シャープは、2019年3月期上期(4~9月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比1.2%増の1兆1290億円、営業利益は15.9%増の470億円、経常利益は5.1%増の432億円、当期純利益は17.8%増の409億円となった。
シャープの代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏は、「『量から質』への転換に向けた取り組みの一環として、中国でのテレビ販売を抑制する一方、日本での台風による物流の影響などがあった。台風では減収のうち10%程度が影響している。売上高は前年同期を上回り、利益も好調に推移した。当期純利益は体質改善の成果もあり、前年同期比2割に迫る伸長となり、半期での開示をはじめて以来、過去最高の利益率になった。上期の業績は、中期経営計画の達成に向け、総じて順調に推移した」と総括してみせた。
また、過去最高の利益率になったことについては「代表取締役会長兼社長の戴(正呉氏)は、経験や知識をもとにした指摘が明確であり、すぐに納得できる。その結果、社員が行動するスピードが速くなる。そうした成果が業績につながっている」と述べた。
セグメント別では、スマートホームの売上高が前年同期比3.4%増の3006億円、営業利益は前年同期比13.9%増の233億円。AQUOS RシリーズやAQUOS senseを発売した携帯電話ビジネスが前年を上回ったほか、猛暑の影響でエアコンが大きく伸長。掃除機や洗濯機なども好調だったという。
スマートビジネスソリューションの売上高は前年同期比2.6%増の1584億円、営業利益は前年同期比7.3%減の90億円。海外の複合機ビジネスが好調だったという。
IoTエレクトロデバイスは、売上高が前年同期比25.1%増の2508億円、営業利益が前年同期比89.9%減の2億円。スマートフォン向けカメラモジュールのほか、半導体などの独自デバイスが伸長した。
アドバンスディスプレイシステムは、売上高が前年同期比12.1%減の4582億円、営業利益は前年同期比16.1%増の190億円。中国でのテレビの販売を抑制した影響で減収となったが、アジアでの液晶テレビの販売は好調。ディスプレイ事業は、中国向けスマートフォン用パネルの販売が減少したが、大手顧客向けを中心に、PCやタブレットなどの中型パネルが好調だったという。
なお、第2四半期(2018年7~9月)の業績については、「スマートホームは減収増益となっているが、これは前年度第2四半期にはスマホの新製品投入があったことと、台風の影響によるものだ。スマートビジネスソリューションは減少減益だが、欧米でのサイネージなどのBtoBディスプレイの価格競争の影響を受けた。IoTエレクトロデバイスでは赤字となったが、部材の品質に起因してカメラモジュールの生産が滞ったこと、子会社化したカンタツが収益悪化の要因になった。アドバンスディスプレイシステムの減収減益は、中国市場におけるテレビの販売抑制が影響している」と説明した。
一方、2018年度通期の業績予想を修正。売上高は2000億円減の前年比10.8%増の2兆6900億円、営業利益は20億円増の前年比24.3%増の1120億円、経常利益は10億円増の前年比13.1%増の1010億円、当期純利益は100億円増の前年比28.2%増の900億円を見込む。
野村副社長は、「ローカルニーズを確実に捉えた商品の展開により、ASEANをはじめ、グローバルで事業拡大が見込まれること、東芝クライアントソリューションの子会社化や季節要因などもあり、下期の売上高は、上期から大きく伸長する見込みである。約4300億円上乗せしないといけないが、そのうちの約2300億円は、『dynabook』の連結効果や、ASEANや中国での高付加価値テレビ、AIoT搭載の家電製品などを含めた商品部門で上乗せすることになる。残り2000億円はデバイス部門であげることになる。また、体質改善の効果などを背景に、上期実績が予想を上回ったことから、各利益とも、通期予想を上方修正した」と説明した。
また、2019年3月期下期の取り組みが予想通りにいけば、中期経営計画で掲げている2019年度の売上高3兆2500億円の目標達成は可能であるとの考えも示した。
下期の取り組みについては、「8KとAIoTを軸に、『量から質へ』」の転換を進める」とし、国内では、12月に始まる新4K8K衛星放送に対応した製品群を投入するほか、シャープ初となる有機ELパネルを採用した携帯電話を商品化し、この分野でのシェア拡大に取り組むという。また、AIoT搭載家電のラインアップを拡大するとともに、機器連携の強化も進める考えを示した。また、dynabookの投入効果も期待しているという。
グローバル事業においては、ASEANにおける積極的なプロモーションとローカルニーズに対応した製品を投入。中国では、事業の高付加価値化を加速すると説明したほか、欧州市場では、8Kモデルを筆頭にテレビのラインアップを拡充するという。中国での美容家電の拡大も見込んでいる。「中国では、会長兼社長の戴が、中国代表として、現地で陣頭指揮を執っており、多くの時間を中国に割いている」とした。
デバイス事業では、スマートフォン向けカメラの複眼化需要を取り込むのに加えて、IGZO技術を生かして、PCやタブレット、車載などの中型パネルへのシフトを推進する考えを示した。
また、テレビは年間1000万台の出荷規模を維持しながら、付加価値展開を進めていく考えも改めて強調。野村副社長は、「下期以降は、事業拡大を継続するだけでなく、さらなる収益力の強化と財務体質の改善を目指す」とした。
同社では、2019年度に海外売上比率を80%にする計画を掲げているが、上期時点では、中国でのテレビ販売の抑制により、前年度同様に7割強にとどまっているが、「2018年度通期では、70%半ばを超えたい」と述べた。
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