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空飛ぶクルマプロジェクトが経産省では“異例”の「週1官僚」を募る理由

西中悠基 (編集部)2019年03月07日 12時20分
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 経済産業省は3月7日、転職サイト「ビズリーチ」において、経済産業省と国土交通省が進める「空飛ぶクルマ」プロジェクトのメンバー募集を開始した。有識者2名を副業・兼業限定として募集するもので、経済産業省で「週1官僚」として働くこととなる。

 経済産業省が、週1勤務として人員を募集するのは、今回が初めてだ。またビズリーチにおいても、広島県福山市や日本フェンシング協会で副業・兼業限定として公募を実施した実績はあるものの、省庁の採用では今回が初だという。

 両者ともに初めての案件となる公募条件、しかも「お堅い」イメージがある省庁が週1官僚という新たな採用体系に踏み切るという、異例とも思える今回の事例。この公募の背景を、経済産業省の空飛ぶクルマプロジェクトリーダーである、製造産業局 航空機武器宇宙産業課 総括課長補佐の海老原史明氏に聞いた。

経済産業省 製造産業局 航空機武器宇宙産業課 総括課長補佐の海老原史明氏
経済産業省 製造産業局 航空機武器宇宙産業課 総括課長補佐の海老原史明氏

生産性向上につながる空飛ぶクルマ

――まず、空飛ぶクルマの概要について教えてください。

 クルマという言葉だけ捉えると自動車のようですが、正式には「電動垂直離着陸型務操縦者航空機」というもので、本質は航空機です。定義は、電気を動力源とし、自動飛行や垂直離着陸ができるもの。エンジンではなくモーターを使用することで、メンテナンス性や静粛性、環境性に優れます。また、自動操縦との親和性も高いので、育成コストが掛かる操縦士が不要となります。さらに、広いスペースが取れない場所でも垂直離着陸で発着ができるため、陸上のインフラに左右されません。そのため、大量普及すればタクシーと同程度の運行コストで、モビリティを従来の「線」から「点と点」へと変えることができます。

 機体開発については、航空機メーカーのエアバスや、中国のドローンメーカーなどが参入を表明しています。日本においても、トヨタ自動車が支援する「CARTIVATOR( カーティベーター)」が、2020年東京オリンピック開会式での飛行を目指して、開発を進めている段階です。

 実用化についてですが、まずは物流分野で社会課題を解決します。物品輸送であれば、人員輸送ほどの高度な安全性は要求されません。この物流用の機体で、日本に約400カ所ある有人島へ医薬品を届ける、あるいは拠点間輸送に用いて、ドライバー不足が深刻なトラック輸送の代替とします。

 また、陸路が途絶した災害時においては、医者や急病人の搬送にも活用できます。今現在、日本には消防防災ヘリが約70機しか存在しません。これは、コストや人員の問題によるところが大きいです。ここで空飛ぶクルマを導入することによって、もっと救える命があるのではないかと考えています。

災害時に活躍する空飛ぶクルマ 出典:経済産業省ウェブサイト
災害時に活躍する空飛ぶクルマ
出典:経済産業省ウェブサイト

 観光分野での使用も期待できます。これまで観光客が訪れなかった地域へも、空飛ぶクルマを使えば簡単に行くことができる。地域の活性化が図れます。そして、コスト面から新たな陸上インフラを建設しにくい山間地や過疎地などでの活用、あるいは都市内の渋滞を解消し、生産性向上に繋げることもできるでしょう。

 自動車や航空機にはすでに多くの法規制が敷かれていますが、空飛ぶクルマについては未だに確定したものがありません。そのため、各国でルールメイキング競争が始まっています。日本でも、われわれがいち早くルール策定議論に参画することで、議論を主導していければ、日本が産業としても社会課題解決としても、空を有効に使えると考えています。

 一方で、ただ機体を作ることが必ずしも重要ではないとも考えています。機体の製造以外にも、その機体を運航管理するプラットフォームや、離着陸場や充電場所のようなインフラといった、さまざまな周辺産業が生まれるでしょう。機体のみにこだわる、というのは少し違うと思います。また、日本のみでプロジェクトを進めることにこだわる必要はないとも考えています。海外とチームを組み、補完関係となることで、世界の市場を見据えることを後押ししたいと思っています。

 この空飛ぶクルマですが、実現には技術的、心理的な多くの課題があります。これらの課題をふまえ、短期的ではなく、2050年頃といった長期的な目標を設定し、議論を進めることが必要です。

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