東京都立産業技術研究センター(都産技研)とアースアイズ、日本ユニシス、西武鉄道は10月25日、自律移動型の警備ロボット「Perseusbot(ペルセウスボット)」を公開した。
ペルセウスボットは、駅構内の警備を目的に開発したロボット。都産技研が開発中のロボットをベースに、アースアイズが開発したAIカメラによる監視技術を搭載した。駅という混雑が予想される空間において業務を遂行するため、躯体の高さを1675ミリメートルに設定。メインカメラやセンサを高い位置に設置することで、精度の高い監視やセンサリングを実現する。一方で、利用客に威圧感を与えず、また安全性を確保するために重心位置を下げたデザインとしている。
警備オペレーションは、ペルセウスボットと定点監視カメラ・センサの組み合わせで実施する。両者を併用することにより、定点カメラはロボットが見逃してしまうエリアを監視し、一方のロボットは定点カメラが対応しにくい死角の監視や突発的状況に対応する。
通常時は、登録したルートを自動で巡回し、搭載したカメラで周囲を監視する。移動の障害となる人や物を認識した場合は、その場で停止する、あるいは回避する機能を有する。また、点字ブロックなどの軽度な段差や傾斜にも対応し、商業施設と比較してハードな路面状況となる駅構内の環境に適応する。
巡視中、周囲を何度も見回す、座り込む、喧嘩するなどの不振な行為をする人物や、倒れているなどの急病人、長時間放置されている不審物をペルセウスボットが検知すると、自動で駅係員が持つスマートデバイスに通知する。また、定点カメラが同様の不審・異常状況を検知した場合、巡回中のロボットが検知場所へ移動し、周囲の状況を録画する。このほか、ロボットが搭載するインターホンにより、駅係員と会話することもできる。
駅という環境においては、不特定多数の人が不規則に動くという点が、監視の自動化を困難にしている。特に、AIは映像から対象物の位置や動作を認識することは難しいといい、困難に拍車を掛けている。アースアイズ 代表取締役の山内三郎氏はこの点に対し、ペルセウスボットに背景を3D化する技術を採用したと解説した。センサなどを活用し、映像内で人や物がどの位置にいるかを認識できるという。また、人を骨格モデル化して動きを追跡する機能をロボットのカメラに搭載し、暴れている、倒れているなどの人の動きを検知できると説明した。
西武鉄道 情報システム部課長の横田啓氏はペルセウスボットに対し、「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催による旅客増加や、将来の労働人口減少などの問題を解決できるのでは」と期待を寄せた。また、都産技研 開発本部 プロジェクト事業推進部 プロジェクト事業家推進室長 上席研究員の倉持昌尚氏も、「警備関係でロボットを活用できないかという要望が数多く寄せられている」とし、「今回のペルセウスボットを活用できるのではないか」とコメントした。
今回のペルセウスボットは、駅のホーム以外、コンコースなどで警備するロボットだ。今後、ホームでの警備はできるのかという質問に対し、日本ユニシス 公共第二事業部 ビジネス三部 第二グループの古賀先鋒氏は、「ホームの監視については思案している。センサ性能の向上や、ホームドア設置などの環境の変化があれば可能性は少なくないが、現時点では線路に転落するリスクなどを鑑みて協議をしている段階だ」と回答した。また、日本ユニシス 公共ビジネスサービス第一本部 次世代公共システム部 第二室プロジェクトマネージャーの吉越一樹氏は、「この大型のロボットがホームにいることがサービスとして正しいのかということも考える必要がある。ただ、労働人口が減っていく中で、人間が監視するエリアとロボットが監視するエリアを分けることはできると思う」と語った。
ペルセウスボットは今後、11月末に実証実験を西武新宿駅にて実施する。実証実験においては、改札外のコンコースが巡回コースとなる。4社は、この実証実験を通して、今後の実用化に向けた課題を探る考えだ。
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