スマホ決済「メルペイ」、参入はこのタイミングが“最適”だった--青柳社長に聞く

 2月13日にサービスを開始した「メルペイ」。フリマアプリ「メルカリ」の売買で得た売上金を、コンビニや飲食店、量販店などリアル店舗で使えるようになる決済サービスだ。売上金以外にもメガバンク、地方銀行を含めた60以上の金融機関との接続に対応しており、口座からのチャージも可能。

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メルペイ代表取締役社長の青柳直樹氏

 支払い手段は、三井住友カードが提供するタッチ決済「iD」をサポート。Apple Payを通して使えるため、これまでのQRコード決済にありがちな、アプリを立ち上げてコードを見せるといった手間なく専用端末にタッチするだけで決済できるのが特徴だ。もちろん、iDの決済端末を設置できない中小規模の店舗向けにQRコードでの決済も2月末から3月中旬までに対応する予定。店舗向けの専用アプリを用意し、店主がスマートフォンを持っていればコストなく導入できる。

 親会社であるメルカリは、運営会社のメルペイを2017年11月に設立しており、実にサービス開始まで1年3カ月かかったことになる。矢継ぎ早に新サービスを展開するメルカリにとっては異例とも言える準備期間について、「本当に使ってもらう決済にするため」と語るのはメルペイ代表取締役社長の青柳直樹氏。このタイミングでの参入や同社が掲げる「オープネス戦略」、他QRコード決済と比較しての勝ちポイントなどを聞いた。

参入はこのタイミングが「最適」だった

ーー「メルペイ」がようやくサービスを開始しました。この時を待ちわびていたのではないですか。

 じっくり時間をかけられてよかったと率直に思っています。

 メルペイを開始するにあたり、スタート時の規模感が重要でした。銀行との接続や使える場所をある程度確保しないと、最初のイメージで一部の場所で使えるものとして固定されてしまい、継続的に使ってもらうためのサービスとして広がらないという懸念がありました。ユーザーがスマホでサッと使えて、パートナーシップも含めて使える場所が多い。この状態をきちんと作ってからお届けできるように注力しました。

 本当の意味で決済サービスとしての普及を考えると、コンプライアンスや不正利用対策、マネーロンダリング対策、内部監査、リーガルなどにきちんと投資して望むべきだと考え、金融経験者・専門家をリクルーティングし、メルカリを理解してもらってチームを作りました。スタートアップのウェブサービスやアプリサービスにあるような、ミニマムでサービスをスタートしてイテレーションする場合だと、「安心安全じゃない」という懸念が出てしまうとなかなかリカバリができません。直近で、仮想通貨も含めたさまざまなことがありましたが、自分たちも同じFinTechの会社として受け止めながらタイミングを選んできました。

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決済可能店舗は「iD」だけで90万店舗。QRコード対応で135万店舗をカバーする。2019年内には200万店舗を目指す

ーーこのタイミングでのサービス開始はベストだったと。

 キャッシュレスを取り巻く環境だと、2019年は10月に増税もあります。そのタイミングまでには使っていただける状態にしたい一方、先述の体制構築やスケール感を出していくと考えるとこのタイミングが最適だったと思います。

ーーユーザーの利用状況はどうですか。

 現時点では、まだテスト的にスタートした段階です。iOS先行ですべてのユーザーが使える状態ではなく、まだアプリをアップデートしてないユーザーも多い現状です。規模感としては、少しずつユーザーを増やし、安定運用できているかを確認しながら広げたいところです。超短期的に、2〜3カ月でスケールを追いかけるのではなく、一歩一歩踏みながら大丈夫かを確認するアプローチを重視しています。

 やはり、現金を使い続けている理由をリサーチすると、「不安」と「面倒くさい」の二つが大きくありました。面倒臭いを解決するためにUI/UXをきちんと改善し、不安は一度起これば“一発アウト”もあり得るわけで、セキュリティ含め、ユーザーにとって安心して使っていただけるところをより重視しています。

タッチ決済「iD」の導入は“想定以上の反響”

