「Facebookだけに過失があるのではない」--元セキュリティ責任者がロシア問題に自論

CNET News staff  (CNET News) 翻訳校正: 編集部2018年11月19日 10時46分

 ロシアが米大統領選挙に干渉したとされる問題で、Facebookが対応に失敗したのは確かだが、米議会やメディア、諜報機関にも過失があった。

 そう述べたのは、Facebookの最高セキュリティ責任者を務めていたAlex Stamos氏だ。同氏は米国時間11月17日付けのWashington Post(WP)の論説で自身の見解を示した。The New York Times(NYT)が、Facebookと経営陣を厳しく批判した数日後のことだ。

Alex Stamos氏
Alex Stamos氏
提供:Brendan Moran/Getty Images

 ロシアは米大統領選期間中にFacebookでトロール活動を展開して、偽情報を拡散し、対立を招こうとしていたとされる。NYTによると、そうしたことが明らかになる中、最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏と最高執行責任者(COO)のSheryl Sandberg氏は、「危険を示唆する前兆を無視して、それを世間の目から隠そうとした」という。また両氏はこの問題から目をそらし、重要な判断を部下に任せたとNYTは報じたZuckerberg氏Sandberg氏は、この記事に反論している。

 Stamos氏はFacebookについて、「軽視して否定するというパブリックコミュニケーション戦略に固執していた」とし、「そうした脅威により早く対応し、より透明な形で情報公開するべきだった」と述べた。しかし、「同社の誰も、ロシアの活動を調べるなと私に指示したことはなく、調査結果を改ざんしようとした人もいなかった」という。さらに同氏は、過ちを犯したのはFacebookだけではなかったと述べた。

 Stamos氏は、「選挙前に、米国の大規模なインテリジェンスコミュニティーは、ロシアの情報戦争の目的と能力に関して、すぐに活用できる情報を提供できておらず、その後の支援も不十分だった」と書いている。

 また米議会については、議員による「調査公聴会での国民に向けたパフォーマンス」などと記し、「事実を明らかにして、行政機関を効果的に監督し、共同で防衛策を講じることはできなかった」と批判した。

 さらにメディアについては、民主党幹部の電子メールが流出した問題を大きく報じることで、ロシアのハッカーに「メリットを与えた」と述べた。

 Stamos氏は、「今こそ将来の情報操作から私たちの社会を守るために力を合わせるべきだ」とし、2020年の大統領選もハッカーに介入されずにすむ可能性は低いと警告した。

 米議会は、ソーシャルメディアなどのプラットフォームで展開される政治広告に透明性を求める法案を可決する必要があるとStamos氏は述べた。この法は、「分裂を生じさせる政治的な話題を用い、米国民の細分化された層を正確に狙う能力を、(中略)あらゆる主体に対して制限する」ものでなければならないという。

 「FacebookやGoogle、Twitterが、法規制に静かに反対するのではなく、法律への有用な追加を提案することを、大いに期待している」(Stamos氏)

 Stamos氏は、政治的な言論に関して、米国はIT企業に委ねられるべき責任と政府に任せられるべき責任を明確にする必要があると述べた。欧州諸国の一部は、この点で米国よりもうまくやっているという。

 「サイバーセキュリティの多くの分野では、政府と企業の協力が求められる。フランスとドイツにおける関係組織は、どうすれば民主主義体制において正当な防衛的サイバーセキュリティの責任を明確化できるかを示すモデルとなる」(Stamos氏)

 Stamos氏は、報道の自由には一定の避けられない困難がからむが、「米国の敵のメッセージを増幅することなく、ニュース価値があるデータ流出を報じる方法について、有力な報道機関が基準を公表すれば、信頼回復につながるはずだ」と述べた。

 FacebookやTwitterのようなプラットフォームは「悪用に対する防御を高める必要がある」が、ユーザーも「自身の信念を疑うことになろうとも、見聞きするものが正しいかどうかを常に問うこと」が不可欠だ、とStamos氏は締めくくっている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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