東急不動産は、スキー場のIoT化に乗り出す。Tポイント・ジャパンと提携し、「Tポイント」と電子マネーサービス「Tマネー」を導入するほか、ネットスターズのマルチ決済プラットフォーム「StarPay」を採用する。いずれも日本のスキー場に導入するのは初めて。
スキー場のIoT化は11月19日、東急不動産、東急リゾートサービス、Tポイント・ジャパン、ネットスターズの4社が発表したもの。東急リゾートサービスが運営する全国のスキー場7カ所に、11月23日から順次提供する。
スキー場は、バブル景気の頃をピークに来場者数が減少傾向にある。しかし昨今のインバウンド需要を受け、外国人旅行者向けのレジャーとして、人気が高まっているという。東急不動産では「国内需要はほぼ横ばい。インバウンドについては今後も増加傾向にある。IoT機器の導入は、スキー場、宿泊施設などの向上とともにお客様の満足度を上げる取り組みの1つ。国内市場のデジタルマーケティング展開とアジアスキーヤーの獲得が今後の課題」(東急不動産ウェルネス事業ユニット ホテル・リゾート事業本部執行役員本部長の田中辰明氏)と位置づける。
Tポイント・ジャパンとの提携は、デジタルマーケティング部分を担う。東急リゾートサービスが運営する各スキー場のリフト券購入時に、窓口にてTカードを提示することで、税別200円につき、Tポイントを1ポイントが貯まる仕組み。Tカードに現金をチャージするTマネーを利用すれば、カード1枚でショッピングと決済のダブルポイントが加算される。
Tカードの提示は、Tポイントのデータベースを活用したCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に役立てる。「スキー事業は、どんなお客様が来ているのか把握するのがとても難しかった。Tカードを提示していただくことで、お客様の属性がわかるようになる。リピーターの数なども可視化されるので、お客様の特性を掴みながら利便性の向上につなげ、効果的な販促をしていきたい」(田中氏)と意気込む。
Tカードは、現在約6800万人のアクティブユーザーを持つポイントカード。クレジットカード機能を持たせられるほか、電子マネーをチャージできる「Tマネー」機能も持つ。地域によっては図書館カードとしても使えるなどマルチな使い方ができるのがポイントだ。現在、約180社、95万店舗で利用ができ、どんな人がいつ、どこで、どんな商品を購入したかといったサービス利用状況を解析し、マーケティングに活用している。
Tポイント・ジャパン 取締役の佐藤淳氏は「私たちでは、Tカードを使って集めた個人データを『顧客DNA』と呼んでいる。さらに、たんばらスキー場で集積した顧客DNAデータは『たんばらDNA』になり、より確度の高いマーケティングができる」と活用法を話す。さらに「スキーやスノーボード関連書籍や雑誌購入者に向けて、スキー場のプロモーションをするなど、ユーザーニーズの高まりを逃すことなくプロモーションにつなげられる」と、今回の提携における将来像を描く。
一方、キャッシュレス決済は、需要が高まる中国人旅行者を意識したサービスだ。中国人旅行者向けのスマートフォン決済サービス、「WeChat Pay(ウィチャットペイ)」と「Alipay(アリペイ)」を導入し、中国圏からの訪日観光客の利便性向上を狙う。
ネットスターズ 執行役員のフィンテック事業部マーケティング部長の大竹口隆氏は「リゾート地とスマートフォン決済は相性がいい。財布は持たなくても、スマートフォンを手放さない人は多い。スマートフォンだけですべてがまかなえ、リゾートライフに非常に合っている」とスキー場における利便性の良さを説く。
さらに「日本人は現金主義と言われているが、最近はクレジットカードや電子マネー、スマホ決済などに志向が変わってきていると感じている。StarPay端末は、プリンタ一体型の省スペース設計で、レシート印刷機能つき。紙文化が根強い日本の環境に合致している」とし、モバイルQR決済に対応したマルチ端末「StarPay端末」を紹介。これにより、国内ユーザー向けに「LINE Pay」などのQR決済サービスを推進する計画だ。
東急不動産では、一部のスキー場でゲートシステムを導入したり、スキー場での情報発信、コミュニケーションを可能にするアプリ「yukiyamaアプリ」と連携したりするなど、デジタル化を進めてきた。しかし東急不動産の田中氏は「IoT化が非常に遅れている業界と言っても過言ではない」と言い切る。
今回のTポイントサービスとQRコード決済の導入は、来場者の利用状況を知り、ニーズを把握することで、より満足度の高いサービスを提供し、効果的なプロモーションを実施することが目的。加えて「スキー場はほかの事業と同様に人材の確保が難しい。ITを活用し省人化もしていきたい」(田中氏)と人手不足の解消にもつなげたい考えだ。
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