東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、東京2020組織委員会)は3月15日、都内で「東京2020ロボットプロジェクト」発表会を開催した。ロボットを東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020)に活用するプロジェクトだ。
第1弾として、ロボットによる物品の運搬や観戦席への誘導・入退場・観戦をサポートすることで、車いす観戦者のストレスを軽減する「生活支援ロボットによる車いす席観戦サポート」を展開。また、大会企画中の運営作業スタッフの負担を軽減するため、パワーアシストスーツを重量のある飲食物や廃棄物などの運搬、および大会関係者のスーツケースをバスに積み入れる際に使用する「パワーアシストスーツを活用した運営支援」を実施する予定。
東京2020組織委員会は、東京2020開催にあたって「史上最もイノベーティブな大会」をビジョンに掲げ、ロボット大国といわれる日本における活用について、1月以前から非公式で協議を重ねてきたと説明。その結果「人に寄りようロボット」をテーマにロボット技術を活用し、東京2020のあらゆる場面でイノベーションの実現を目指すことにしたという。「来場者に新しい楽しみ方を提示したい」と、東京2020組織委員会副事務総長の古宮正章氏は語る。
このプロジェクトでは、各ステークホルダーと連携を図るため、ロボット有識者や大会パートナー、2020組織委員会、東京都や政府による体制を構築する。大会パートナーに含まれるパナソニックはパラリンピックでパワーアシストスーツ、トヨタ自動車はオリンピックでモビリティサポートロボット、パラリンピックでモビリティサポートロボット・リハビリテーションロボット・ウェアラブルロボットによる実証実験や技術開発の検討をする。組織関係者は「次の世界につながるロボットを見せ、世界中の注目を集めたいというのが本音」だと、東京2020組織委員会イノベーション推進室長の平田英世氏は語る。
トヨタ自動車は、東京2020に合わせてソフトウェアをチューニングしたHSR(Human Support Robot)-Xを約16台、DSR(Delivery Support Robot)を約10台、オリンピックスタジアム車いす席に導入し、各セッション16組32席での利用を予定する。会場では車いす利用者が登場し、タブレットで注文した商品を運搬してきたDSRからHSRが受け取り、そのまま車いす利用者に渡していた。
パナソニックはバックヤードスタッフの負担軽減を念頭に、グループ企業が開発した「ATOUN MODEL Y」を導入する。パワーアシストスーツあり・なしの状態を測定したところ腰方形筋への負担は約40%軽減、胸最長筋へは約10%軽減した。また、成人男性が高さ70cmの机を使用して、12kgの箱の持ち上げ下げ動作を20分間繰り返す実験では、約20%の作業率向上が確認されたと担当者は説明する。ATOUN MODEL Yはすでに販売店などを通じて購入可能。価格はオープンプライスだが70万円前後となるという。
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