パナソニック、3年後1兆円を目指す中国の事業戦略--「中国で勝てないと将来は無い」

 パナソニックは、3月14~17日の4日間、中国・上海の上海新国際博覧中心(SNIEC)で開催されたアジア最大規模の家電博「AWE 2019(APPLIANCE & ELECTRONICS WORLD EXPO=中国家電及消費電子博覧会)」に出展。中国市場向けに開発したIoT家電などを展示した。

 会期前日には、上海市内で記者会見を行い、パナソニック アプライアンス社社長の本間哲朗氏が、中国における事業戦略などについて説明した。

AWE 2019のパナソニックブース
AWE 2019のパナソニックブース

中国・北東アジア社を設立、中国での成長がパナソニックを牽引する

 本間社長は、4月1日付けで、新設する中国・北東アジア社の社長に、自らが就任することに触れながら、中国語を使って事業戦略を説明してみせた。

 中国・北東アジア社は、現地主導の体制とし、同カンパニーの傘下にスマートライフ家電事業部、住建空間事業部、コールドチェーン(中国)事業部、台湾事業部を新設。アプライアンス社傘下の冷熱空調デバイス事業部を移管。中国・北東アジアにおいて、家電事業を統合したビジネスを行うことになる。

 本間社長は、「新カンパニーの事業領域は、400億元(約7000億円)強の売上高だが、3年後には600億元(1兆円)規模の『くらしアップデート企業』になることを目指す。新カンパニーでは、中国のことは中国で決める、というポリシーをさらに推し進め、お客様のくらし価値・くらし空間に関わる領域を担当する。社長の津賀(パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏)は、『中国で勝てないとパナソニックの将来は無い』と語っており、中国での事業を大きく成長させ、世界中のパナソニックを牽引する存在になる。中国国内に対して攻めていき、中国から世界中へと攻めていく」とした。

上海市内で記者会見したパナソニック アプライアンス社社長の本間哲朗氏
上海市内で記者会見したパナソニック アプライアンス社社長の本間哲朗氏

 現在パナソニックは、家電以外の事業を含めると、中国全土で約600億元(1兆円)、中国からの輸出を含めると、1250億元(2兆円)を超える事業を行っており、製造や販売、開発、デザインも含め、88の拠点を持ち、6万人が勤務。「この規模は、日本を除き最大になる」という。

 また、本間社長は、パナソニックが、長年に渡って、中国と強い結びつきがあることを強調。2018年は、パナソニックが創業100周年を迎えたのと同時に、パナソニックの創業者である松下幸之助氏と、鄧小平氏との直接会談により、同社が中国に進出するとともに、技術指導を行うことを決定してから、40年目の節目を迎えたことに言及。「このときの会談で創業者は、『これからはアジアの時代である』と語り、中国における近代化への協力を約束した。1987年、日本の大手企業としては、戦後初めて、北京にテレビのブラウン管工場を建設し、パナソニックの中国での事業がスタートした」と述べた。

中国で先行するIoT家電、サプライチェーンにも勝機

 パナソニックは2015年4月に、AP中国を設立し、家電の商品開発からデザイン、マーケティングまでを、中国のワントップの組織体制下で意思決定できる体制を敷いてきた。その結果、中国市場のニーズに最適化した製品の投入などを実現してきたという。

 成果のひとつとしてあげたのが「ナノケアドライヤー」。2018年には、中国国内で年間60万台を販売。新製品では、風量を強めた中国独自のモードを搭載したり、独自の赤を本体カラーに採用したりしたという。

 また、日本に先駆けて、中国市場でIoT家電を先行販売。すでに4年を経過していることに触れ、「尿から健康データを測定できるトワレは、スマホと連動し、お客様の健康づくりにお役立ちできるものとして、中国でナンバーワンの支持を得ている。2019年3月からは、デジタルミラーと連動した新たな展開をスタートする。今後、バイタルセンシングで得た健康情報を核に、トワレのあるサニタリー・バス空間だけでなく、リビング、キッチン、プライベートという空間においても、そのソリューションを広げていく」とした。

 さらに、すでに日本で展開している家電および住宅設備向け統合プラットフォーム「HOME X」を活用したサービスを中国でも展開する姿勢を明らかにしたほか、健康で、快適な空間をデジタル設計する取り組みとして、DELOSと共同で、北京にラボを設立。2019年7月から、実証実験をスタートするとした。ここでは、気流や香り、照明、音、映像など、独自の刺激を通じたアルゴリズム開発を進め、サイバー空間での設計を、リアルな空間に落とし込むという。

中国市場向けに2018年から発売している「ALPHAシリーズ」。ポルシェデザインの洗濯機だ
中国市場向けに2018年から発売している「ALPHAシリーズ」。ポルシェデザインの洗濯機だ

 「養老・社区」といった分野では、雅達集団が長江デルタ地区で複数展開するCCRC(Continuing Care Retirement Community)に商材を納入し、養老施設での新しい提案を進め、物件内のショールームでは、エイジフリー関連の商品を体験できるようにしたほか、浙江省杭州市に本社を置く大手デベロッパーの広宇集団とともに、在宅介護関連の商材や高齢者が暮らしやすい空間づくりで協業。養老住宅や病院などへの展開も視野に入れるという。昆明都市開発プロジェクトでは、「百年健康都市」をコンセプトに、社区ソリューションなどの取り組みをパートナーとともに開始。建築業界向けには、中国国内の複数のパートナー企業と共同で、建築現場向けのプレハブハウス事業を展開していることを示した。

 さらに、パナソニックでは、サプライチェーンへの取り組みでも、中国市場では成長の余地があるとみている。

 本間社長は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、食品を冷やす「冷凍・冷蔵ショーケース」では、中国でナンバーシェアであることを示しながら、「帰宅途中に注文すれば、家に着く頃には食材が届いているという、中国のライフスタイルには驚くが、最先端のEC社会である中国で、冷やすという価値は、さらに威力を発揮することになるだろう。新鮮な野菜や魚を、産地から新鮮なまま運んで、保管するための倉庫や物流箱、さらにはそれを加工する厨房機器や店頭で販売するショーケース、家に届けるまでの生鮮宅配といったように、産地から食卓までのサプライチェーンのすべての段階において、パナソニックの技術とサービスが貢献できる。中国の人々にとって、食の安全を支える事業になる」とした。

 2018年12月には、貴州省遵鉄物流と、コールドチェーン物流システムの戦略協業に調印。貴州省の各物流拠点に冷凍冷蔵倉庫を建設するほか、産地から食卓の一気通貫システムの構築によって、中国西部の農産品を、沿岸部の大都市に安全に届けることができるという。

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