ーー「iD」の導入はユーザーからの反応も良いように見えます。選んだ理由はユーザーエクスペリエンス(UX)の観点もあったのでしょうか。

 ユーザーからは、期待していたよりも良い評価をいただいています。また、「iDを想定していなかった」という声もいただきまして(笑)。これまでiD対応は明言はしておらず、メディアに出るときも「コード決済」ではなく「モバイルペイメント」とずっと言っていたのですが、多くの方がコード決済と思っていたようでした。

 iDを選んだのは、UXの観点が大きいです。コード決済は、まだそこまで広がっていないという認識です。すぐに使えることを考えた結果、加盟店ネットワークをすでに持っているところとの提携と、コード決済の拡充、両方を手がけるのが一番ユーザーにとって良いだろうと考えました。我々は、メルペイを本当に使われる決済にしようと思っていますので、直近になって決めたというわけではなく、長い間この方法が良いと考えてきました。

ーー「Merpay Conference 2019」では、乱立するスマホ決済に対し「オープネス戦略」を掲げました。「ネス」と強調しているのが印象的ですが、オープンにするか囲い込むかで議論はあったのでしょうか。

 メルペイは、メルカリを出発点としており、必ずしもペイメント専業というわけではなく、メルカリとメルペイの総和で、一次流通と二次流通のつながりを大きくしていくのをミッションとして掲げています。中国と異なり、日本はすでに決済インフラが進んでいたり、各業種から参入しているプレーヤーがいます。決済で寡占化するのではなく、分かち合ってそれぞれの事業をうまくつなげるのが、キャッシュレスやコード決済を普及させる道だと至りました。

 「メルカリがある」というのが我々として大きく、成り立ちやミッションから自然と導き出された部分が大きいです。銀行や金融機関、さまざまなパートナーと連携していかないと利便性が実現しないと考えた時に、その方々とともに共存共栄していく立場を明らかにした方が、結果として我々のパートナーがもっとも広がると思っています。当然サービスの詳細を伝えていなかったので、今回明確に「オープネス」と発表したことで、我々の立場が明確になり、さまざまな事業者との話が進めやすくなるのではないでしょうか。

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メルペイはパートナー企業や各決済企業をつなげる「オープネス戦略」を掲げる

ーー今回、JCBの共通コード決済基盤「Smart Code」への参画を発表しました。これはJCBから打診があったのでしょうか。

 加盟店ネットワークはJCBが国内最大級です。Smart Codeの話は事前に聞いており、我々としても賛同できるとの思いがありました。自然と話の中から生まれたものでしたが、Smart Codeの枠組み自体はJCBが用意したものです。

ーーさらに、KDDIと「au Pay」の店舗開拓で提携を発表しました。KDDIは、楽天とポイントエコシステムで連携していますが、メルペイの提携が波及する可能性はあるのでしょうか。

今回の話はKDDIと2者間での取り組みです。当然、オープネス戦略を掲げていますので、我々としてはKDDIと2社だけでなくさらに広がることを望んでいますので、楽天に限らずさまざまな会社と組めたらと思います。

ーースマホ決済市場は、ポイント合戦が始まっており消耗戦の様相が見えてきました。メルペイが日常で使われる決済になるにあたり、他者と比較しての差別化ポイントを教えてください。

 ポイント合戦については、キャッシュレスの機運が明確に高まったきっかけになっており、メルペイも追従するかは置いておいて非常に歓迎しています。私自身はどんどん盛り上がって欲しいと思います。

 一方で、我々としては、お客様の安心・安全と使いやすさを明確に価値にしようと思っています。「この場所ではこのペイが使えるけど…」といったイメージが固定されてしまうと、日常で使ってもらうまでたどり着かないと思います。メルカリの配送でお手伝いいただいているコンビニ各社や郵便局といった商圏や、ご飯を食べる、髪を切る、移動するなどローカルでのメルペイが浸透するといった受け入られ方を中心にしたいです。

 自治体との連携も発表しました。メルカリを使っているユーザーが多い場所で、自治体との取り組みでどこでも使える利便性と、簡単で安心というイメージを持ってもらうことで、決済サービスとして普段使いしてもらえるのではないでしょうか。

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福岡市や神戸市など自治体との連携も発表

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