経済産業省の商業動態統計によると、2017年12月期の主要家電量販店合計販売額は4748億円。PayPayによって300億円の売り上げが創出されたとした場合、1カ月間の販売額の6%の効果を生み出したことになる。ただ、これが上乗せになるのか、それとも先食いになるのかは12月の実績を閉めてみないと分からない。
当初、家電量販関係者は先食いを不安視していた。過去、エコポイントで味わった特需反動不況の苦い経験があるからだ。2009年5月から2011年3月まで行われた家電エコポイント制度は単なる需要の先食いとなり、同年4月以降は急激に市場が冷え込み、多くの家電量販が翌期の決算で大幅な減収減益となった。特に、地デジ化とタイミングを合わせたテレビ市場は、例年需要の2倍以上の2500万台を記録したことから反動はすさまじく、長らく市場が低迷、2017年あたりからようやく買い替え需要が生まれて上向き始めたところである。
PayPay特需もその二の舞になるかと不安視されたのだが、キャンペーン終了後は都市型店舗で反動減があったものの、郊外店舗ではほぼそれが見られていない。キャンペーンに参加しなかった量販店も、キャンペーン中は他社に客を取られてマイナス基調だったが、終了後は客足が戻り、例年通りの冬ボーナス商戦の流れに乗って上昇基調に戻っている。郊外店ユーザーはPayPayに踊らされることなく、必要なものを必要なときに落ち着いて購入する、という姿勢ができているがゆえだ。
ただ、年末年始への影響は若干懸念されている。実は、1年の中で家電量販店の売り上げが最も高いのが1月第1週目、次いで12月最終週となっている。その稼ぎ時の後、1月10日にPayPayの還元ボーナスが消費者の手元に付与されることから、消費者はそれまで買い控えの姿勢を見せるのではないかという不安があるのだ。
また、キャンペーン終了後、PayPayのもとには加盟店申請が大挙して押し寄せており、1月10日には還元ボーナス分が使える店舗が増えると見られている。そのため、既に欲しい家電製品を購入してしまった消費者は、還元ボーナスを家電以外の購入に充てる可能性も高い。仮にボーナス100億円のうちの70%、70億円が家電製品の購入によってボーナスが貯められたからといって、それがそのまま家電量販店に戻ってくるとは限らないわけだ。
「キャンペーン中の売り上げ300億円とボーナス70億円がまるまる家電市場に上乗せされればよいが、そう上手くいくかどうか。ただ、初売り後の1月第2~3週は急激に客足が落ちる時期なので、そのときにPayPayボーナスが還元されるのは、確実に市場にプラスになるだろう」と家電量販関係者は期待する。PayPayボーナス市場を狙って、なんらかの販促策を打ち出す家電量販店も出てきそうだ。
なお、ヨドバシカメラとケーズデンキは今回の100億円還元キャンペーンに参加していなかったが、その理由については2社ともに「コメントを差し控える」とのこと。さらに、1月10日からのボーナス付与時には対応するかの問いには、ヨドバシカメラは「ノーコメント」、ケーズデンキは「検討中」としている。
今後、PayPayによるキャンペーンの第2弾、第3弾が期待されているところだが、「キャンペーン中にシステム障害を起こし、利用者、加盟店双方に多大な迷惑をおかけした。まずは足元のシステム強化が最重要課題」(PayPay広報)としている。穿った見方をすれば、客が大量に詰めかけたときでもスムーズに決済できるシステムが構築できたときに、“おかわり”はありそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境