ルービン氏は「氷山の一角」--グーグルのセクハラ問題を報じたNYTの真意を考える - (page 2)

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ブロトピア("Brotopia")は変わるのか

 Emily Chang氏(Bloomberg Technologyのメインキャスター)が2018年はじめに出した『Brotopia』という題名の書籍がある。このタイトルはBro(兄弟)と Utopia(ユートピア)を組み合わせた造語だ。この言葉が端的に言い表していること、つまり、もともとオタクとヒッピーがつくったシリコンバレーが男性(特に白人とアジア系)にとってとても居心地のいい場所(逆に女性にとってはしんどい環境)というのは、かなり以前から繰り返し報じられてきていることだ。そして、そんな世界にこの10年で世界中からとてつもない額の金が流れ込んだ(その代表がソフトバンクとサウジ政府のビジョン・ファンドといえるかもしれない)結果、Vanity Fairに書かれるようなグラマラスでスキャンダラスな話も目立ってきた。

 NYTが今回、Google内外の関係者に取材を重ね、また同社をめぐる昔話まで改めて引っ張りだしてきた背景には、このブロトピアに揺さぶりをかけようとする思惑がある。これが現時点での私の印象である。

 NYTがいまになって、Googleの「過去の話」を掘り返していることに関して、まず思い出されるのが、ちょうど2017年の今頃に表面化したハリウッドのセクハラ問題(大物プロデューサー、Harvey Weinstein氏のセクハラに対する女優らからの告発)、いわゆる「#MeToo運動」だ。あれでWeinstein氏やJohn Lasseter氏(Disney Animation、Pixerの最高経営責任者:CEO)、Kevin Spacey氏(「ハウス・オブ・カード 野望の階段」主演男優。若い男優からの告発)をはじめとする大物が失脚するなどした。

 テレビの世界でもBill O'reilly氏やCharlie Rose氏といった自分の名前を冠した番組を持っていたベテラン司会者(ホスト)がセクハラ告発を受けて降板に追い込まれた。さらにCBS(3大ネットワークのひとつ)中興の祖として高い評価を集めていたLeslie Moonves氏(CEO)もなんと6人の女性へのセクハラ疑惑が浮上して結局辞任に追い込まれていた(2018年9月上旬のこと)。Vox.comにはそんな「セクハラ野郎」の名前と容疑を列挙したリストまでつくられている有様である。なお、このリストのページの冒頭には「2017年4月から現在までにセクハラ告発を受けた有名人、政治家、企業CEOなどはあわせて252人にのぼる」という記述がある。

 ハリウッド(芸能界)やワシントンDC(政界)がそうした状況に変わってきている社会全体の「時代の流れ」のなかで、NYT記事に名前の出た上級幹部らに対するグーグルの対処の仕方はもう通用しないだろう。別の言い方をすると、ブロトピアはそろそろお終いにしないといけない、ということになる。

 NYTとしては、これをきっかけに他媒体からも追従する動きが出て、「MeToo」と手を挙げる女性たちがもっと現れること、それを通じてシリコンバレー全体での(主に男性による)セクハラやパワハラへの世間の注目が集まること、そして各企業とくに大手の4、5社が率先してこの種のハラスメントに対する防止策をさらに強化するような動きに出てくることなどが実際に起これば、今回の調査報道(社会一般に対する問題提起)は成功といえよう。また、何かを変える引き金となったとして、ピュリッツァー賞も手にできるかもしれない。

 Googleのほうは、まずは過去にあった事例についての情報開示を徹底して行うと同時に、今後に対する指針を具体的に示す必要がありそうだ。NYT報道を受けて、さっそくCEOのSundar Pichai氏が「過去12年間で13人の上級管理職を含む48人を解雇したが、そのなかに退職金を受け取った者はない」との説明を従業員宛のメールでしたと伝えられているが、その程度の対処策で社内(一般従業員)の反発が治まるかどうか。またユーザープライバシーやフェイクニュース対策、市場の独占などで、Googleに対する(とくにワシントンDCやブリュッセルからの)風当たりがさらに強まっているのは周知の通りで、脇があまいと意外なところから突っ込まれてしまいかねない。

 Googleがこのセクハラ問題で今後どう出るか、それに対して社会がどう反応するかなどに注目すべき理由は以上のようなところである。「Don’t be evil(悪をなすな)」という同社が株式公開時(2004年)に掲げたスローガン(社是)を覚えている人はもうほとんどいないだろうが、Google経営陣は初心に返って「率先垂範」しないといけないかもしれない。

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