Googleは10月に開催した製品発表イベントで、音声アシスタント「Googleアシスタント」を搭載するカウンタートップディスプレイ「Google Home Hub」を発表した。
それに先立つ9月には、Amazonがやはり製品発表イベントで、およそ70の新製品や新機能を発表。そのほとんどが、音声アシスタント「Alexa」を取り巻くものだった。
ではAppleはというと、同じ2カ月間に1度ならず2度もハードウェア発表イベントを開催したが、いずれのイベントでもスマートホーム製品は発表されなかった。同社のデジタルアシスタント「Siri」について大きい変更を予定していると、ほのめかすことすらなかった。
ことスマートホーム技術ということになると、市場をリードしているAmazon、Googleの両社と比べて、Appleはほとんど存在感がないと言ってもよい。ホリデーシーズンを前に立て続けに開催された今秋のハードウェア発表イベントで、その点はいっそう明白になった。むしろ、状況は悪くなっていることが分かった。大きな前進を見せないまま手をこまねいていれば、Appleは急成長するこの新市場から締め出されるリスクをますます重ねていくことになる。
「Appleは後れを取る危機にあるのではない」。市場調査会社Consumer Intelligence Research Partners(CIRP)の共同創業者Michael R. Levin氏は、スマートスピーカ市場におけるAppleの「HomePod」のシェアが微々たるものであることを指摘し、そう語った。「既に、大きく後れを取っているのだ」
スマートホーム戦略を刷新しない限り、Appleはこれから期待できる収益源をみすみす逃すことになるだろう。そればかりか、Amazon AlexaとGoogleアシスタントのエコシステムに引っ張られて、ハードウェアの顧客をごっそり持っていかれてしまう恐れすらある。Appleが何も手を打たない以上、数多く存在する忠実なAppleファンは、スマートホームアシスタントの世界で選択肢が限られてしまい、競合他社のプラットフォームを使うしかなくなる。そして、それらのプラットフォームでは、「iPhone」や「MacBook」がAppleのプラットフォームのようにはうまく動作しないからだ。
スマートホームの市場は日が浅く、断片的であるため、Appleはまだ負けたわけではない、という主張もある。Strategy Analyticsのアナリスト、Jack Narcotta氏の意見だ。だが、そのチャンスがいつまでも続くわけではないとも同氏は述べている。
「AmazonとGoogleが市場をどう見ているか、Appleは一顧だにしていないようだ。だが、座視している時間が長くなるほど、この2社に大きく水をあけられてしまう危険性がある」(Narcotta氏)
この件について、Apple、Amazon、Googleの担当者からコメントは得られなかった。
2017年6月に、Appleは同社初のスマートスピーカとして、Siriを搭載するHomePodを発表した。製品は12月発売予定とされ、クリスマス商戦にぎりぎり間に合うはずだった。だが、実際の発売は2018年2月にずれ込んだ。
一方、AmazonはAlexa搭載のスマートスピーカ「Echo」を2014年11月に発売し、今では市場を圧倒している。Googleも、2016年11月に「Google Home」を発売した。それ以来、両社とも新しいデバイスを次々と投入し、スマートスピーカの世界を広げ続けている。新しい製品としては、Googleからハイエンドのスピーカ「Google Home Max」、Amazonからは小型のタッチスクリーンを搭載した「Echo Spot」、壁掛け時計「Echo Wall Clock」などが登場した。
GoogleとAmazonの最も安価なスピーカ、「Google Home Mini」と「Echo Dot」はどちらも49ドル(日本ではそれぞれ6480円/5980円)で、HomePodの349ドル(約3万9500円)と比べるとはるかに安い。
Appleには、依然としてこのHomePodしかなく、それも最近の製品発表イベントではほとんど言及されなくなった。Siriについても、大きいアップグレードの気配すらない。かわりに、Siriのコマンドをパーソナライズできる「Siriショートカット」機能、歌詞で楽曲を検索する機能、新しい言語の追加など、周辺的な機能をいじることに終始している。
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