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ブロックチェーン利用の“目的化”は危険--EAJが語る「不動産取引の24時間365日化」

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 独特の商慣習ゆえ、IT化で遅れを取ったともいわれる不動産の世界。ただそれは、1回の取引で極めて大きな金額が動き、それだけに些細なミスが許されないことも要因だろう。

 こうした業界において、最新技術の代表格であるブロックチェーンは果たしてどんな革新をもたらす可能性があるのだろうか。不動産取引を中立的な立場で支えているエスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)の戦略について、同社の常務取締役執行役員である成宮正一郎氏が解説した。

エスクロー・エージェント・ジャパンの成宮正一郎氏(常務取締役執行役員 不動産事業本部長)
エスクロー・エージェント・ジャパンの成宮正一郎氏(常務取締役執行役員 不動産事業本部長)

インターネットで不動産取引のあり方が変わった

 社名の一部になっている「エスクロー」とは、取引における売り手と買い手の間において、中立的な第三者がその取引を支えるサービスのこと。おもに不動産取引の安全性確保のため、米国で発展した概念だ。

 EAJは、安全性の確保はもちろん、取引の利便性向上や業務効率化も見据え、不動産に関連するさまざまな業務を手がけている。受発注管理・進捗管理などを代行するオペレーションセンターも社内に抱えているという。

 その不動産取引に、大きなインパクトを与えたのがインターネットだ。ネットを通じて不動産を売買したり、当事者が直接顔を合わせることなく不動産ローンを組むといった光景はもはや当たり前になった。成宮氏は「従来までであれば、売り手・買い手・金融機関がすべて同一の地域にいたので、簡単に集まって取引ができた。しかしインターネットの登場で、時間・距離といった制約がなくなった。札幌の土地を大阪の業者が買うといった場合に、我々EAJのマネジメント力が特に発揮されている」と語る。

EAJのおもな業務内容
EAJの事業構想

不動産取引とブロックチェーン、その関係性

 同社では、不動産取引の最新トレンドについて常日頃から研究を重ねており、2016年5月からはブロックチェーンをその対象に加えた。不動産取引・登記にブロックチェーンを活用しようという取り組みは世界各国で見受けられ、特に成宮氏は米国バーモント州での動きに注目しているという。同州では2018年8月、ブロックチェーンで不動産登記を行うための関連法規が成立。ここではPropyという民間企業の技術・サービスが用いられている。

 米国の不動産登記システムは日本のそれと大きく違う。成宮氏は「土地に対して人(権利者)を紐付けるのが日本。対して、人に対して土地を結びつけるのが米国」と解説する。このため米国では、まったく無関係の別人が不動産の所有権を主張できてしまうケースがある。これを防ぐ目的で、民間企業が独自に登記情報データベースを構築している。

 このように、不動産の制度は国によって大きく違う。いくらブロックチェーンが透明性・安全性で優れる技術だとしても、日本で土地登記に応用しようというのは現実味が沸かない。しかし国や地域によっては、ブロックチェーンへの期待度が極めて高い現状が確かに存在する。

ブロックチェーンの利用が“目的化”してはダメ

 日本国内においても、積水ハウス、LIFULLなどがブロックチェーン関連の取り組みをスタートさせている。ではEAJではブロックチェーンについて、どのようなスタンスをとっているのだろうか?

 成宮氏は「取引関係者が従来よりも簡単・便利に、安価に、安全に、24時間365日不動産を取引できるプラットフォーム」が将来的に求められる中で、ブロックチェーンはそれを支える“ひとつの機能”になる可能性があると指摘する。つまり、ブロックチェーンはあくまで手段であり、最新技術としての利用そのものが目的ではないという主張だ。

ブロックチェーンの可能性
ブロックチェーンの可能性

 ブロックチェーンは確かに注目すべき技術だが、エンジニアは不足気味とされる。システムそのものは安価でも、それを維持するための人件費が高騰しては、結局従来のクライアントサーバ型システムのほうが安くなるという可能性はある。

 またブロックチェーンに書き込まれた情報は基本的に修正できないが、データベース維持に使われる全計算力のうち、過半数を1人のユーザーが占有してしまえば、その原則も否定される。

 インターネットの普及は、時間がかかったものの不動産業界の在り方を変えた。ブロックチェーンにも当然それだけの可能性はあるが、進化途中の技術であるだけに試行錯誤を繰り返し、継続的に取り組むことがまずは重要だと成宮氏は語る。

ブロックチェーンを不動産分野で活用する上での懸念点
ブロックチェーンを不動産分野で活用する上での懸念点

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