全世界で1億ユーザーを超えた有料会員サービス「Amazonプライム」。定額料金を支払うことで、通販サイト「Amazon.co.jp」のお急ぎ便配送や、動画サービス「Prime Video」、音楽サービス「Prime Music」、電子書籍サービス「Prime Reading」などが使い放題になるサービスだ。この“特典”は年々増え続けている。
プライムならではの価値や、同社が課しているミッションについて、10月に来日していたAmazon Prime International バイスプレジデントのジャミル・ガーニ氏に聞いた。
——Amazonプライムの利用者が全世界で1億人を超えました。
2018年に初めて(Amazon共同創業者の)ジェフ・ベゾスが株主向けのレターの中で、グローバルでプライム会員数が1億人を突破したことを発表しました。現在、プライムは17の国と地域で展開していますが、これらのエリアで非常に好評を得ていることを、私たち自身も嬉しく受け止めています。
プライムが生まれるまで、消費者はいずれかの選択を迫られていました。高い配送料を支払って商品を早く受け取るか、もしくは2週間待って無料で受け取るか。私たちは、そもそも配送のことなんて考えず、本当に欲しい商品のことだけを考えられる仕組みを作りたかった。そこで、当初は2日間で届くことを保証し、何度でもこの特典を楽しめる仕組みを作ったわけです。
そして、2005年に米国でプライムが立ち上がりました。さらに、2007年には日本やイギリス、ドイツで提供が始まり、今日に至っています。配送に続く、次の大きなイノベーションは2011年でした。ショッピングは十分に楽しいものですが、体験としてより“FUN(楽しい)”の部分を強化しようということで、動画配信サービスのPrime Videoを始めました。
Prime Videoはローカルやグローバルの動画コンテンツを、どのようなデバイスでも広告なしで無制限に視聴できることから、プライム会員を大きく伸ばすドライバーになりました。このように、エンターテインメントの要素も含めてさまざまな特典を付け加え、サービスを強化し続けたことが、1億ユーザー突破につながったと思っています。
これまでもAmazonプライムは進化し続け、拡大し続けてきましたが、これからもさらなる価値を届けるために常に毎日がDay1、つまり新しいイノベーションを送り続ける毎日がその初日であるという信念に則って、新たなサービスや価値を提供し続けたいと思っています。
——国や地域ごとにユーザーの利用傾向に違いなどはあるのでしょうか。
各国で共通していることがいくつかあります。まず、Amazonのサービスの特徴として、地球上で最も豊富な品揃えと競争力のある低価格、そして利便性の高い配送オプションというものを謳っています。それらをベースに、全社のイノベーションを結集して提供しているのがショッピングとエンターテインメント体験としてのプライムであり、これらを1つのパッケージで低価格で提供しています。これはどこの国でも共通して、すべての消費者に受け入れられている価値観だと思います。
一方で、コンテンツの好みという点では、国ごとの違いが見られます。日本ではPrime Videoのオリジナルのコンテンツが非常に人気です。たとえば、松本人志さんの「ドキュメンタル」や「フリーズ」のほか、(恋愛リアリティ番組の)「バチェラー」などが人気です。また、Prime Musicではゲームを始めとするサウンドトラックが人気ですね。Prime Readingではやはり漫画が人気です。
ショッピングでも若干、嗜好の違いが見られます。1つ顕著なのが(ビッグセールである)「Amazon Prime Day」です。毎年各国の人気アイテムを発表しているのですが、よく覚えているのが2年前に日本でミネラルウォーターの6本または8本セットが非常に人気だったことです。また、売れ行きが良いのが(スマートスピーカの)「Amazon Echo」です。
このほか、プライム会員費を携帯電話会社のキャリア決済と一緒に支払えるところは、モバイル浸透率が非常に高い日本ならではですし、配送においても日本がリーダー的な存在です。日本はとにかく配送スピードが速く、お客様の期待値も高いのですが、お急ぎ便や当日お急ぎ便、それよりも早いPrime Nowといった日本での成功体験を、他の国にも展開していく流れができています。
——他社のロイヤリティプログラムと比べて、Amazonプライムの強みはどこになるのでしょう。
Amazonプライムは、決してロイヤリティプログラムではないと思っています。ロイヤリティプログラムであれば、大抵は一定額以上の商品を買えばポイントが付与されたり、ステージが上に進むといった仕組みが用意されていると思うのですが、プライムは少しだけ支払ってもらえれば、それ以上の価値が体験ができるものです。
たとえば、ジムにすべての会員が一度に来てしまうと、収容人数を超えてしまうわけです。また、ジムに通っても通わなくても会費がかかります。プライムでは、なるべく多くの特典をできるだけたくさん使ってもらいたいと考えています。だからこそ“何度でも無制限で”ということが大前提であり、それによって会員自身もそしてわれわれ自身もハッピーになれるわけです。私たちのインセンティブとプライム会員のインセンティブが一貫していること、同じ方向を向いていることが重要なのです。
私はAmazonという組織は、何千もの小さなスタートアップで成り立っているような会社だと思っています。数人で構成されたチームが日々新たなアイデアを探っており、プライムはその中から選りすぐった最も良いサービスを、エンゲージメントの高いお客様に届けるための会員制度だと思っています。
——スマートスピーカのAmazon Echo(Alexa)とAmazonプライムの関係をどう考えていますか。
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