続いて登壇した小野氏は、不動産業界における電子契約についての最新動向を語った。数年前、賃貸契約は電子化できないと関係者が口をそろえて発していたそうだが、不動産業界における電子契約は緩やかに普及しているという。
新規の賃貸契約、保証委託契約、更新契約、マンスリーマンション、管理受託契約など、かつて無理だと言われていた賃貸契約においても普及は進み「法的な有効性への理解は浸透し、賃貸における電子契約はグレーではなくホワイトだ」と小野氏は語気を強める。国土交通省からのヒアリングを受け、電子契約サービスに関する打ち合わせをし「しっかりと業法を守って電子化を進めてください」とメッセージを受けたが、それでも業界内には「グレーなのでは?」といぶかしむ声が多いのだとか。
業界内における“業法に対する怖さ”に起因した心理が電子化を阻害している要因になっているのではないかと小野氏は述べた。こと業法の話で言えば、宅地建物取引業法三十七条(書面の交付)の解釈に起因しているのではと小野氏。条文を読み込むと、そこには契約の手段についての定めが記載されて無く、この部分に関して国交省担当者に言質を取りに行ったのだとした。
次いで電子契約の実施状況へと話題は移り、ソフトバンク コマース&サービスが提供する電子契約システムIMAoSの詳細を説明した。サービスのローンチ当初、「契約を締結」というボタンのみしか存在していなかったが、現在では「締結の依頼」というボタンが新たに新設されたという。それは、現場のワークフローを整理した結果、従来行っていた業務の流れに沿って電子契約ができるようアジャイル的な動きで改善されたそうだ。管理会社が契約書を登録し、仲介会社はEメールを受信。重要事項説明をした後に入居者が電子署名を行え、仲介会社はIMAoSを導入していなくても電子契約が締結できる。
また小野氏は、電子契約の現場のこぼれ話として「オーナーが登場する電子契約は優先度が下げられている」と語る。そこでIMAoSでも書面作成画面上の貸主欄はオーナー個人ではなく法人をデフォルトとしているそうだが、近い将来オーナーが登場する電子契約も本格稼働するのではないかと期待をのぞかせる。というのも、10月よりハウスコムの9店舗でIMAoSのパイロット運用を開始し、オーナーについてもスマホやEメールで電子署名を実施しており、大きな一歩につながるのではないかと語った。
オーナーへの配慮からか、電子契約へ踏み切れない企業が多い中、なぜハウスコムはIMAoSでの電子契約に踏み切ろうとしているのか。そこには、賃貸物件の退去から入居までのライフサイクルが関係している。
退去、工事、募集、入居審査、賃貸契約という一連の流れの中で、関係各者で交わされる紙の文書を電子化できれば時間の短縮に寄与する。さらに、退去から入居までの期間短縮化にもつながることは想像に難くない。また、オーナーに関連した話では、東急住宅リースでは約500名のオーナーが管理受託契約に電子署名を使っており、今後は賃貸契約でも電子契約への移行ができるのではと語った。
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