Facebookのデータ流出スキャンダル、問われるFBの自主管理能力

 Facebook(以下、FB)が1週間ほど前から、第三者によるFBユーザーのデータの不正入手と利用をめぐって、英米のメディアから批判の集中砲火を浴びているのは、この記事の見出しをクリックされた方ならおそらくすでにご存じかと思う。今回はこの話題について気になった話などを紹介する。

事の経緯

 まずは今回の騒動が勃発した経緯などを軽くおさらいしておく。

 Cambridge Analytica(以下、CA)という米データ分析企業の元関係者であるChristopher Wylie氏という人物が、「Facebookユーザー約5000万人の個人データが、CAによって不正取得および利用された可能性がある」との内部告発を行い、これが米紙The New York Times(NYT)と英紙The Guardian(系列のThe Observer)によって報じられたのが現地時間3月17日、18日のこと。

 CAというのは、一言でいうと「うさんくさい会社」といえる。米共和党の非主流派であったTed Cruz氏やDonald Trump氏に選挙資金を出して影響力を行使しようとしたRobert Mercer氏/Rebekah Mercer氏親子がスポンサーであるとか、そのMercer氏親子が手先としてCAに送り込んだのが、極右媒体として批判されるBreitbart Newsの会長(編集主幹)だったSteve Bannon氏(Trump政権発足時から2017年8月半ばまでTrump政権のチーフストラテジスト)であるとか、そういうざっくりいって「危なそうな輩」ーー少なくともCNNとかNYTなど、Trumpから「フェイクニュース」呼ばわりされたことのある報道機関からみれば、格好の標的ともいえる人間たちの息がかかった「サイバー政商」ともいえる企業だ。ただし、その実力のほどは定かでなく、CAの技術がTrump当選に一役買った可能性については以前から疑問の声も上がっていたし、今回も「CAはちっとも役に立たず、やつらに一杯食わされた」とするCruz氏の選挙対策関係者の話なども報じられている。

 それでもMercer氏親子が「英国のEU離脱(Brexit)」「Donald Trump政権誕生」の両方の動きに関与し、影響力を行使していたとされることから、今回の「スキャンダル」が大西洋をはさんだ両側であっという間に大きな注目を集めたのも無理からぬことだと思う。

「ロシア疑惑」調査の余波

 Donald Trump氏のいわゆる「ロシア疑惑」をめぐり、Robert Mueller氏(米司法省の特別検察官)らによる調査が現在も続いている。Mueller氏はこれまでに、一時Trump氏陣営の選対委員長を務めたPaul Manafort氏や、同政権発足当初に安全保障担当補佐官だったMichael Flynn氏、さらには現司法長官のJeff Sessions氏などを取り調べ、現在はTrump氏の娘婿であるJared Kushner氏(大統領上級顧問)にも矛先を向けている。そんなMueller氏は今のTrump氏にとって非常に厄介な人間のひとりという印象だが、そのMueller氏の調査チームが、CAがTrump氏の大統領当選に果たした役割について関心を示していたとの話も報じられている。

 いずれにせよ、この調査で完全に「白」という判定が出ない限り、ロシアによる米大統領選への干渉という可能性はくすぶり続ける。実際にTrump氏陣営関係者とロシアとの謀議があったかどうかは別にして、一国の首長の選出に外国が情報操作を通じて介入したというのは一種の主権侵犯であり、建前としては「ゆゆしき事態」だから、そんな行為を許す余地をシステム上に残していたとしてFBに対する風当たりが強まるのも無理はないと思う。

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