情報のデジタル化によってさまざまな情報がオープン化され、世界は今、旧来よりのビジネスモデルを覆す変革が巻き起こっている。ビッグデータをもとに人工知能を利活用するほか、VRやMRといった現実世界にプラスアルファの情報を付加するなど、その変革の波は不動産という従来より連綿と受け継がれてきた商習慣にも及んでいる。
10月4日に開催された「CNET Japan Conference 不動産テックカンファレンス2018 ~加速する業界変革~」では、最新のテクノロジを利活用して不動産や都市開発ビジネスがどのように変貌を遂げるか、消費者である我々にどんな恩恵をもたらすのか、業界のトップランナーらによる講演が行われた。
「インターネット内覧サービス『ROOV』- VRとAIで変える不動産ビジネス、住生活」と題したスタイルポートの間所暁彦氏による講演では、不動産ビジネスの特徴や不動産テックの現況、不動産業界はもちろん消費者が潜在的に抱えている課題を紐解きながら、いつでもどこでも不動産の物件情報をウェブブラウザ上で得ることができる仮想内覧ソリューション「ROOV」について語った。
1991年にゼネコンでの不動産企画開発業務に携わって以降、長年に渡り不動産業界の第一線で活躍してきた間所氏。テクノロジを活用して不動産の流通を変える、そして、不動産流通の変革から住生活の未来を切り拓くべく、2017年にスタイルポートを設立したと語る。そして不動産業界において中古住宅流通は、国内に残された数少ない成長マーケットだという。米国や英国と比較すると日本は一生の間に持ち家を住み替える回数が少なく、対米国比においては約3分の1、対英国に至っては約4分の1という現状から、住み替えの促進、つまり中古住宅の流通を加速させることができれば、不動産業に成長の余地があると述べた。
持ち家の住み替えが米国や英国と比較して少ない日本において、その流通を促すことで更なるマーケットの成長が見込めると説明するまた、日本の不動産業におけるIT導入率の低さにもメスを入れる。米国を基準として世界各国を見渡した場合、日本はダントツで低い値であり、産業別のデジタル成熟度においても建設・不動産業界は低い値となっている。さらに、米国を基準とした際の産業別労働生産性でも飲食・宿泊に次いで不動産は低い値となっている現状を指摘。「不動産は巨大なマーケットでありながら生産性が低い。だが、IT化によって生産性を向上させる余地が多分に残されている。特に中古住宅の領域においては更なる成長が見込める」と述べた。
そういった状況を鑑み、日本国内においてもいわゆる“不動産テック”を標榜する企業は多数誕生してきた。しかし、2015年以降不動産テック系企業の上場企業はわずか9社にとどまっているという。その要因について「不動産が持つ地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、不増性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的である」という特性が根底にあるからではないかと述べた。
不動産はその価値を鑑定しようにも、その場所へ赴かねばならないという事情がある。名は体を表すではないが、土地はもちろん新築・中古住宅にせよ分譲マンションにせよ、動かせないためその場所へ足を運ばなければならない。しかし、顧客のニーズとしては、そのような手間を省けないかという思いが沸き上がるのは必然だろう。実際、間所氏によれば分譲マンション購入者の情報収集の手段として、近年上昇しているのがインターネット。しかも、最近ではスマートフォンを用いて情報収集を行う購入者が増えているという。
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