2019年で設立70周年を迎えるフォスター電機が、イヤホン、ヘッドホンの開発用ドライバユニットサンプルを無償で提供する「FOSTER Alliance Program」という新たな領域に踏み出す。10月27日に東京都中野区の中野サンプラザで開かれている「秋のヘッドフォン祭 2018」で同プログラムを発表。すでに3社のパートナー企業がいることも明らかにした。
フォスター電機は、1949年に設立した音響機器・部品の総合メーカー。車載用スピーカやモバイル機器向けのヘッドセットなどを提供するほか、自社ブランド「FOSTEX」、カスタムヘッドホンブランド「kotori」などを展開する。
FOSTER Alliance Programは、フォスター電機が自社開発したイヤホン、ヘッドホンのドライバユニットと技術資料を無償で提供し、パートナー企業がイヤホン、ヘッドホンの開発に役立てるというもの。フォスター電機は、パートナー企業から開発された商品の試作品貸与と提供ドライバに関する年1件以上のレポートを得る。
パートナー企業は国内外問わず、広く募る予定。同日から正式受付を開始しており、「ヘッドホン、イヤホンにかかわらず、さまざまな機器に活用してもらいたい」(フォスター電機 モバイルオーディオ第2営業部部長代行の河合英俊氏)と意気込む。
フォスター電機では、長くドライバユニットの開発、製造を手がけてきたが、一部の例外を除き、自社で組み立て、最終完成品を提供することがほとんどだったとのこと。一部の機種では累計生産数量が10億個を超えるなど、超大量生産ができる実績も持つ。
FOSTER Alliance Programは、外販をしていなかったフォスター電機のドライバユニットを使いたいため、購入してきた製品を分解し、ドライバユニットだけを取り出して製品開発を進めているという話しを聞いたことがきっかけ。「当時はビジネスマッチングが難しく、外販はできなかったが、この思いにどうにかして応えたいと考えた」と河合氏は当時を振り返る。
一方、スマートスピーカなど、音を通じたコミュニケーション方法が登場し、オーディオ製品のあり方が変化しているという市場環境を受け、「新たな用途提案は自社でももちろん続けていくが、すべてを1社で対応するには限界がある。パートナー企業を募り、コラボレーションを通じてやっていきたいと思った」(河合氏)と話す。
ファスター電機が今回のアライアンスに期待するのは、コラボレーションによる、新たなより良い製品の開発と自社開発によるドライバユニットに対するフィードバック。河合氏は「パートナー企業の方から、不平不満を含めてフィードバックがほしい。それを開発に反映する」とする。
すでに、FitEar、カナルワークス、くみたてLabの3社がパートナー企業に名を連ねている。提供するのは、6、9、14、40、50mmまでのダイナミックドライバユニット5機種。パートナー企業と共にドライバユニットの種類も随時追加していく計画だ。
フォスター電機モバイルオーディオ第2営業部の山口創司氏は「スタンダードな構造の9mmから、社内最小の6mm、すでに10億台以上を作った経験を持つ14mmなど、使いやすいサイズや形状を用意した。6mmのダイナミックドライバは、サイズが小さいため、基盤を載せてワイヤレス化したり、バランスドアーマチュアドライバと組み合わせたりと多用途に使える。50mmのタイプは、強力な磁気回路を搭載していることが特長で、ハイエンドヘッドホンの中でも確実にトップクラスのドライバになる」とラインアップについて説明した。
会場には、パートナーの1社で、FitEarを展開する須山歯研 代表取締役社長の須山慶太氏が登場。「当初は密閉型ヘッドホンを開発しようと思ったが、ドライバユニットが良すぎた。カップ部やハンガー部やなどのパーツ選びに苦労した。ユニットだけではなくて、スタートアップキットのようなものも提供してもらえるとうれしい」とコメント。新たな取り組みを提案した。
河合氏は「いろいろな形で使ってもらいたい。用途は限定していないので、私たちがしらない味付けに料理してくれるようなメーカーや人などにあらわれてほしい。スタートアップ向けにも積極的に提供していきたい」とし、FOSTER Alliance Programに対する参加者を積極的に募る姿勢を見せた。
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