INCJが出資に至った理由も、パナソニックやScrum Venturesと同じ問題意識を持っているからだ。INCJによると、日本企業は研究開発に投じた費用を利益につなげられていないという。そして、世界各国に比べて起業率が低いことも問題だという。
INCJによると、EBITDA(税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加算した値)を研究開発費用で割った値を比較すると、日本企業の水準は世界でも最も低いものになるという。上図を見るとアメリカ企業は35.8という高い値を記録し、アジア各国の企業も12.9という値になっているが、日本企業は上位10社平均でも3.6という低い値になってしまっている。大企業が有望なビジネスアイデアを埋もれさせていることと、この値は無関係とは言えないだろう。
そして各国の起業率を見ると、イギリスは14.3%、アメリカは9.3%という高めの値を記録している一方、日本は5.2%にとどまっている。INCJは大企業のビジネスアイデアや人材を活用して起業を促進するというBeeEdgeの活動が、上記の日本が抱える問題を打破する有効策になると期待して出資を決めた。
ちなみに、BeeEdge設立当時の出資比率はパナソニック49%、Scrum Ventures51%だったが、今回のINCJの出資により、議決権比率がINCJとScrum Venturesがそれぞれ33.8%、パナソニックが32.4%となった。INCJはBeeEdgeに、最大で合計10億円まで出資する構えを見せている。
現在のところBeeEdgeの活動は、パナソニックの中でも白物家電などを扱うアプライアンス社に限られているが、その理由についてパナソニックの執行役員で、アプライアンス社の副社長を務める河野明氏は「アプライアンス社が手がける家電事業はすでに衰退期に入っており、このまま続けていても業績は下がる一方」と明かした。衰退を待つなら、事業化できなかった有望なアイデアを外に出して、早期に事業化してもらった方が良いというわけだ。
さらに事業化に成功し、社長として経営のノウハウを身に付けた人材はパナソニックにとって将来の幹部候補にもなり得るという。河野氏は「事業化に成功して、そのままパナソニックから離れて、起業家として活躍しても良いと思っている」と語る一方で、成功を収めてパナソニックに帰ってきた社員が幹部候補になることも十分考えられるとしている。
そしてINCJがBeeEdgeへの出資を発表したこの日に、BeeEdgeが初めて投資したミツバチプロダクツが、新製品「∞ミックス(インフィニミックス)/ホットチョコレートマシン」を発表した。30秒でホットチョコレートドリンクを作れる業務用機器で、想定販売価格は25万円。2019年春をめどに発売を予定しているという。
ミツバチプロダクツの社長に就任したのは、パナソニック アプライアンス社出身の浦はつみ氏。2017年からアプライアンス社でチョコレートドリンク事業に挑戦していた人物だ。ミツバチプロダクツには春田氏も取締役として参加し、経営を支援する。
現在のところ、BeeEdgeの活動対象はパナソニック アプライアンス社のみだが、INCJは同様の仕組みをほかの大企業にも応用すれば、日本の起業率がさらに上がり、企業社会が活性化すると期待しているという。
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