも「実証実験タウン」として、数々の実証プロジェクトを受け入れてきた。

 「国立がん研究センター内に、革新的医療機器の開発を目指した『NEXT医療機器開発センター』ができたり、これまで未整備だった東大の柏IIキャンパスも開発が始まったりと、ここ2年ほどで、柏の葉を取り巻く環境が大きく変わってきた。なかでも、東京大学柏IIキャンパスは、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)が東大とともに、AIものづくりを推進する研究拠点に位置づけている。社会実装に向けた環境が整い、いよいよ新産業創造に向けた取り組みを加速する時がきた」と三井不動産柏の葉街づくり推進部/ベンチャー共創事業部 事業グループ主事の西林加織氏は、イノベーションフィールド柏の葉を立ち上げた経緯を話す。

三井不動産柏の葉街づくり推進部 ベンチャー共創事業部事業グループ主事の西林加織氏
三井不動産柏の葉街づくり推進部 ベンチャー共創事業部事業グループ主事の西林加織氏

 時期や場所を限定した実証実験と異なり、柏の葉スマートシティ全体を使えること、実験期間も中長期的に捉えるなど、継続的な使用を想定し、現実味のある実証実験の場として使えることが、イノベーションフィールド柏の葉ならではの強み。西林氏は「街全体で実証実験の枠組みを整えている。公民学の連携があるからこそできる、リアルな環境で支援したい」と話す。

 「商業施設やホテルなど、場所を限定した実証実験は三井不動産だけでも提供できる。しかし実際に実験を始めてみると、施設内だけではなく、周辺道路や駅までの歩道など、周辺環境も合わせて実施したほうが、より広い視点でサービスを検討できる。イノベーションフィールド柏の葉であれば、千葉県や柏市といった行政も参画しているため、施設の周辺を取り込んだ実証実験が可能になる」と西林氏は具体例を挙げる。ここまで街全体を活用した実証実験の場は「ほかにはないと思っている。柏の葉からこうした取り組みを発信していきたい」と意気込む。

公民学連携はデメリットよりもメリットが圧倒的に上回る

 すでに、柏の葉スマートシティ内には温度センサーを設置し、リアルタイムで温度、湿度がわかる環境を整備。LoRaWANとともに、IoTを活用した街づくりが進む。「これからはスタートアップから大手企業まで、あらゆる企業の実証実験を幅広く受け入れていきたい」と、今まで以上に受け入れ体制を増強している。近隣に位置する「柏魚市場」からは、市場内の運営管理にIoTを活用できないかといった、具体的な相談も受けているという。

「柏の葉スマートシティ」内に取り付けられている温度、湿度センサー
「柏の葉スマートシティ」内に取り付けられている温度、湿度センサー
LoRaWANのスターターキット
LoRaWANのスターターキット

 公民学連携というプレーヤーの多さは、一見すると話をまとめにくいというデメリットにつながるようにも感じられる。西林氏は「確かにそれぞれの立場が異なるため、利害がつねに一致するとは限らない。例えば、街づくりの視点と管理面、安全面の視点は真逆になることもある。そうした意見には積極的に耳を傾け、懸念点に関する対応を提案するなど、意見を出し合って解決している。こうした課題を一つひとつクリアすることで、その先にあるビジョンを実現できる。公民学の連携は、デメリットよりもメリットが上回ることのほうが圧倒的に多い」と、現状を話した。

 現在、イノベーションフィールド柏の葉では、「AI/IoT」と「ライフサイエンス・メディカル」の2つの分野にフォーカスした、実証実験を募っている。専用ウェブサイトから申し込みができ、審査を通過すれば、実証フィールド提供者や行政、協業企業等関係者とのコーディネーション、プロジェクト推進支援、柏の葉エリアに構築済みのLoRaWANの活用に関する技術相談、柏の葉IoTビジネス共創ラボにおいて連携している日本マイクロソフトのAzure活用に関する技術相談、事業メンタリングといったサポートが受けられる。

 実証実験の場を広く提供する一方で、柏の葉IoTビジネス共創ラボでは、IoT関連ビジネスの機会創出を目指し、アイデアベースのビジネス創出も支援している。「アイデアベースのものから、実証実験まで、柏の葉スマートシティでは、ビジネスを創出するためのトータルサポートをしていきたい。街づくりにおける課題は現実に存在し、その課題はどこの街にも当てはまるもの。柏の葉スマートシティは、そうした課題を解決する街として、新しいモデルを発信していきたい」と、西林氏は今後の街のあり方を示した。

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