行政が公開しているオープンデータを活用し、まちづくりや社会課題解決につなげようとする取り組みが全国に拡がっている。
オープンガバメント政策に力を入れる神戸市では、データビジュアライゼーション=可視化について学び、ツールやアプリの開発、サービスのアイデアを募集するアワード「World Data Viz Challenge」(以下WDVC)を姉妹都市バルセロナ市と共同で開催している。ワークショップや事業視察ツアーなどを取り入れた人材育成事業で、2016年から3年連続で実施している。ここでは、2018年11月のバルセロナ市に続き、2月16〜17日に神戸市で開催された神戸ラウンドの内容を紹介する。
初日には3つのキーノートが開かれ、バルセロナ市からはオープンデータ(Municipal Data)の責任者であるMaria Jesus CALVO氏(マリア・カルヴォ)から同市の取り組みが紹介された。
バルセロナ市は行政が率先してオープンデータに力を入れているが、その理由はデジタルエコノミーの発展にともなう社会変革であるスマートシティを促進するためだという。データは都市にとって新しいインフラであり、その質と量を高めるためのデータマネジメント戦略を計画的に進めている。データ公開のプロトコルやフォーマット、ルールを作り、誰が責任を取るかまで考えられている。
市民生活に関するデータを一元化し、あらゆる情報を部門を越えて利用できる「City OS」を構築するなど、ダイナミックでインテリジェントなデータシステムを開発。ほかにも街に配置したセンサーから様々な情報を収集するIoTプラットフォーム「Sentilo」を整備し、意思決定の参考にしているという。
分野別にデータをマネジメントする専門組織があり、例えばヘルス部門ではアナリストの分析結果を保険に取り入れるなど計画の25%に活用するほか、グローバルにも対応している。また、企業やデベロッパー、ジャーナリストなどのエキスパートも活用できる質の高いデータ構築を目指し、ロードマップに基づいた計画を進めている。
「大事なのはデータの透明性であり、発信元を特定できるようにしている。今後はさらに活用してもらうため、市民にデータへの理解を深めてもらう取り組みも進めている」とCALVO氏。その1つに、中学生を対象にしたデータ利活用がテーマのコンテストがあり、指導する教師の教育もあわせて行っている。統計、分析、活用について学び、早い時期からデータに対する関心と理解を深めてもらうことが狙い。神戸市との連携もそうした学びの1つになっている。
続いて神戸市からは企画調整局の長井伸晃氏から、同市のオープンデータへの取り組みが紹介された。オープンガバメントの推進に力を入れる神戸市は、オープンデータカタログサイトの公開や、職員向けのデータ教育としてオープンデータアカデミーをヤフーの協力を得て開催するなどしている。イベント情報を開催を担当する職員が直接入力できる仕組みにしたり、自治体ではまだ対応が少ないサイト情報の二次利用を許可するといった具体的な仕組み作りもしている。
データビジュアライゼーションにも力を入れ、市内で行われている再整備の効果を、「にぎわい」「回遊性」「居心地の良さ」といった項目で可視化し、そこから見えた課題を解決する取り組みを進めている。WDVCでは前回のベストプレゼンテーション賞に選ばれた、神戸大学の学生が発表した神戸市の人口を可視化するアイデアが、消防局の救急出動データを可視化して搬送を効率化する方法の検討につながったことも紹介された。
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